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2023年12月1日、イベント「福岡から始まる! データ活用と自動化が生み出す価値を語り合おう~BI×RPA最前線~」では、RPAやAIをはじめとした自動化プラットフォームのUiPathのユーザーコミュニティ「UiPath Friends」と、BIツールのDr.SumやBIダッシュボードのMotionBoardのユーザーコミュニティ「nest」のメンバーが集い、ツールの組み合わせによる業務自動化について情報共有を図った。本記事では、その内容をダイジェストしてお伝えする。
はじめにMotionBoardとUiPathのコンセプトや機能について確認しておこう。まずはMotionBoardからだ。
ウイングアーク1stが提供しているBIツールには、WebやExcelなどからデータを収集・集計することに重点を置くDr.Sumと、収集・集計されたデータを可視化し分析を容易にするMotionBoardがある。BIツールはさまざまなデータを集約・可視化し、そこから気づきやインサイトを得る意思決定・課題解決ツール。使い道として最も分かりやすいのは経営情報分析だが、nest九州沖縄ワーキンググループで活躍する陣内一生氏(株式会社リプライオリティにてデータ活用を担当)は、BIツールについて「会社には会社の、部署には部署のBIがある」と各々に合ったツールがあることを表現するとともに、MotionBoardの特長を「データ収集能力に加えて豊富なデータ入力機能を備えていること」だと話す。
続けて、ヤンマー建機株式会社で生産系DXを担当する沼田慎平氏も加わり、活用のデモンストレーションを行った。
「例えばExcelのデータをアップロードするにも、データの取り込み方をあらかじめ定義しておけば、画面上のボタンをクリックするだけでExcelファイルの内容を自動的に読み込み、決めておいたグラフなどの形で可視化できます。ExcelやCSVファイルだけでなく、データベース(DWH)、クラウドDB、クラウドストレージ、クラウドサービスなど60種類以上のデータソースから、データソースコネクターを介して簡単・正確にデータを取り込めることに加え、データ入力機能が豊富に備えられています。例えばData-Jig機能を利用すれば既存データのテーブルを選択してデータ型・入力項目を選択するだけで、簡易に入力フォームが作成されます。作成した入力フォームにデータを記入すればそのままテーブルに書き込むことができるため、データ可視化画面から離れることなく、必要なデータ追加などが行え、すぐに可視化結果に反映できます」(陣内氏・沼田氏)
レポート出力・配信についても、出力・配信の形式を決めたボタンをクリックするだけで、定型的なExcelやPowerPointへの出力や、チャットやメールとして配信が可能だ。また、頻繁に更新されるデータを反映するためには、更新を検知して自動アップロードを実行する「MotionBoard Agent」を導入しておけば、共有フォルダのデータファイルが更新されたタイミングまたは周期的スケジュールで自動アップロードされることが紹介された。
「MotionBoardを操作している間に元データに変更を加えて、すぐに可視化画面に反映させることもできるなど、データ収集・可視化を行うだけでなく、そこから先の業務につなげるためのアプリ開発ツールのように使える点が特に優れています」(陣内氏)
UiPathをはじめRPA利用に精通したフリーランスエンジニアでUiPath FriendsメンバーのShige氏は、特に業務ワークフローの設計を行う自動化開発ツール「UiPath StudioX」の特長を紹介した。
「かんたん、はやい、まよわない」をコンセプトとして現場でワークフロー自動化に関する開発が行えるのがUiPath StudioXだ。ポイントはVBなどのプログラミング知識がなくても開発可能であることに加え、Excel連携のための「Excelアドイン」が利用できるところにあるという。Excelと背後で連携し、作業シナリオの作成画面で随時Excel画面を参照したり、シート内の列名などの項目名(セル番号だけでなくその文字)を見て選択・指定操作したりできる。
例えば、株価の取得を行うワークフローを作成してみる。特定Webサイトにある株価情報から必要な銘柄の現在株価を収集し、Excelに取り込むシナリオは、次のようにクリック/ドラッグ/ドロップのマウス操作だけでほぼ完成できる。
こうした作業シナリオ(ワークフロー)作成においての操作性は各RPAベンダーが競っているところだが、Shige氏は「キーボード入力を最小限にして、ドラッグ&ドロップでさまざまな操作を記述していけるStudioXは、これまでに比較して最も直感的に操作できるものになっている」と評価した。
さて、RPAツールとBIツールを組み合わせてデータ活用をいっそう進化させるにはどうすればよいのだろう。大きく分ければやり方は2通りある。BIツールがRPAツールの処理を助けるのか、RPAツールがBIツールの処理を助けるのかである。
nestメンバーであるヤンマー建機株式会社の戦略部DX推進グループ課長の田中重信氏は、自社での組み合わせ活用について次のように紹介した。
「MotionBoardでデータ集計と分析を行い、その結果を他のITツールにつなげるためにUiPathを利用する方法を考える。MotionBoardが直接接続できるツールもあるが、そうでないツールにはUiPathの利用が便利だ」(田中氏)
田中氏が例に上げたのは同社のユニフォーム(制服)の在庫管理業務の効率化例である。ユニフォームの在庫状況を、ワークフローツールと連携したMotionBoardのダッシュボードで常時管理し、適正在庫の基準を満たさない場合(足りなくなりそうな場合)に、その状況を自動監視しているUiPathによってユニフォームの発注システムに情報を渡して発注作業を自動実行することを目指している。
MotionBoard利用前はExcelへの入力とそのチェックが必要だったが、MotionBoardには入力フォーム作成機能があり、MotionBoard上で入出庫状況を直接入力して管理可能になったのが1つの効率化ポイント。管理リストを監視して不足した品目が発生したらUiPathのロボットにより自動発注が行われるため、人間の作業量が削減されるのが、もう1つのポイントだ。
ヤンマー建機のDXの基本は、データを1つのデータベース(Dr.Sumを利用)に全て集約することだという。各種の業務システムや生産系データ、IoT系のデータ、品質管理系のデータ、さらに個別ユーザーのパソコン上のデータなどのあらゆるデータを収集して、MotionBoardで可視化する仕組みを構築。現在は350のIDを発行し、データ分析や監視が必要な社員がExcelと同じようなレベルで可視化情報作成と利用ができるようにしている(下図)。
ところがそこで課題になったのが、Dr.SumのETL機能(Dr.Sumコネクト)でも接続できないシステムがあることだ。世界展開する同社の場合は特に海外拠点でのデータベースやシステムが多様でデータ形式が異なるため、全世界のデータを比較したり総合分析が難しい。データ連携のためのAPI開発などを行うにはコストと期間が障壁になる。
これを解決したのがUiPathだ。一例として田中氏は、海外拠点の品質/保証データをDr.Sumに取り込み、その上でMotionBoardに情報を渡して総合分析を可能にした例を紹介した。手順は次の通りだ。
ここまでの作業は従来、人間が行ってきた。その作業時間は年間42.5時間あったのだが、UiPathによってほぼゼロにすることができたという。現在はUiPath Orchestratorという自動化管理ツールを用いて、定期実行で1日に6回のデータ連携が行えるようになっているとのことだ。
UiPathによって、MotionBoardとの連携が難しい(高コストになる)システムでも連携が可能なったことにより、「低コストに短期開発して、リアルタイムでグローバルに分析できるようになった」と田中氏は明かした。
講演ではアメリカ拠点でPowerBIによって管理しているデータを1年分抽出し、Excelにまとめ、SmallData Managerを介してMotionBoardに連携させて可視化画面を更新するデモンストレーションも行われた。通信環境があまり良好ではない中、約3分でデータがダッシュボードに可視化された。
田中氏は「UiPathとMotionBoardを上手に組み合わせることで、もっと多くのことを、低コストかつ手っ取り早く実現できるはずです」と語った。
データ活用の障壁になっている大きな要因の1つは社内にデータが散在し、定形データと非定形データが混在していることにある。一般的にBIツールは定形データを取り込み可視化することは得意だが、非定形データを直接取り込むことが難しい。Excelデータを取り込むのは容易だとよくいわれるが、それはきれいに整理された定形データを前提にしている。「Excel方眼紙」のように、行・列とデータ内容に関係性がないものが含まれると、そのまま集計や分析が行えない。
この課題に取り組んだのが、nestメンバーであるエコー電子工業株式会社DXソリューション部の山下悦矢氏とAutoFor株式会社代表取締役の川島誠也氏だ。その取り組みの1つの事例が次のように紹介された。
ある会社には、複合機の出力状況レポートを月次で作成する業務がある。総出力量やカラー/モノクロ別の出力量などを分析し、複合機の適正配置や出力量削減によるコスト削減、さらに電子化を図るための現状把握といった目的に役立てるためにその業務がある。
この業務は複合機ベンダーのA社からメールで提供されるExcelによる出力状況データと、複合機ベンダーB社のポータルサイトからダウンロードする出力状況データが混在している。しかもExcelの中身はセルが結合されていたり、空白行があったり、規則性に欠けていたりする非構造データの場合が多い。これを従来は担当者が中間フォルダに集め、月次レポートに仕立てていく作業を行っていた。月次レポートはExcelで40MBと巨大なサイズになるほどのボリュームがある。作業工数は月に1.5時間ではあったが、営業業務兼任の担当者には多大な負担となっていた。また月次レポートを修正したり内容を検索したりといった作業を行うにはExcelの動作が重く、データが入手できても活用のための労力・時間がかかっていた。
「担当者はAPI連携などの方法がとれないかと提案したが、複合機ベンダーからは断られました。また、同じ業務フローでRPA化しようとすると、月に1.5時間の作業工数削減のために新たな開発はできない、費用対効果が適正でないと却下されました」と山下氏は話す。
しかしその担当者の課題を解決するために、山下氏らのチームはUiPathでExcelの比較的新しい機能であるPower Queryを利用することにした。Power Queryは一種のETLツールで、Power Queryエディタ機能でデータの変換、転記、結合、挿入、削除、レイアウト変更などのさまざまな編集を可能にしている。この機能を併用し、UiPathで適切にPower Queryを起動・操作し、その結果を取り出してきれいに整形されたデータとしてMotionBoardに渡す仕組みを考案した(下図)。
このようなワークフロー記述のためにはPower Queryの使い方を知り、また非定形データからパズルを解くように適切なデータを抽出する設定作業も必要になるため複雑ではあるが、VBなどでプラグラミングするよりもずっと簡単に、また専門技術者の手を借りずに、自動化を実現することができる。
そして肝心なのが、このように加工されたデータをUiPathのロボットにより即時にMotionBoardにアップロードできることだ。MotionBoard側では新しいデータをすぐに可視化できるし、過去データを加えて分析可能な可視化をすることも簡単だ。重いExcelファイルを開く必要はもうなくなる。
しかし効果はこれにとどまらない。山下氏は「UiPathとMotionBoardのかけ算でレポートの再定義ができる」と強調した。従来のレポートはデータの羅列だが、UiPathとMotionBoardの組み合わせだとリアルタイムの情報を含めて紙の使用枚数にとどまらない複合機使用状況を明らかにできると川島氏は話す。同チームが作成したダッシュボードでは、モノクロ/カラーの使用量の実数が表示されるばかりでなく、個々の複合機の使用状況と運用コスト(レンタル料金)が表示できる。現在の使用状況では1年間にどれだけのコストになるのかの推計も表示できるようにした(下図)。
「このように可視化されたデータを見れば、例えばカラー機とモノクロ機の配置が適正なのか、フロアの位置によって出力枚数に偏りが大きい場合は位置を変えるか使用量が少ない場合は撤去するかという今後とるべきアクションに結びつくはずです。また月次データをドリルダウンして日時データを見れば、例えばある1日に突出して出力量が多い場合は何か特定の作業が影響していることが推測されるので、その作業の必要性を検討することもできます。出力量を削減する運用法に変えた場合にどれだけのコスト削減ができるのかも簡単にシミュレーション可能です。このように、UiPathとMotionBoardを組み合わせることで、レポートを『現状把握』から『アクション変革』へと再定義できます」(川島氏)。
以上、講演の内容をダイジェストした。実際の会場では、参加者が互いに自己紹介しあい講演の感想を共有する機会が設けられ、闊達な意見交換が行われた。
今回のイベントでは、異なるツールのユーザーコミュニティのつながりが新しいデータ活用法を生み出していく様子を見てとることができた。
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