マーケティング先進国のアメリカでは、大規模なリストに沿って営業を行い、なるべく多くのリード(見込み顧客)の獲得を目指す手法は時代遅れになりつつあります。
それに代わって2000年代以降に登場したのが、明確にターゲットを絞り、傾向と対策を練ってからアプローチする「ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)」という手法。
リードを大量獲得してふるい分ける手法はコールドコールと呼ばれ、いわば数打てば当たるの投網漁法。それに対し、ターゲットの動向を見極め確実な取引成立を狙うABMは、一本槍で大物を狙うモリ漁法に例えられます。
日本でも外資系企業ではABMへの移行を進めています。このトレンドは今後もますます強まるでしょう。あなたの会社で採用される日も近いかもしれません。そうなる前に、ABMのメソッドとメリットについて知っておきませんか?
ABMの最大の特徴は、すでに自社と交流のあるターゲットに的を絞ること。ターゲットになりうる顧客は、「大口顧客」や「何度か取引をした既存顧客」。いわゆる「温まっている」顧客ですね。
既存顧客を中心にマーケティング・営業を行うメソッドは従来から使われており、例えばルートセールスがそれに当たります。ABMの新しさは、デジタル時代だからこそ可能なデータベースのフル活用。
連結された各部門のデータの中から、企業の基本情報、以前の取引内容、フィードバックやアンケートなどを参考にして、ABMのターゲットになる企業(アカウント)を決定します。
データベース参照の時点で、アカウントの窓口となる人物を決めます。ここで複数のコンタクト情報が出てきた場合は、
・最適なコンタクトをピックアップする
・多角的なアプローチに生かすため複数のコンタクトをキープする
の2通りの手法があります。どちらの手法を使うかは、相手企業の業種や規模によって調整が必要です。
アカウントを絞ったら、選定したコンタクトに接触してヒアリングを行います。アカウントが抱えている要望や不満、近未来のビジョンを深く理解することで、相手のニーズを掴みます。
すでに顧客であっても、担当者には面と向かって言いにくい不満、または担当者レベルに伝えても仕方ないと諦めている要望があるかもしれません。こうした声をしっかり拾い上げることで、新しいビジネスチャンスの獲得や売上増に繋げることができます。
アカウントのニーズを把握できたら、それに合わせて売り込む製品を変更したり、サービス内容をカスタマイズします。
例えば、営業担当者が自分の営業成績を伸ばすために高価な商品Aを販売していたとします。しかし実は廉価な商品Bに興味のあるアカウントが多数でした。
このとき、営業担当がアカウントのニーズを把握せず、自分の成績のためだけに高価な商品を推し続けたら、アカウントが競合他社に流れてしまう可能性もあるわけです。そうなる前に相手のニーズをキャッチし、選択肢を提示することが重要です。
1〜4のステップを踏まえて、アカウントに向けて練られたキャンペーンを開催します。使用するチャネルはアカウントによって異なる可能性があります。SNSを通したキャンペーンが有効なアカウントもあれば、イベントや展示会が効果的なアカウントもあるでしょう。
キャンペーン後はしっかりとフィードバックを収集し、分かりやすいデータにまとめて営業部門が今後の業務に使用できるようにします。
PardotやMarketo、SHANONなどといったMAツールを活用し、メールマーケティングやセミナー集客などを行い、顧客との接点を増やし、関係性を深めるためのナーチャリング活動も合わせて継続的に行うとより効果的です。
ABMではアカウントを「営業担当個人の顧客」ではなく「企業全体の顧客」として捉えます。そのため営業部門、マーケティング部門、カスタマーサポート、企画開発など、社内のあらゆる部門が協力体制をとりやすくなります。
これによりアカウントのアプローチがより厚みを増し、末永くWin-Winの関係を築くことができるというわけです。
参考リンク: BtoBマーケティングの王道、ABMの肝は高度なデータマネジメントにあり アカウントベースドマーケティング アカウント・ベースド・マーケティング ~デジタルで営業方法を進化させる~
(佐藤ちひろ)
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