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子育てをする人にとって大きな関心ごととなるのが、教育について、です。
教育への関心への根底には、子どもにとってよりよい未来を築きたい、という親の願いがあるのではないでしょうか。
教育と国の発展は密接な関係にありますが、教育を変えた場合にその成果が現れるのはおよそ20年先ということになります。そして、めまぐるしく変わる昨今の世界において従来の日本の教育の考え方では不十分な面がある、というのは誰しもが感じているのではないでしょうか。子どもへの教育を考えるとき、頭に置いておきたいキーワードの一つが「40年ギャップ」です。
40年ギャップとは教育学で使われる用語の一つです。これは、子ども世代の教育カリキュラムが20年先を見据えて作られているのに対し、親世代は自身が受けた20年前の教育を基準にしてしまうことにより生じるギャップを指します。
これは、イギリスの教育学者であるマイケル・バーバー(Michel Barbar)が論文「Oceans of Innovation(イノベーションの海)」の中で提唱している考え方で、教育改革を行うべきと考えるグループは20年後の世界を目指して教育に変革をもたらそうとしますが、現場の教育者は現場の対応だけですでにキャパオーバーとなっており、子供の親は20年以上前に自分達が受けた教育で十分だと考えています。教育改革をもたらすためには、現場の教育者および保護者からの理解を得ることが不可欠であるとバーバーは述べており、教育改革者が見据える20年先と保護者の理解する20年前の教育との間に40年のギャップがあることから、これは「教育改革の40年ギャップ」と呼ばれています。
実際20年前と現在を比較しても、インターネットの普及やそれに伴う生活様式、消費行動には大きな変化があります。
例えば、職業でいうと、ITエンジニアや動画やアニメのクリエイターの需要が急速に高まっています。また、リモートワークの普及により、PCやスマホは仕事に必須の存在として「できて当たり前」な状態が要求されるようになってきています。
一方で、今の20代、30代が10代だった当時、アニメやゲーム、スマートフォン、PCは一部の大人にとって理解しづらいもので、アニメの視聴やゲームやスマートフォン、PCを制限されていた、という人も少なくないのではないでしょうか?
このように大人にとって自分自身が教育の過程で経験していない、理解し難いものが子どもの将来において重要な役割を果たす、ということは、技術が発達すればするほど起こり得ます。
実際に、子どもの将来の夢についてのデータを見ると、子どもの未来が世代ごとにいかに変化していくか、が見てとれます。
日本FP協会が2007年より毎年開催している全国の小学生を対象にした「将来の夢」がテーマの「小学生『夢をかなえる』作文コンクール」から集計した子どもの将来の夢ランキングを見ると、過去15年で子どもの未来像が大きく変化しているのがわかります。
2007年のランキングでは、1位の野球選手をはじめ、スポーツ選手が多くランクイン。一方で先生や医者、保育士、獣医など資格が必要な職種も人気があります。
2007年度男女混合順位
順位 | 前回 | 職業 | 票数 |
1 | ― | 野球選手 | 27 |
2 | ― | 先生 | 22 |
3 | ― | パティシエ | 20 |
4 | ― | 医者 | 16 |
4 | ― | サッカー関連 | 16 |
6 | ― | 保育士 | 13 |
7 | ― | バレーボール選手 | 8 |
8 | ― | 飼育士 | 7 |
8 | ― | 獣医 | 7 |
8 | ― | バスケットボール選手 | 7 |
出典:日本FP協会|小学生の「将来なりたい職業」ランキングトップ10
2007年で多く票を集めたスポーツ選手について、男子では以前上位をサッカー選手、野球選手が占めている一方で、ゲーム制作やプロゲーマー、ユーチューバーなど2007年にはなかった選択肢も上がるように。また、新型コロナウイルス感染症の影響で家での滞在時間が増加した関係からか、建築士もランキングに上がっています。
男女ともに会社員がトップ10に入っているのも印象的です。女子では医師や看護師、保育士、美容師など資格職が10分の7を占めていて、さまざまな情報にアクセスしやすくなる中で、堅実な職を希望する傾向が高まっていることがわかります。
2021年度男子順位
順位 | 前回 | 職業 | 票数 |
1 | 1 | サッカー選手・監督など | 123 |
2 | 2 | 野球選手・監督など | 97 |
3 | 3 | 医師 | 78 |
4 | 6 | ユーチューバー | 72 |
5 | 5 | ゲーム制作関連 | 62 |
6 | 4 | 会社員・事務員 | 59 |
7 | 11 | プロゲーマー | 43 |
7 | 9 | 建築士 | 43 |
9 | 11 | 飼育員 | 41 |
10 | 7 | 料理人・シェフなど | 39 |
出典:日本FP協会|小学生の「将来なりたい職業」ランキングトップ10
2021年度女子順位
順位 | 前回 | 職業 | 票数 |
1 | 4 | 医師 | 104 |
2 | 2 | 看護師 | 91 |
3 | 3 | 保育士 | 90 |
4 | 8 | イラストレーター | 84 |
5 | 7 | 教師 | 78 |
6 | 1 | 薬剤師 | 71 |
7 | 9 | 美容師 | 64 |
8 | 6 | パティシエール | 60 |
9 | 4 | 獣医 | 48 |
10 | 29 | 会社員・事務員 | 36 |
出典:日本FP協会|小学生の「将来なりたい職業」ランキングトップ10
ここまで紹介したように、親世代がリアルタイムに親から受けた20年前の教育と、子ども世代が大人になる20年後の未来を想定した教育、そして子どもたち自身がこれだと思う将来像など、教育や未来と一口に行っても立場や状況によってさまざまな変数があります。
そうした中で、親や子ども、教育機関などが対話を重ね、教育や将来に持つイメージをすり合わせていくことが非常に重要です。
わからないものを理解できない、と切り捨てる前に、まずはなぜそれが必要なのか、必要ないと思ったのかを双方きちんと言語化し、歩みよりながら、ともに子どもたちのより良い未来に向かっていきたいですね。
【参考引用サイト】 ・40 年ギャップ説 教育改革は、20 年後の「子どもたちが大人になる時代」を見据えて行うも ・混沌とした将来に対して、親が子供に出来ること | 文春オンライン ・小学生の「将来なりたい職業」ランキングトップ10 ・小豆島町学校ICTレポート「教育改革の40年ギャップ」
(大藤ヨシヲ)
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