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生成AIによって全体の1/5以上の仕事が「代替グループ」に!? AIに代替される仕事と年収・性別の不都合な関係

         

生成AIによって仕事が奪われる。

そのような不安をぼんやりと抱いている方は少なくないでしょう。2024年4月に発行された『大和総研調査季報 2024年春季号』では、GPT-4や日本版 O-NET(職業情報提供サイト<愛称:job tag >)を用いて、実際にどのようなタスクや職業がAIによって奪われ、反対に人間の活動を楽にするのかについて分析した結果がレポートされています。

本記事で「AIによってどのような職業が代替されるのか?」「生成AIとの協働と性別・年収の関係は? 」などレポートの要点を押さえ、これからの時代に有効なキャリア戦略について考えましょう。

「全体の1/5以上」がAIによって仕事が代替されてしまうグループに──その職種一覧は?

今回の大和総研の調査では、日本版O-NETに掲載された全521の職業のデータ(そのうちタスクの分類に用いられたのは456職業)と日本標準職業分類、国勢調査の職業対応リスト、.賃金構造基本統計調査の職業対応リストを用いて、下記の3グループに仕事を分類しています。

協働グループ:生成AIを利用することで仕事の自動化やそれによる付加価値の向上が期待できるグループ

代替グループ:生成AIの普及により仕事の主な部分が代替されてしまう恐れが大きいグループ

その他グループ:協働グループにも代替グループにも当てはまらないグループ(生成AIの影響が今回の基準において有意に大きいとは言えないグループ)

早速、それぞれの割合を見てみましょう。

3つの職業グループそれぞれの就業者の割合

引用元:新 田 尭 之(2024)「 生 成 AI が 日 本 の 労 働 市 場に与える影響③-生成 AI と協働あるいは代替関係にある就業者割合は共に 20%前後-」、大和 総 研 レ ポ ー ト(2024 年 2 月 6 日 )、7ページ
ご覧の通り、代替グループには20.9%と全体の1/5以上の職業が当てはまります。代替グループの職業を自動化対象率で並べた表が以下の通り。

代替グループの職業と自動化対象率

参考:新田 尭之『生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~』(大和総研調査季報 2024 年 春季号 Vol.54)、69ページの表を筆者が再構成して作成

自動化対象率は、日本版O-NETに記述された各タスクに関する説明文をGPT-4に分類させたスコアを先行研究論文(Eloundou et al.(2023))の計算方法に従って掛け合わせることで算出されています。

実際の職業の分類にはほかに7つの指標が用いられており、表の通り自動化対象率は代替要員の一要素でしかありません。他の指標としては、「人間関係構築や柔軟な対話が求められる非定型認識(対人関係)」「専門知識や創造性が求められる非定型認識(分析)」「仕事の責任を取る生成AI苦手(責任)」「人間の身体が不可欠な)生成AI苦手(身体)」などが用いられています。

年収が「平均よりやや低い仕事」は生成AIに代替されやすい!?

今回の調査で「代替グループ」に見られた特徴として、以下の2つが報告されています。

①代替グループの職業は年収が平均よりもやや低い傾向にある
②代替グループの職業は女性の就業者が多い傾向にある

代替グループの平均年収は441.5万円協働グループの平均年収は631.6万円でした(小数点第2位以下四捨五入)。全体の平均年収は496.6万円であり、レポート中の分析では個別の職業を平均年収と自動化対象率でプロットすると平均年収よりやや下のゾーンに代替グループの職業が多く位置することが指摘されています。

協働グループに該当する職業名と平均年収の表は以下の通り。

協働グループの職業と平均年収

参考:新田 尭之『生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~』(大和総研調査季報 2024 年 春季号 Vol.54)、66ページの表を筆者が再構成して作成


ご覧の通り専門性の高い仕事や医療関連、設計や企画にかかわる職業が目立ちます。一方、代替グループには事務員・事務作業員といった記述が目立つのは前掲の表のとおりです。ただし、事務員・事務作業員から課長以上の役職を得ることで「管理的職業従事者」に分類が変化するため、昇進することで年収が上昇するとともに、必然的に職務内容が責任や企画・管理業務を伴うものになり「協働グループ」へ移行するという構造があると考えられます。そして、そこから2022年度で12.7%と管理職に占める女性の割合がまだまだ小さいことが②の一員となっていると推論できます。

①と②の2つは、生成AIの進化と普及が性別・収入による格差を拡大させるという懸念につながります。資料ではその解決策としてリカレント教育やジョブ型雇用、リスキリング、労働者保護の拡大、政府のEBPMや税制改革などが提案されています。

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AIに仕事を代替されないため、積極的に管理職を目指すという方向性も

GPT-4による職業のグループ分けには自動化対象率を含め、8つの指標が用いられていることを先に述べました。

そこでも注目したいのが生成AIが苦手とする項目として、価値判断に対する責任を取ることが挙げられているということです。すなわち、AIに代替されない働き方をするにあたって、専門性を身につけたり創造性を発揮するほかに、管理職など責任や価値判断にかかわる立場を目指すというのも有効であると考えられます。

もちろん、そのような立場は簡単に得られるものではありません。

しかし、現代は管理職になることがどちらかといえば忌避される時代です。東晶貿易株式会社が2022年6月に実施したアンケート調査にて、20代で今後役職者になりたいと考えている人の割合は22.4%でした。株式会社識学が20歳~59歳を対象に実施した同様の調査でも管理職に「なりたいと思う/条件(給与面等)によってはなりたいと思う」と回答した人は合計28.0%と大きくは変わりません。

両調査で、管理職になりたくない理由として、ワークライフバランスや仕事内容を超えて、上位に挙がっているのが「責任を取りたくない」です。そこで積極的に責任を取りに行くことは特別な知識や技能がなくとも意識の変化で可能になる一方、AIとの協働においてプラスに働きやすいことは押さえておきましょう。

終わりに

大和総研が2024年春に発表したAIと代替される職業、協働が進む職業についての分析結果をご紹介しました。レポート中でも指摘されている通り、生成AIの進歩は日進月歩であり、調査時点では代替不可能だったタスクが可能になる未来も想定されます。あくまで現時点のデータであることを踏まえて、自身のビジネスやキャリア戦略に反映させることをおすすめします。

(宮田文机)

 

参照元

・新田 尭之『生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~』(大和総研調査季報 2024 年 春季号 Vol.54)・Tyna Eloundou, Sam Manning, Pamela Mishkin, Daniel Rock『GPTs are GPTs: An Early Look at the Labor Market Impact Potential of Large Language Models』┃arxiv・新 田 尭 之(2024)「 生 成 AI が 日 本 の 労 働 市 場に与える影響③-生成 AI と協働あるいは代替関係にある就業者割合は共に 20%前後-」、大和 総 研 レ ポ ー ト(2024 年 2 月 6 日 )・駒川 智子『男女別にみる事務職の数的特徴 : 「賃金構造基本統計調査」からの分析』┃北海道大学大学院教育学研究院紀要・管理職に占める女性の割合が12.7%で前回調査からわずかに上昇 ――厚生労働省の2022年度「雇用均等基本調査」結果┃独立行政法人労働政策研修・研究機構・出世欲のない20代は77%!出世したくない理由は「責任のある仕事をしたくない」がトップでワークライフバランスを重視する若者が増加傾向に(東晶貿易株式会社)┃PRTIMES・【管理職に関する調査】出世欲がない…!? “管理職になりたくない人”7割超え!(株式会社識学)┃PRTIMES

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