21世紀の石油「データ」の価値が知られるにつれ、データ分析ができる人材への需要は高まっています。
データ分析人材になりたい、あるいはデータ分析人材を獲得したいと考えつつ、「文系で数字に弱くプログラミングの知識もゼロ……」「有能なデータ人材は奪い合いになっていて、なかなか採用できない」と悩むビジネスパーソンや企業は多く存在します。
そのような方々におすすめの一冊が、『データ分析人材になる。 目指すは「ビジネストランスレーター」』(日経BP)。
この記事では同書の内容を紹介し、データ活用の推進に欠かせない「ビジネストランスレーター」の役割や活躍のポイントといった点についてわかりやすく解説します!
2020年10月に出版された『データ分析人材になる。 目指すは「ビジネストランスレーター」』(以下、『ビジネストランスレーター』)。三井住友海上火災保険株式会社(昨年ウイングアーク1stのオンラインイベントupdataNOW 20に登壇! 詳細はコチラ)にて、データサイエンティストとして働く木田 浩理氏、伊藤 豪氏、高階 勇人氏、山田 紘史氏の4名によって執筆された書籍です。
「データサイエンティスト?なら結局は専門的で素人にはついていけない話になるんじゃないの?」
──その心配はご無用です。
プリンシパル(最高位)データサイエンティストとして実績を残し、書籍を著すまでに体系的な知見を持つ木田氏・伊藤氏ですが、そもそもは“「ど文系」の営業マン(※)”であり、独学で分析を学んだ、と『ビジネストランスレーター』で説明されています。木田氏は30歳からデータ分析人材を目指しはじめたとのこと。
では、どうすれば知識・経験ゼロの状態からデータ分析人材になれるのでしょうか?
そこで伝授されるのが「5Dフレームワーク」という方法論です。
※…木田 浩理 (著), 伊藤 豪 (著), 高階 勇人 (著), 山田 紘史 (著) 『データ分析人材になる。 目指すは「ビジネストランスレーター」 Kindle Edition』日経BP、2020、ロケーション2623の2569
5Dフレームワークは、5ステップでデータ分析の下準備から結果を報告し行動変容につなげるまでのマイルストーン(中間目標点)を整理する考え方です。
【1】Demand:要求を聞く
【2】Design:全体の絵を描く
【3】Data:データを集める
【4】Develop:分析する
【5】Deploy:展開する
例えば、ある日あなたが「全社DXチーム」に参加を命じられ、データ活用推進を求められたとします。まず着手すべきなのはデータを用いて何を実現したいのか、要求をヒアリングして定義すること。要求を曖昧にしたまま分析をはじめると、分析にかけた時間や手間が徒労に終わってしまう可能性が高いです。
要求やその背景にある事情を把握し、依頼者と握りあったうえで全体の計画を立てるのが2つ目の「Design」ステップです。仮説を立て、最終的なゴールを思い描いたうえで分析に着手することで「目的と分析手段の間に齟齬がある」「思うような分析結果が得られず右往左往……」といった事態を未然に防げます。
ここまで下準備をすることでやっとデータを集める段階に入ります。とはいえ、データの取得が難航する場合などは、再びDemandステップやDesignステップに戻ってやり直すこともあります。
データが集まったらいよいよ分析フェーズに入ります。Excelを用いる場合、データ分析専用ツールを用いるべき場合、他社へ依頼する場合の注意点、可視化ツールの使い方など、具体的に解説されているのが『ビジネストランスレーター』がデータ分析初心者にも優しいゆえんです。いずれの手段を用いるにせよ、まずは手を動かすことが同書では推奨されています。
データが実際に”活用されるかどうか”は最後の「Deploy」ステップで大きく左右されます。「1回限り型」「定型観察型」「推薦システム型」の3つにアウトプットの形を分類し、それぞれについて推奨される形が解説されています。
このように5つのステップで状況を整理したうえで、それぞれについてありがちな落とし穴や意識すべきポイントといった現場で“使える”情報が得られるのが『ビジネストランスレーター』が実用書として優れている点です。
書籍のタイトルにも含まれている「ビジネストランスレーター」は“経営者・一般社員とデータサイエンティストの橋渡し役”を意味します。データ活用は、経営やマーケティング、営業といった部門の目的に沿ったプラスの結果を実現することで初めて成功したといえます。データサイエンティストは、あくまでも統計解析や機械学習といった分析手法の専門家であり、前述の5Dフレームワークで求められるビジネススキルに精通しているとは限りません。そのため、高い技術を持ったデータサイエンティストが存在しても、要求のヒアリングやデータの収集、分析結果のプレゼンテーションなど「5Dフレームワーク」のいずれかの段階でつまずいてしまうことは少なくないのです。
そこで、活躍が期待されているのがビジネストランスレーター。ビジネスとデータ分析の両方の領域に理解のあるジェネラリストとして、両者をつなぐことでデータ活用プロジェクトを成功まで導きます。
だからこそ、現場を知る文系人材がデータサイエンティストの前にまず目指すべき役割として注目を集め始めているのです。McKinsey Global Instituteは「USにおいて次の10年で200~400万のビジネストランスレーターが必要になるだろう」と予測しています。
『ビジネストランスレーター』の第3章「5Dフレームワークによるデータ分析人材育成法」ではビジネストランスレーターを育成する方法が解説されています。
今回の記事では『データ分析人材になる。目指すは「ビジネストランスレーター」』をご紹介しました。同書をひとことでまとめると、「データ活用ってどうすればいいの?」と疑問を抱いている方が、データ分析プロジェクトの失敗・成功プロジェクトの両方を経験してきたからこそ得られた木田氏らの知見をまとめて得られる良書です。
文系で全く知識・経験がないという方でも──むしろ、そういう方こそ手に取ってみることをおすすめします!
【参考資料】 ・木田 浩理 (著), 伊藤 豪 (著), 高階 勇人 (著), 山田 紘史 (著) 『データ分析人材になる。 目指すは「ビジネストランスレーター」 Kindle Edition』日経BP、2020 ・AI人材でビジネストランスレーター(翻訳者)のニーズが高まっている理由┃NIKKEIスタッフnote ・データドリブン経営に必要な ビジネストランスレーターとは? 経営企画力×データサイエンス┃datamix ・元営業のデータサイエンティストが見つけた「現場でデータ活用が進まない理由」┃@IT ・Lost in translation<MacKinsey Quarterly┃MacKinsey & Company
(宮田文机)
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