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〇〇Techという言葉が話題です。FinTech(金融)、AgriTech(農業)、EduTech(教育)など、その領域はあらゆる分野に広まっています。データのじかんでは前回、MarTechという言葉を紹介しました。今回は〇〇Tech第2弾として、SalesTechについて説明します。
SalesTech(セールステック)とは、営業(Sales)と技術(Technology)を掛け合わせた造語です。最先端のITを使い、全ての営業活動を効率化する手法を指します。日本ではまだ馴染みがない言葉ですが、欧米ではSalesTech領域に多くのスタートアップが参入しています。
例えば、CRMやSFAなど商談の設定から受注などの全ての過程や顧客情報の分析結果を見える化し、会社全体が今この瞬間どういう状況にいるのかを常に把握できるようなツールも浸透しつつあります。従来は週に一度、あるいは月に一度しか把握できなかった現状が今では瞬時に正確な数値、達成状況、分析結果などを把握できるようになったのです。これはSalesTechの一例ですが、他にもSalesTechにはあらゆる形態のものがあります。
出典:CB Insight | Cold Call: 65+ Companies Transforming The Sales Tech Landscape
CB Insightsによると、2016年資金調達を行ったSalesTech領域のスタートアップ企業の66%がシード、もしくはシリーズAです。2年前のデータなので古いものになりますが、多くのスタートアップがSalesTech市場に参入していることがわかります。これは世界のSalesTechの状況ですが、日本国内でも今後SalesTechに関するスタートアップ企業が増えていくでしょう。
上記のカオスマップを見てもらうと、SalesTechは下記の7つのカテゴリーに分類されていることが分かります。
それではそれぞれの分野のツールがどういうことに特化しているのかをみてみましょう。
Insidesales.comやApptusなどこの分野に属するツールは、営業サイクルを短縮させ、営業活動を加速させることを目的としたツールです。分かりやすく言うと、シャノンやPardotと言ったMA(マーケティング・オートメーション)とCopperやShore、BaseのようなCRM(顧客関係マネジメント)との間の溝を埋めるためのツールです。MAやCRMな営業プロセスを整理してくれますが、営業サイクル自体を加速させるものではありません。データを活用し、予測的な分析を行うことでリードの質をより分かりやすいものに落とし込み、それぞれのリードに対して適切な働きかけをしていくことができます。
freshdeskはクラウドベースのカスタマーサービスソフトでヘルプデスクサポート機能を提供してくれるカスタマーサポートツールです。Gladlyはメールや電話、チャットなどだけでなくあらゆるソーシャルメディアにも対応したカスタマーサポートプラットフォームです。リピート販売などを狙う上で、カスタマーサポートのクオリティーは非常に重要です。カスタマーサポートの質を向上させる目的で導入されるのがカスタマーサポートカテゴリーに分類されるツールです。
Lattice EnginesやChorus.aiなどはインテリジェンス・解析ツールに分類されるツールです。これらのツールは、データ・ドリブンなインサイトや分析結果を顧客へ提供し、会話内容をデータとして取り込んだり、そのサマリーを作成したり、成功している営業トークを分析し、そのパターンを読み取ったりなど、営業上のデータ活用を最大化させることでユーザー企業の売上に結びつけることを目的としたツールです。
CRMは、Copper(元Prosperworks)や、Shore、Baseなどカスタマー・リレーションシップ・マネジメント、つまり顧客との関係を管理するプラットフォームです。商談や顧客ごとに営業活動を管理したり、メールのトラッキング、パイプライン管理、オンライン予約などのサービスを提供します。モバイル環境での営業活動のリアルタイム確認など、これまで活用できなかった情報が引き出せるため、クラウド環境と相性がよく、近年注目を集め、成長を続けています。
サイトを訪れた顧客に対し、例えば、訪問回数や頻度、目的に応じて適切なポップアップメッセージを表示させたりなど、顧客にとてのオンライン体験をより心地よいものにすることでカスタマージャーニーの質を向上させ、さらに売上を伸ばすこと目的としたツールです。Formation(元Takt)やWalkMeなどがこのカテゴリーに分類されます。顧客と長期的かつ良好な関係を築き、その関係性を維持するためにも重要です。
ConversicaやCyara、CafeXCommunicationなど、コールセンターや音声技術、メッセージングプラットフォームコミュニケーションなどを活用し、顧客との直接のやり取りの質を向上させるためのツールがこのカテゴリーに分類されます。AIを使ったインサイドセールスを行う際に、顧客の質問に対するベストアンサーをオペレーターに提案したり、アポのやりとりを自動化できるバーチャルアシスタントなどのソリューションがこれらのツールによって提供されています。
実行可能なインサイトを提案し、営業担当者の知識を洗練させ、研修への投資の効果も測定できるQstreamや、営業担当者の苦手分野を認識し、その部分の効率的なスキルアップを支援する動画ベースのコラボレーションプラットフォームCommercialTribeなど、このカテゴリーのツールは、営業担当者のトレーニングやインセンティブ、コーチングを行うためのプラットフォームを提供してくれます。
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では、なぜSalesTechが注目されているのでしょうか?
まずは、働き方改革の潮流があります。労働時間の削減により、営業担当者にはこれまで以上に生産性向上が求められているのが今のトレンド。生産性向上は気合と根性だけで達成することはできないため、最先端のIT技術を使って業務の効率化を進めていく必要があります。また、今後、労働人口が減っていく日本では、ますます営業担当者個人への負荷が増えていくでしょう。将来的には、ITにできることはITに任せ、人間にしかできない仕事に労力を割いていくようになるものと思われます。
次に、営業部門には「新規顧客への飛び込み営業」や「コールドコール」など、非効率な業務がまだまだ多いです。「営業が考える最も非効率な部署は『営業・販売』」というデータもあるくらいです(参考記事)。これらの業務を効率化させるのが、まさにSalesTechであり、経営層のみならず現場の営業担当者も注目しています。
デジタルの隆盛も影響しています。ITmedia マーケティングの記事によれば、Googleの調査分析メディア「Think with Google」の調査として以下のようなデータがあるそうです。
- 購買検討時に95%の人がネット検索を利用しており、その主たる目的は課題解決策の探索/製品群の概況調査
- 購買検討を開始する以前から購買した商品を認知していたのは77%
- 購買の決め手は機能・価格
- 情報収集担当者の約半数が35歳以下のデジタルネイティブ世代
- その中の81%の担当者の意見が最終決定に影響を与えている
このように、もはやネットを無視できない時代であり、営業活動においてもITを駆使していく必要があります。
ITサービスの価格低下とクラウドの普及によって、スタートアップの参入障壁が下がりました。また分散処理技術の向上によって大量のデータを処理できるようになったことも、スタートアップ企業の参入を後押ししています。
今後はディープラーニングをはじめとする人工知能(AI)の進化によって、SalesTech企業はますます成長していくことでしょう。
スマホをはじめとするデバイスの普及によって、外出先でも営業ツールにアクセスできるようになりました。そのため、外回りの多い社員向けの携帯デバイス用アプリ開発も進むでしょう。今まさに、営業の仕方は大きく変わろうとしています。営業担当者は、従来の仕事の進め方に固執することなく、新しい技術を取り入れながら柔軟に業務を進めていく必要があるのです。
【参考記事】
(安齋慎平)
MarTechとは、マーケティング(Marketing)と 技術(Technology)を掛け合わせた造語です。企業がマーケティング活動にITを取り入れることで、より効果的なビジネスを展開できるようになります。
CRMはCustomer Relationship Managementの略でその名の通り、顧客との関係性を良好に保つために活躍してくれるツールです。また、CRMと似た製品に「SFA」というものがあります。では、CRMとSFAでは何が違うのしょうか?図解で説明します。
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