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ディスコが導入した社内通貨「Will」

半導体切断装置の最大手であるディスコは、2018年で創立81年という歴史ある企業で、全世界に支社があり、総勢4000人が働いている職場です。

「働きがいのある会社ランキング」という調査で、グーグルやマイクロソフト、モルガン・スタンレーやサイバーエージェントと並び、ここ数年トップ10にラインクインしています。2018年のランキングでは、シスコシステムズ、Plan・Do・Seeに次いで堂々の3位となっています。

その「働きがい」の一端を担っていると言われているのが、同社が採用している「Will」という社内通貨の制度です。この社内通貨というコンセプトが注目されています。Willは従業員の採算を管理する通貨単位で、1Will=1円の交換比率。自社製品に対して何らかの活動(例えば営業、製造、開発など)をすれば、Will専用の口座からWillの出入金が発生します。

営業担当者を例に挙げると、製品を売ればその売価分のWillが受け取れますが、そこから自分の人件費・経費、製造部門への支払いなどが引かれ、残りが「利益」となります。これにより、各々の従業員が業務上どの程度の価値を生み出しているのか一目でわかるようになるのです。

またWillの残高によって半年ごとの賞与の1割が決まるため、従業員はWill稼ぎに真剣になります。従業員の中には、Will連動部分だけで数百万円の賞与を手にする人もいるそうです(参考記事)。

全タスクをオークション形式で受発注

Willが画期的なのは、タスクをオークション形式で受発注できるところです。

会社の全タスクを売りに出す一方、従業員は自分のやりたい仕事を”落札”できます。人気のタスクは価値が下がって貰えるWillは少なくなるので、Willが欲しい従業員はより難易度の高いやりがいのある仕事を受注するようになります。対して時短勤務者は、タスクが完了する時間が想定しやすいものを選べます。時間内に終わりそうにない仕事は、Willを支払ってほかの従業員にお願いしてもOK。このように、自分の働き方に合わせた仕事を選ぶことが可能です(参考記事)。

働き方改革と社内通貨

興味深いのは、残業をするとWillの支出として計上されるので、結果として残業抑制につながる点。同社は働き方改革と社内通貨制度をうまくリンクさせていると言えます。同時に、月45時間までの残業代の割増率を25%から35%に引き上げ、月45~60時間までの残業代の割増率30%より高く設定しています。これにより、残業が少ない人が社内に増えるほど総残業代が減るように設定しています(参考記事)。

Willの懸念材料とは

しかし、Will導入は良い面ばかりではありません。

Willの供給量が増えて部署や個人間のWill取引が拡大した結果、「Will1単位あたりの円ベースの価値が下落傾向になっている」そうです(参考記事)。Will1単位あたりの円ベースの価値が下がるということは、賞与にも影響が出るということ。価値が安定しないという点は、仮想通貨にも通じるところがあります。

また、Will導入には一貫した仕組み(決裁のルールなど)を社内に構築する必要があります。Willは自らやりたい仕事に手を挙げる制度であり、上司から「◯◯をしなさい」と言われて仕事をするものではありません。よって、すべての働き方を「自発的なもの」に統一する必要があります。もし上司からの命令によって成り立つ仕事が少しでも社内に残っているならば、Willの制度自体が成り立たないのです。ゆえに、従来の会社の仕組みを根底から変えていく必要があります。

まとめ

社内通貨は、昨今話題になっている「働き方改革」や「仮想通貨」と密接に関係していることがわかりました。Will制度は従業員が仕事に対して能動的になるよう設計されており、従業員の仕事に対するマインドを変えるために有効に作用する制度と言えます。

また、導入に際しては社内の仕組みを抜本的に変える必要があることも明らかになりました。一部分のみ社内通貨を導入しようとすると失敗する施策であり、経営者・人事部門の本気度が試されるものと言えます。

今後注目の社内通貨ですが、まだまだ懸念点がある制度と言えるでしょう。今後、よりよいものにしていくためにも、導入した企業は会社全体を巻き込みながらトライ&エラーを繰り返していくことが求められそうです。

(安齋慎平)

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