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er図の3つの種類と6つの要素をわかりやすく解説|メリット・活用法とは

         

er図はデータベースの分野においては、一度は耳にしたことのある用語だと思います。er図とは、データ同士の関連性を可視化するデータモデリングのためのツールです。データベース設計などで使われる代表的な手法ですが、er図は一見すると記述方法が複雑に見えるうえ、企業のデータマネジメントを推進する際に、社内に存在するデータの種類や関係性、処理の流れなどを整理するためにも、er図は重要なツールとなります。そのため「er図の書き方をわかりやすく知りたい」という方は多いのではないでしょうか。

この記事では、er図の書き方の基本であるer図の3つのモデルと6つの要素について、er図のメリット、活用法なども交えてわかりやすく解説していきます。

er図・erモデルの概要と目的

er図とは

er図とは、ITシステムが扱うデータの関連性を表すための手法です。erは「実体」を意味する「Entity(エンティティ)」と「関連」を意味する「Relationship(リレーションシップ)」の略で、er図で表されるデータモデルをERモデルと呼びます。

エンティティとは「顧客」「注文」「商品」などのデータのまとまりのことです。関連するエンティティ同士を結び、データの構造を図式化していくのが、er図の基本的な書き方です。

er図はExcelでも作成することができますが、修正などのメンテナンスに手間がかかってしまうため、er図作成ツールを利用するのがおすすめです。無料のツールも多数存在しているため、目的に合ったツールを探してみるのがよいでしょう。

er図の3つのデータモデル

er図は「概念データモデル」「論理データモデル」「物理データモデル」と呼ばれる3つのデータモデルがあります。これらは、どれか1つを作成すればよいというものではなく、段階的に作成していくものです。

ここでは、er図の3つのデータモデルについて説明します。

概念データモデル図

概念データモデル図は、er図において、最初に作成するデータモデルです。

概念データモデル図では、システムに必要なエンティティとそれらの関連を洗い出します。この段階ではデータベースの実装は考慮せず、処理の大きな流れとデータ同士の繋がりをモデリングすることが目的となります。

※著者作成:論理データモデル図

論理データモデル図

論理データモデル図は、概念データモデル図の次に作成するデータモデルです。ここでは、概念データモデル図に対してさまざまな情報を付加していきます。

具体的には、エンティティの持つ属性や主キー、外部キーを定義し、エンティティ間のリレーションについて多重度の設定などを行います。

論理データモデル図を作成することによって、エンティティの要素やエンティティ間の関連性が定義され、データベースを構築するための基本的な情報が盛り込まれた状態となります。

※著者作成:論理データモデル図

物理データモデル図

物理データモデル図は、er図で作成するデータモデル図の最終段階になります。ここでは、Oracle Databaseなど特定の物理データベースでの実装を想定した情報を付加します。

具体的には、属性などの要素について、物理データベースのルールに則ったデータ型を定義するなど、データベースの構築に必要となる内容を決定します。

※著者作成:物理データモデル図

er図を作成する目的

er図を作成する目的は、データベースが保持する情報を明確にし、データ同士の繋がりを整理することです。データの関係を図にすることによって、誰が見ても理解できる形となり、データベースの設計や運用管理を容易にすることができます。

また、それぞれのデータベースに必要な要件や構成を明確化し、最適なデータベースを構築することにも役立ちます。

er図を作成するメリットと活用法

er図のメリット

er図を作成することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。3つのポイントからER図のメリットを説明していきます。

データベース開発におけるバグ抽出・手戻り防止になる

er図のメリットの1つ目は、データベース開発においてバグの抽出や手戻りの防止になることです。

er図を作成することによって、データベース設計の初期段階からデータの属性や関係性などについて十分に検討することになるため、設計誤りによるバグや検討漏れによる手戻りなどを防止することができます。

データベースの保守・運用フェーズの指針となる

er図のメリットの2つ目は、データベースの保守・運用フェーズの指針となることです。

データベースの構成は、設計者だけでなく、後のフェーズである運用・保守の担当者にも共有される必要があります。er図によってデータベースの構成をドキュメント化しておくことにより、データベースのメンテナンスや改修、新規機能追加など、保守・運用に関わる作業を行う際に役立ちます。

データベースの最適化ができる

er図を作成する3つ目のメリットは、データベースの最適化ができることです。

通常、企業内では複数のITシステムが連携し合っています。その中には、利用頻度が低く管理が行き届いていなかったり、煩雑な構成になっているデータベースが存在することも少なくありません。

er図を作成することで、データベースの構成の改善や、保持するデータの整理など、データベースの最適化を検討することができます。

er図の活用法

er図は、どのようなシーンで活用されているのでしょうか。er図の活用法について代表的なものを2つ紹介します。

データベース設計

これまでも述べてきたように、er図はデータベース設計において標準的に使われているツールです。

企業のデータベースは、扱うデータの種類も量も膨大で、さらにデータベース同士が複雑に関係し合って運用されます。そのような状況で、最適なデータベースを設計するために、設計の初期段階からer図などを用いてデータモデリングを行うことが重要となるのです。

企業内のデータ活用

er図は、企業内のデータを収集・分析し、企業活動に活用していこうとする際にも有用です。

er図は、企業内のさまざまなシステムに点在するデータについて、どのようなデータが保持されているかを把握するために役立ちます。ER図を作成することによって、データを効率的に収集し、活用することにつながります。

er図の6つの基本要素

er図の記法は複数存在しますが、いずれの記法においても、基本要素の考え方は共通しています。ここでは、er図の書き方を理解するうえで、覚えておくべき6つの基本要素について解説していきます。

なお、サンプル図の記法の詳細についてはここでは割愛します。

エンティティ

エンティティは先述のとおり「実体」を意味し、「顧客」「商品」などデータベース上に存在するデータのまとまりのことを指します。

エンティティは必ずしも物理的に存在するものとは限らず、「注文明細」などの情報や、「入金」などの行為のこともあります。

※著者作成:エンティティの例

アトリビュート(属性)

アトリビュートとは、エンティティの持つ属性情報のことです。

例えば「顧客」というエンティティのアトリビュートは、氏名、年齢、電話番号といったものになります。アトリビュートは、主キーや外部キーも合わせて記述します。

※著者作成:アトリビュート(属性)の例

リレーション(関係)

リレーションとは、エンティティ同士の関係を表します。er図では関係のあるエンティティ同士を矢印や線で繋いで表現します。

※著者作成:リレーション(関係)の例

カーディナリティ(多重度)

カーディナリティとはリレーションにおいて、多重度を表す要素です。カーディナリティは「1対1」「1対多」「多対多」といった関係をとります。

例えば、「注文」と、注文の詳細情報を持つ「注文明細」というエンティティの間には、1対多の多重度があります。

※著者作成:カーディナリティ(多重度)の例

エンティティの依存関係

エンティティの依存関係とは、エンティティ同士の関係を表す要素で、必ず紐づくエンティティが存在しなければならない親子関係のあるリレーションのことです。

例えば先ほどの「注文」と「注文明細」は、「注文」という親となるエンティティが存在しなければ「注文明細」という子となるエンティティは存在できないため、依存関係にあるといえます。

※著者作成:エンティティの依存関係の例

エンティティの非依存関係

エンティティの非依存関係とは、エンティティのどちらかがなくても成り立つ関係のことです。例えば「社員」と「社内サークル」のように、リレーションはあるものの、それぞれ紐づくデータがなくても成り立つような関係のことを指します。

※著者作成:エンティティの非依存関係の例

まとめ:er図のデータマネジメントに活用しましょう

ここまで解説してきたように、er図とはデータ同士の関係性を可視化するためのツールです。企業においてデータマネジメントを推進する際にも、er図を用いたデータモデリングは非常に重要なアプローチとなります。

ぜひer図の書き方を身につけ、データ活用の現場をリードしていきましょう。

著者:羽守ゆき
慶應義塾大学を卒業後、大手IT企業に就職。システム開発、営業を経て、企業のデータ活用を支援するITコンサルタントとして10年超のキャリアを積む。官公庁、金融、メディア、メーカー、小売など携わったプロジェクトは多岐にわたる。 現在もITコンサルタントに従事するかたわら、ライターとして活動中。

(TEXT:羽守ゆき 編集:藤冨啓之)

 

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