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IT人材のニーズはIT業界内外で高まってきています。

AIやデータ活用の一般化が進む中でコロナ禍が生じ、危機感を持ってDXに取り組む企業はさらに増えました。「日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2020年度)」によると、新型コロナによりDX推進が加速したと回答した企業は50%に達しています。

そんな中、「ビジネストランスレーター」は、DX推進を円滑に進める上でのキーマンとして近年注目を集めているポジションです。

まだ聴き慣れないポジションかも知れませんが、その概要や役割、必要なスキルを今回はご紹介していきたいと思います。

ビジネストランスレーターは“ビジネスサイドとデータサイエンティストの考えを翻訳する”役割

ビジネストランスレーターとは、“経営者・一般社員とデータサイエンティストの橋渡し役”のこと。トランスレーター(翻訳者)という呼称の通り、ビジネスサイドとデータサイエンティストサイド両方の考えを整理し、翻訳することでDXプロジェクトを成功に導きます。

現在、ビジネストランスレーターに注目が集まっている理由として、以下の3つが挙げられます。

文系からでも目指しやすい
内製化しやすい
プロジェクトを成功に導くカギとなる

ビジネストランスレーターに求められるのは、ビジネスサイドの理念や目的とデータ活用の基礎について理解し、言葉にすることです。スポーツ選手の通訳が実際にスポーツができる必要がないように、経営やプログラミングに関する高度なノウハウは求められません。重要なのは、両者の言い分を抽象化し、失敗を未然に防ぐビジネス力です。だからこそ、文系からでも目指しやすく、また自社の文化や内情を知り尽くした社員から育成することに適していると言われるのです。

IT人材白書2020」(独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センター)によると、2019年度「社内にITのスキルを蓄積・強化するための内製化」に着手している企業は、企画・設計などの上流部門で30.2%でした。この割合は企業規模に比例して拡大し、1,001名以上の企業では47.8%に達しています。

引用元:「IT人材白書2020」概要┃独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センター

組織体制が複雑化し、独自の文化が醸成されやすい大企業では特に、ビジネストランスレーターの役割が重要になっていると考えられます。

大企業のDXで発揮されるビジネストランスレーターの価値

大企業のDXにおけるビジネストランスレーターの価値についてより詳しくみてみましょう。
ITR会長/エグゼクティブ・アナリストの内山悟志氏は「DX推進で大企業が陥りやすい5つの罠」として以下を提示しています。

DXごっこの罠 何のために、どこを目指してDXを推進するのかが明確でないまま、AIの試験的導入や技術適用の実証実験(PoC)を実施する。
総論賛成の罠 誰もがDXは重要だと言うが、いざ自分の部門・業務に影響が及ぶ各論になると反対またはスルーを決め込む。
後はよろしく罠 経営者は、DX推進組織を立ち上げて人をアサインしたら役割を果たしたと考え、その後の活動を円滑に進めるための環境づくりや後方支援を怠る。
形から入る罠 DX委員会の設置、社内アイデア公募、社内アイデアソンの活動など、やってる感は出すが、活用されない、続かない、本番にならない。
過去の常識の罠 DXの推進にあたってまず事例を探す。人の評価も、投資判断の基準も、組織文化も、これまで成功してきたやり方や考え方を変えようとしない。

引用元:内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」DX推進で大企業が陥りやすい5つの罠┃ZDnetJapan

優秀なビジネストランスレーターは、これらの罠を回避するノウハウを身につけた冒険家のようなものです。過剰な期待を抱かれたり、あるいは分析すること自体がゴールになってしまいがちなDXプロジェクト。その事実を認識し、依頼者が適切なゴールを設定できるよう、あるいはルートが間違っていると分かった際に改められるよう、手助けします。

反対に曖昧な指示によりIT部門が個別の問題に対処することにとらわれて方向性を見失ってしまったり、分析結果の理由について問われた際、ビジネスサイドが納得できるような説明ができなかったりすることもよくあります。ジャングルではどんな危険があるのか、航海でどんな準備をしておくべきかを優秀な冒険家が知っているように、ビジネストランスレーターはDXプロジェクトの罠を知り尽くし、指示を明確化する、仮説に対して必要なデータを揃えることで、企業をあるべき状態(=適切なゴール)へ導きます。

このような罠を回避するためのフレームワークが、三井住友海上火災保険会社のデータ分析チームによって書かれた『データ分析人材になる。 目指すは「ビジネストランスレーター」』(日経BP、2020)では「5つのD」としてまとめられています。詳しくはコチラの書評記事をご覧ください。

ビジネストランスレーターになるには? 育成するには?

これまでデータ分析の経験はないけれど、ビジネストランスレーターを目指したいというビジネスパーソンや、自社のDXを成功に導くためにビジネストランスレーターを育成したいと、と考える経営者の方は何から着手すればよいのでしょうか?

基礎として押さえるべきなのが、以下の3ステップです。

・DXプロジェクト成功・失敗の事例を収集する
データ分析ツールの使い方を習得する
実際に分析を行ってみる

まずはDXの旅の途中、どんな罠があるのかを把握し、プロジェクトの全体像を把握するために情報収集を始めましょう。書籍やWeb、セミナーなどで、事例は多数紹介されています。もちろんデータのじかんのDX関連記事も参考にしてみてください。

並行して進めたいのが、Dr.Sumなどデータを加工・集計するための分析ツール、MotionBoardなどデータを可視化するためのBIツール、GoogleAutoMLなど近年普及し始めている自動分析ツールに実際に触れ、使い方を学ぶことです。難しそうに感じられるかもしれませんが、誰にでも使えるよう設計されているため、数日触ればだんだん理解できてくるはず。PythonやRなど無料で便利なプログラミング言語も有用ですが、まずはとっつきやすいところからはじめるのがオススメです。

知識がついたら、後は実践でPDCAを回していくことになります。自分で仮説を立てて、データを分析してみましょう。仮説がデータで証明できたときは非常にやりがいが感じられます。

これらはデータ分析者としての基礎力です。ビジネストランスレーターは、これらとこれまで培った社内文化への理解やビジネスコミュニケーション力を両輪として、DXプロジェクトをサポートしていくことになります。

チームを結成し、明確に「ビジネストランスレーター」という役割を設け、その力が存分に発揮される土壌を作りましょう。

終わりに

現代では、個人が成長するために明確な技術や知識を得てスペシャリストとなることが重視される風潮があるようです。データサイエンティストやデータアナリストを目指す人が多い一因もそこにあるでしょう。

ビジネスとデータサイエンスの両方に一定の知識を有し、両者をつなぐ役割はこれまでどちらかと言えばジェネラリストとして捉えられてきました。しかし、そのスキルの重要度が広まり「ビジネストランスレーター」と名付けられることでスペシャリストとしても定義されるようになったといえるでしょう。

今後もニーズが高まるこの役割、DXプロジェクトを進める際には必ずアサインすることをおすすめします!

【参考資料】
・木田 浩理 (著), 伊藤 豪 (著), 高階 勇人 (著), 山田 紘史 (著) 『データ分析人材になる。 目指すは「ビジネストランスレーター」 Kindle Edition』日経BP、2020
・「IT人材白書2020」概要┃独立行政法人情報処理推進機構社会基盤センター
・【電通デジタル】日本企業のDXはコロナ禍で加速するも、推進の障壁はDX人材の育成┃PRWire
・内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」DX推進で大企業が陥りやすい5つの罠┃ZDnetJapan

 

 

 

 

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