DoTという言葉を耳にしたことがありますか?
DoTとはDNA of Thingsの略であり、その名の通り、モノのDNAです。
瓶や机、置物のように本来は記録媒体として用いられない日用品に様々な情報を保存したDNAを組み込む、というこの技術はチューリッヒ工科大学の研究チームが、2019年12月にNatureに論文を発表したことで大きな注目を集めました。
小さな「モノ」でも大容量のデータストレージ化できるというこの最新技術によって、生物ではない「モノ」でも一部を採取することでモノを複製できるようになったり、はたまた大容量の機密情報を小さな置物の中に隠しておけたり、とまさにSF小説の世界のような事象が起こせるそう。
今回は、そんな夢がいっぱいの新技術について調べてみました。
この新技術を活用して今回作られた「モノ」はプラスティック製のウサギの置物です。
このウサギには合成DNA分子を封入した微細なシリカ粒子が含まれており、封入されたDNA分子には、ウサギの置物を3Dプリンタで製造するために必要なデジタル設計図が含まれているということです。
DNA分子に組み込まれた設計図には、ウサギの形や大きさだけでなく、3Dプリンタ上でウサギのパーツをいつ、どのように印刷するかの指示も含まれているため、DNAから情報を取り出せば、3Dプリンタが指示通りに印刷を始める、という作りになっています。
その結果、生物のクローンを作る時と同様に、最初に作ったウサギの置物から一部分を削り出し、設計図を取り出して新たに全く同じウサギの置物を3D印刷することができたそう。
実験では、ウサギの一部からあらたにクローンウサギを作るというプロセスを5世代にわたって成功させたということです。
今回、このDoTの技術を開発したのは、チューリッヒ工科大学の研究者とイスラエルの研究者で構成された研究チームです。
この技術を開発する上で要となったのが、研究チームの一人、ロバート・グラス(Robert Grass)氏が、2013年に発表した、小さなカプセル状のガラスビーズの中にDNA分子を封入する技術です。これは化石の中で長時間にわたりDNAの保護される、ということから着想を得て、そのプロセスを模倣することで実現したということです。
さらに、同じく研究チームの一員でイスラエルのコンピューター科学者のヤニフ・エルリッヒ(Yaniv Erlich)氏は、1グラムのDNA分子に215,000テラバイトのデータを保存することを理論上、可能にする方法を開発しました。
小さな粒子にDNA分子を封じ込める手法とDNAに大容量の情報を搭載する技術を合わせることで、「DNAをもつ」ウサギの置物が実現しました。
ではこの技術、今後どのように応用できるのでしょうか?
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