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事業、顧客の行動・心理状況の複雑化に伴い、ただ製品やサービスを提供するだけでは、必要な利益を得ることが困難な時代に企業は突入しています。
そのためには、KGIやKPIといった指標を用いた経営戦略の策定は必要不可欠で、データを活用することで企業はよりインテリジェンスに活動できるようになります。
その一方で、従来の勘や経験による意思決定が強く根付いている企業も少なくなく、それが原因でKGIやKPIの実践が失敗に至っているケースも少なくはありません。
について、よくありがちな”失敗例”を交えながら紹介させて頂きます。
企業は営利を目的に活動しており、存続し続けるためには、一定以上の利益を得続けなければなりません。
そのため企業は現状の経営状況を定量値で把握し、それを基に経営戦略を策定しますが、その代表格として用いられているのがKGI(Key Goal Indicator)とKPI(Key Performance Indicator)です。
KGIとは日本語では、”重要目標達成指標“といい、売上高、成約率、利益率など、最終的な事業の目標を定量的に評価するための指標を指します。
一方KPIとは日本語では“重要業績評価指標”といい、最終目標であるKGIを達成する上で、その達成度合いを計測・監視するための指標を指します。
例えば営業活動において訪問件数(KPI)が少なければ受注件数(KPI)は下がり、結果として最終目標である売上高(KGI)が下がります。
つまりKPIはKGIの中間目標的な指標であり、現在、目標に対してどのくらい進捗しているのかを示し、企業の組織、従業員にとってペースメーカーとしての役割を果たしてくれます。
ここまでの説明で“おやっ?“と思われた方
KPI、KGIというキーワードは職場で飛び交っているものの以下のような”あるある”ケースに遭遇してないでしょうか?
実はこのKGI、KPI、言葉ばかりが独り歩きしているケースがかなり多く、特に
といった理由がKGI、KPIの失敗の大半を占めています。
企業の目標を明確にするKGIとその進捗、達成度を示すKPIはどのように設定すべきでしょうか?
業績アップはどの企業でも追従し続けなければならない命題であり、多くの企業は右肩上がりのKGIを理想としています。
そのためには、KGIにつながる様々な要素を抽出しなければなりません。
この”要素”がKPIになるのですが、中間目標値であるKPIは、さらに抽象度の低いKPIを要素としています。
この関係は“ロジックツリー”で示すと非常にわかりやすく、KPIを適切に抽象化、具体化する事で採るべき行動を明確にすることができます。
ロジックツリーとは、ツリー状に問題を分解し、原因や解決策を論理的に探すためのフレームワークで、KPIに限らず様々な分野で用いられています。
“ロジックの木“という別の呼び方も持ち合わせており、頂上はKGIを、枝や葉はKPIを割り当てて設計し、KGI・KPI設計に適用した場合”KPIロジックツリー“といいます。
最終目標を明確にするために、まずはKGI、次に抽象度が高いKPIを抽出し、ロジックツリーの頂点と枝に配置します。
次に先程抽出したKPIに対し、その要素となる“KPIのKPI“を抽出します。
KPIは抽象度が低くなるにつれ、具体化の難しくなり、この部分が適切に抽出出来るか?が重要なポイントになります。
例えば、ある商品を販売したときの売上高をKGIとした場合、以下のような要素でロジックツリーが構成されます。
最終目標である売上高を上げるためには、
など更にKPIを具体化する必要があり、ブラッシュアップとフィードバックを繰り返す事で企業として取るべき行動(DO)が明確化されます。
昨今では顧客心理の複雑化によりKPIの要素が採るべき行動(葉)に繋がるまで、何本の枝に分岐しているケースが多く、データを積極的に活用してこれらを見出す手法(データドリブン)が注目されています。
KPIロジックツリーでは、各KPIの総和、もしくは各KPIの積がそれに繋がる抽象度の高いKGI、KPIと一致するように設計する必要があります。
まずは前年度の実績やデータを基に、数値算出方法を論理式でモデル化します。
具体的には
などでモデル化されます。
目標値であるKGIから決めた場合、 KPIはそれぞれの値の積がKGIと同じ値になるよう設定します。
即ち、「このKPIを達成する必要がある」といった観点でアプローチします。
逆に中間目標値であるKPIから決めた場合、「現状を踏まえるとKGIに到達する」といった観点でアプローチすることになります。
KGI、KPIは、どちらかが「独り歩き」してしまわないように設定することがとても重要です。
各要素の前年度の実績、現状といったデータを活用し、双方向に机上検証を繰り返すことで「意義のある数字」を算出できるようになります。
KGI、KPIどちらの過程でも“達成率の予測”は重要なプロセスで、100%未満であれば、適切な対策でフィートバックすることに意義があります。
安易かつ根拠なしに数値を上げる、即ちノルマを増やすといった一本鎗な戦略では企業として遅れをとる、トレンドに逆行する、とった潜在リスクの増加を招いてしまいます。
KGI、KPIの設計と値の設定方法を紹介させて頂きましたが、
といったことを置き去りにすると以下のような失敗を招きます。
KGI、KPIを導入することで得られる効果をはじめ、原理、仕組み、設計方法を理解せずに、“取り敢えずチャレンジしてみる”といった姿勢で臨むケースは実は少なくありません。
このようなケースでは導入の目的すら理解せず、トップダウンのアバウトな指示で失敗を招いてしまっています。
KPIは中間目標値でKGIのインジケーターとして役割を果たします。
そのため値が具体化されてなければ、その役割は果たすことができません。
ただKGI、KPIはデータに基づいて算出します。
従ってその基となるデータが無ければ、定量化は難しく、そのようなケースの場合、まずはデータ活用、即ちDX化から取り組まなければなりません。
KGIは最終的な目標値ではあるものの、任意に決めることが出来る性質を有しているため、
など、KGIへの向き合い方でKPIの設計・設定方法は大きく異なってきます。
前者であれば、強化・改善といった別のKPIを加えなければ、これまでのKPIの値をただ増やすだけと施策となり、その施策が既に限界に達している場合、到底KGIを達成する事はできません。
KGI、KGIは基本、一度設計・設定したら、一定期間を経るまで、安易に変えることはありません。
といったことを頻繁に実施すると、目標に向かって活動する従業員のモチベーションの低下や迷走を招きます。
また次サイクルに向けて適切なエビデンスの役割を果たさなくなってしまうリスクもあり、KGI・KGIで効果が得られない多くの企業の特徴に”目標がブレる”がケースとして挙げられます。
目標の見直し、対策、改善等はこの後紹介するPDCAで決められたルールで実践するべきで、ルールを逸脱したやり方は時として破綻を招いてしまいます。
KGIはKPIの積によって求まりますが、その数が少ないと、
といった不整合な状況を招きます。
またその逆にKPIが多すぎると、業務が複雑化し組織体制やマンパワーが備わってなければKPI全体の低下を招く恐れもあります。
KGI・KPIの設計の際には、KPIの網羅だけでなく、現状のリソースも把握した上で配慮する必要があります。
良くあるケースとして、“兼務”を多用した組織体制で臨み、
などで、毎年、期の中盤以降、放置されてしまうケースを招いてしまっています。
KGIとKGIは論理的に結びついている必要があり、因果関係のない要素をKPIに設定した場合、その効果は全く期待することはできません。
KPIには抽象度があり、具体化され過ぎたKPIとKGIを結びつけたりするのが良くあるケースで、手段にばかり目を向けるとこのような事態を招いてしいます。
KGI、KPI、そして具体的な行動までを段階的に示すことで、企業視点で状況が把握できますし、組織や従業員は具体的な活動に注力できるようになります。
KGI、KPIが適切に設計、設定されたとしても、その後にDo(実行)、Check(評価)、Action(改善)が伴わなければ、確かな効果を得ることができません。
即ち、KGI・KPIの設計、設定はPDCAサイクルのPlan(計画)に過ぎず、その後のマネジメントの実践も重要です。
PDCAとは、業務を継続的に改善していくフレームワークのことでKGI・KPIに限らず、生産管理や品質管理等などに多くの企業が導入しており、以下のようなフローで通常は1年周期で実行します。
Plan | KPIの抽出、具体化(KPIのKPI抽出)、施策の計画 |
---|---|
Do | Planの段階で抽出したKPIの具体的な行動の実行 |
Check | 定量化した行動内容に対する実際のKPIとの検証、講評 |
Action | Checkで導出した課題・問題に対しての強化改善 |
PDCAをベースとしたKPIへの取り組みは、”KPIマネジメント“といい、昨今ではデータ活用と併用しながら多くの企業が取り組んでいます。
PDCAは、先ほどご紹介したうように特定のKPIに適用できますし、抽象度が異なる複数のKPI、KGIから末端のKPIを包括したロジックツリー全体に対しても適用は可能です。
ただKPIマネジメントの対象をロジックツリー全体にしてしまうと、
といった状況を招く恐れがあります。
このような課題への解決策として、具体化されたKPIをゴールに、小さく回して道のりを短くし、難易度を下げたPDCAを複数で実践するやり方が効果的です。
結果として一つ一つの小さなPDCAの成功がKPIの成功率を高めてくれます。
実際に「来店客数を1,000人増やす」にPDCAを適用するより、「来店客数を増やすため宣伝・広告サイトを10サイト制作する」にPDCA適用した方が単純明快ですよね?
このようなPDCAは、「Small PDCA」と呼ばれており、企業の部署のチーム、担当者といった小集団に運用されています。
ロジックツリーの葉に相当する部分に「Small PDCA」を適用する事でKPIの目標達成の成功率が高まる事をご紹介しましたが、果たしてそれだけで最終目標であるKGIが達成できるでしょうか?
これに対しては、「No」です。各KPIの上位に位置するKPIを包括した輪にもPDCAは適用する必要があります。
例えば、顧客のニーズに沿った製品を開発して客単価のKPIが達成できても、来店客数や購入率のKPIが達成できなければ、ロジックツリーは機能せず、KGIを達成することができません。
このようにロジックツリーでは、同じ階層のKPI、上位、下位に位置するKPIが目標に到達しなければ、ツリーの枝が折られている状況に相当し、こういった事態を招かないためにも、巨視的な視点でもPDCAを運用する必要があります。
このようなPDCAは「Large PDCA」と呼ばれており、「Small PDCA」の運用をチェックし、機能が低下しているのであれば、その原因を追求し、組織的な対策にて改善することで企業全体のパフォーマンスを高めてくれます。
「Large PDCA」では企業全体の業績や効率改善といった巨視的なフレームワークなので組織的に運営する必要があり、そのためには
といった施策が重要になります。
今回はKGIとKPIの設計、設定とよくありがちな失敗例をご紹介させて頂きましたが、適切な設計・設定方法とPDCAをベースとした運用が重要であることをご理解頂けたでしょうか?
最後に今回紹介させて頂いた要約をまとめとして、以下に記載させて頂きます。
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