GXは、持続可能な社会経済の発展を実現するための、環境に配慮した革新的な取り組みを指します。これには、化石燃料に依存する現状から、再生可能エネルギーや水素、アンモニアなどのクリーンなエネルギー源へのシフトが含まれます。具体的には、温室効果ガスの排出量を削減し、エネルギー供給を持続可能なものに転換することで、環境負荷の低減を図ります。また、CNはGXの包括的な目標の一つであり、経済活動全体での炭素の排出量と吸収量を相殺し、ネットゼロを達成することを目指しています。これには、産業構造の変革、エネルギー効率の改善、革新的な技術の導入といった、幅広い戦略が必要とされます。
対して、DXはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)はデジタルによる変革を意味するものです。たとえば、業務効率化のためにペーバーレスを実現し、業務内容や業務フローを大きく変化させ、組織が変化したといった場合は、DXに該当します。
GXを実現するためには、エネルギーの可視化や炭素排出量の見える化なども必要となるため、DXに該当する変革を前提としている部分がある点も知っておきましょう。
ここでは、GXに関連する政府の取組みについてみていきましょう。GXが重視される理由には、温暖化の加速といった環境問題・エネルギーの需給・重点投資分野にGXが指定されている点などが挙げられます。
近年で政府が行った施策・計画には次のようなものが挙げられます。
・2021年6月グリーン成長戦略
・2021年10月第6次エネルギー基本計画
・2022年6月(中間整理)クリーンエネルギー戦略
まず、グリーン成長戦略は将来の成長が期待される14分野の技術・産業の戦略について策定したものです。たとえば、自動車・蓄電池産業では、2035年までに新車販売における電動車を100%にするといった目標が掲げられています。
また、CN投資促進税制や新技術に対応する規制改革などの政策が盛り込まれています。
次にエネルギー基本計画は、3年ごとに見直し・検討が図られるエネルギー制作の指針を示すものです。第1次は2007年からスタートしており、第6次では、2030年時点で50%の温室効果ガス削減を実現するための政策指針とエネルギー安定供給、コストの低減(S+3E)といった取組みを示しました。
再生可能エネルギーの導入拡大や水素やアンモニアを資源とした燃料の代替、個人単位では住宅の省エネ性能の向上などにもふれられています。
そして、クリーンエネルギー戦略は需要側のエネルギー転換、経済や産業の構造についてクリーンエネルギー中心としたものに転換するための政策の対応整理を意味するものです。
たとえば、エネルギーの安定供給を図ったうえで脱炭素エネルギーへの転換、中小企業における10%の省エネを促進するための支援体制などを進めていくとしています。
GX推進法(脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案)は、脱炭素社会の実現を行いながら、経済成長をGX投資によって促すための法律です。以下、5つの要素で構成されています。
1.GX推進戦略の策定・実行
政府によるGX推進のための戦略策定と検討・見直し
2.GX経済移行債の発行
2023年から10年間にわたりGX経済移行債を発行する(脱炭素を行うための設備・技術開発支援で20兆円規模)
3.成長志向型カーボンプライシングの導入
排出される炭素に価格が付けられ、GXに取り組む事業者にインセンティブを発生させる
4.GX推進機構の設立
民間企業のGX投資の支援やカーボンプライシングに関連する料金の徴収
5.進捗評価と必要な見直し
法律上の措置も含めた見直しの実施
現在は、具体的施策が策定されていないものが多く、法的な強制力があるものではない点も含めて、あくまで「企業のGXを促進するための法律」となっていると言えるでしょう。
GXに対する政府の取組みをふまえたうえで、ここでは、GXの現状について、日本と海外の対応についてみていきましょう。実際に、日本の場合は「多くの戦略や施策が示されているものの、具体的に何をどうするのか」については言及されていないと言えます。
そのうえで、海外との違いを知り、今後どのような変化がもたらされるのかを想定し、対応していくことが大切です。
日本においては、政府が示した戦略や指針が数多く存在しています。グリーン成長戦略やクリーンエネルギー戦略などは、2050年のCNを意識したものです。
しかし、GXに取り掛かるためには自社のCO2排出量の把握も含めて、DXの実現が必要です。そのため、「政策や施策そのものは知っているが具体的にどう動いていいのかわからない」といった企業や自治体も多いのが実状です。
補助金として、グリーンイノベーション基金事業やクリーンエネルギー自動車導入促進補助金なども存在しているものの、使用する燃料やエネルギーの転換が可能になるまでには道のりが遠いと言えるでしょう。
そういった状況の中でも、官民一体となってゼロカーボンシティの実現を目指す北九州市の事例などは参考の1つになります。
詳しくはこちらの記事から。
国によって違いはあるものの、クリーン水素(環境配慮のうえで生成された水素)製造に対する税金控除・脱炭素に向けた長期的投資・ロードマップの策定に取り組んでいると言えるでしょう。
アメリカは2005年と比較して、2030年までには温室効果ガスの排出量を50%ほどを削減することを目指しています。2050年までのCNの実現という点では日本と同様です。そのうえで、次のような施策を実施しています。
・電力面-再生エネルギーの導入加速のための設備投資や生産税額控除、投資額控除の実施
・燃料面-クリーン水素製造の税額控除、EVメーカーに対する減税・補助の検討
ロードマップを策定したうえで、2030年までには温室効果ガスを2005年比で40%削減できる、2050年には産業部門の脱炭素を87%まで実現できるとしていることから、アメリカはGXに前向きに取り組んでいると言えるでしょう。
EUは、CN実現と温室効果ガス排出量削減のために次のような施策や計画を発表・実施しています。
・2020年1月-10年で140兆円相当の投資を行うグリーン・ディール投資計画を発表
・2021年5月-船舶輸送と航空機の免税措置の廃止を含むFitfor55を発表
・2022年3月-再生可能エネルギーへの移行を推進するREPowerEU計画を発表
REPowerEU計画においては、太陽光発電の発電容量を現状の200GWから2025年までに320GWに増加させる、水素の生産量を2030年までに1,000万トンまで引き上げ水素市場を開設する予定としています。とくに、製造拠点の整備に必要な手続きの簡略化などは今後日本でも実施される可能性もあります。
フランスも2050年のCN実現を目指している点は同様です。取組みとしては、次のような項目が代表的です。
1.2022年7月-次世代原子炉開発投資と電力会社EDFの国有化を発表
2.2023年3月-再エネ生産加速法の施行。2050年までに、太陽光発電の発電容量を100GWに増加させる、洋上・陸上どちらの風力発電の容量も40GWに増加させるという目標を立てた。行政手続きの簡略化、土地活用の活用、利益分配などの具体的な方針がある
3.2020年-国家水素戦略を発表。水素関連素材の開発・生産支援し、2022年には21億ユーロの補助金を出している
国家水素戦略に関しては、水素地域エコシステムが形成されており、2024年までに1日あたり5トンの再生エネルギーによって生成したグリーン水素を製造する予定としています。とくに、水素製造の施策やサプライチェーンの面では特化していると言えるでしょう。
GXは化石燃料からクリーンエネルギーへの転換を行うための変革を意味するものです。そして、GXの関連する施策の1つである、CNを実現するためには目標を把握したうえで、燃料エネルギーの転換やCO2を削減する取組みが官民一体で必要となります。
現状では、国内だと「指針や目標は多いものの、具体策が把握できない」というケースも多いでしょう。しかし、今後はより具体的な施策が示され、協力的な企業であれば、カーボンプライシングによる恩恵を受けることも想定されます。そのため、自社のCO2排出量の把握やエネルギー削減など取組みやすい課題から取り組んでみましょう。
(TEXT:鈴原千景)
経団連|グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて経済産業省|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略経済産業省 資源エネルギー庁|2050年カーボンニュートラルを目指す 日本の新たな「エネルギー基本計画」産業技術環境局・資源エネルギー庁|クリーンエネルギー戦略 中間整理経済産業省 資源エネルギー庁|GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けた課題と対応環境省|脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案【GX推進法】の概要
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