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自社のDXは他社と比べて進んでいるのか、遅れているのか? DX人材は外部から調達すべきか、内部で育成すべきか?
産業を問わずDXが進展する中で、客観的な指標がほしいと考える方は多いでしょう。
本記事では、2022年10月、ウイングアーク1st株式会社が、売上高100億以上の役職者(部長などマネジメント層)530人を対象に実施した「DX人材およびデータ活用の実態調査」を下敷きに、企業のDXの現状や推進者の実態を分析していきます!
まずは、回答企業全体のデータ活用がどのレベルまで進んでいるのかを見ていきましょう。
「DX人材およびデータ活用の実態」によると、全体の約1/4の企業のデータ活用は「業務改善、オペレーション効率化(チーム、部門単位など局所的にデータ活用の仕組みが用意されている)」レベル(25.5%)です。
それに次ぐのが「パーソナル業務における効率化(個人のスキルレベルに沿いExcelなどを利用しデータ活用を行なっている)」レベル(17.2%)でした。
※……引用元:DX人材およびデータ活用の実態を調査 日本のDXを阻むものは何なのか? 日本企業のデータ活用の平均レベルも明らかに┃ウイングアーク1st
注目したいのが「まったく行っていない」レベル(11.2%)と「わからない/応えられない」レベル(13.2%)の合計だけで、24.4%とほぼ全体の1/4を占めるということです。
「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」(総務省)によると、東京23区、政令指定都市、中核市、その他市町村で大企業のDX進展が中小企業を上回っています。そのため、売上高100億未満の企業も含めればより、DXの一環であるデータ活用の取り組みが遅れている企業の割合は増加すると推察されます。
引用元:令和3年版情報通信白書┃総務省
データ活用レベルのアンケートで「まったく行っていない」「あてはまるものはない」「わからない/応えられない」を省いた回答の割合は73.5%でした。そのうち、「非常に注力している」「やや注力している」と回答した80.9%(全体では約59.5%)から得られた「データ活用/分析によるメリット」の回答ランキングは、以下です。
※……引用元:DX人材およびデータ活用の実態を調査 日本のDXを阻むものは何なのか? 日本企業のデータ活用の平均レベルも明らかに┃ウイングアーク1st
経営判断に携わる割合の多い役職者の回答であることから、「効率的な経営判断ができている」(40.3%)が大きな割合を占めており、「改善PDCAが回せるようになった」(38.7%)がそれにつづきます。
また、「マネタイズができた」(20.6%)と新たな事業にまでDXがつながっている企業が約1/5存在することにも注目したいところです。DXで成果が出せている企業と、まったく取り組みが行えていない企業の間ではすでに大きな格差が生じています。
「自社もDXの必要性は感じているが、DX人材がいないので、進められない……」
そう思った方に見ていただきたいのが、以下のグラフです。
※……引用元:DX人材およびデータ活用の実態を調査 日本のDXを阻むものは何なのか? 日本企業のデータ活用の平均レベルも明らかに┃ウイングアーク1st
「まったく行っていない」「あてはまるものはない」「わからない/応えられない」以外を回答した73.5%のうち、「全く注力していない」と回答した2.6%以外の人々(全体の約71.6%)に「データ活用/分析を行う担当者」について尋ねた結果が上図です。
1位は「社内にいる専門家」(54.3%)ですが、それに匹敵する割合で「社内の非専門家(49.7%)」が回答されています。
もちろん、データ活用/分析を行う非専門人材の6割以上が自身でデータ分析を行うことに不安を覚えており、反発や分析ミス、属人化といった問題が生じる可能性は否定できません。
※……引用元:DX人材およびデータ活用の実態を調査 日本のDXを阻むものは何なのか? 日本企業のデータ活用の平均レベルも明らかに┃ウイングアーク1st
とはいえ、自社のビジネスにフィットしたデータ分析(DX)人材を得るにあたって、「社内の非専門家人材の育成(ビジネスマインドを持った現場出身社員の育成)」が好ましい」と回答した人の割合は50.8%と半数を超えており、DXの推進において外部の専門家にはない価値を社内人材が発揮できる可能性は高いです。
データ分析を外部化することに前向きな企業も数多く存在し、より高度な分析や自社人材の適材適所での活用を進めるにあたってもちろんそれは好ましいことでしょう。
※……引用元:DX人材およびデータ活用の実態を調査 日本のDXを阻むものは何なのか? 日本企業のデータ活用の平均レベルも明らかに┃ウイングアーク1st
ただし、DX先進企業のなかでも「社内の非専門家人材」を活用しているケースは多く、社内全体のDXリテラシー向上が求められることも押さえておきたいところです。
DX人材の育成にあたってうまく活用したいのが経済産業省が独立行政法人情報処理推進機構(IPA)と取りまとめた「デジタルスキル標準」です。2022年3月には全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルとして「DXリテラシー標準」が、2022年12月にはDXを推進する人材の役割や習得すべきスキルの標準として「DX推進スキル標準」がリリースされました。
DX推進スキル標準において、DX推進人材は下記の5類型にわけられます。
【1】ビジネスアーキテクト
【2】デザイナー
【3】データサイエンティスト
【4】ソフトウェアエンジニア
【5】サイバーセキュリティ
また、各類型ごとに2~4つのロールが用意されており、たとえば「データサイエンティスト」には以下3つのロールが存在します。
1.データビジネスストラテジスト:ビジネス戦略にもとづきデータ戦略を策定、他人材のマネジメントや連携サポートに携わる
2.データサイエンスプロフェッショナル:データサイエンスの専門性を持って、データの処理・解析や評価を行う
3.データエンジニア:効果的なデータ分析環境の設計・実装・運用を行う
参考:デジタルスキル標準ver.1.0┃経済産業省、105ページ
同じデータ分析の推進を目的としていても、各ロールのいずれが何人必要かによって内部人材の育成/外部人材の調達の戦略は変わってくるはずです。
DXが企業規模・産業を問わないキーワードとなってから数年たちました。なかにはガートナーのハイプサイクルにおける「幻滅期」のような状態に陥り、DX疲れを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんなとき、社外に目を向けてみることで新たな視点が得られ、行き詰まり感の解消につながるかもしれません。今回ご紹介したデータや『デジタルスキル標準』をもとに、広い視点でDX戦略を考えてみてください。
(宮田文机)
・DX人材およびデータ活用の実態を調査 日本のDXを阻むものは何なのか? 日本企業のデータ活用の平均レベルも明らかに | ウイングアーク1st
・令和3年版情報通信白書 | 総務省
・デジタルスキル標準ver.1.0 | 経済産業省
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