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宇宙からのオープンデータを無料で提供中。 欧州の地球観測プログラム「コペルニクス(Copernicus)」の取り組みを紹介するイベントを取材

         

データ収集やデータ活用の重要性は、もはや地球上だけの話ではない。地球規模で起こっている現象、それに付随して引き起こされる問題を解決するためには、地球規模で考え、対策を練る必要がある。今や、衛星を活用した情報収集は特別なことではなく、むしろ必要不可欠なものとなっている。

欧州の地球観測プログラム「コペルニクス(Copernicus)」は都市化、食の安全性、海面上昇、極地の氷の現象、気候変動、自然災害などに対応するために衛星データを使用するサービスを提供しており、その過去20年間分の衛星データを誰でも無料で活用できるオープンデータとして公開している。現在も7機の衛星が軌道上にあり、日々テラバイト単位の膨大なデータが集められている。2018年9月18日、東京都港区の機械振興会館で開催されたコペルニクスの活動を紹介する一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構(JSS)、日欧産業協力センター主催のイベント「都市化 x 衛星ビッグデータ:EUの実例紹介」を取材した。

都市問題と衛星データ

今回のテーマは「URBANISATION(都市化)」。地球上の総人口は約76億人だといわれているが、今後も増え続けることが予測されており、2030年までに86億人、2050年に98億人、そして2100年には112億人に達するとされている。そして、2050年には世界人口の68%が都市部に集中する、と予測されている。それにより都市部にかかる負担は増え、深刻化する問題も多々ある。

これらの問題の対策として衛星データが活用されている事例について、JSSの宇宙産業本部 事業推進部 主任研究員兼コペルニクスリレーランナーのクレイドン・サム氏より、エネルギー問題、インフラ問題、大気汚染問題、里山管理の4つの事例の説明があった。

資料提供:一般財団宇宙システム開発利用推進機構(JSS)

最初に例に出されたのがエネルギー問題。

都市部の人口が1%増加すると、それに伴い必要とされるエネルギー量は1.4%増加すると算出されている。衛星データを活用すると、特定のエリアの日照時間や日照量を計算し、太陽光パネルを設置した場合の発電量の予測を行う実証実験を行なっている、というフランスの電気事業者による事例が紹介された。

資料提供:一般財団宇宙システム開発利用推進機構(JSS)

続いて、インフラ問題の例として、デンマークの水道局による事例が紹介された。

解決したい課題は2つあり、1つは地盤の不同沈下によるトラブルの解決、もう1つは水道管の破裂の予測。いずれも従来までは人間が一つ一つ確認していた作業だ。これを、SentinelのSARデータを利用して地盤の動きを確認することで、地盤が動いていることが確認された場合のみ実際に人による点検を行うことができるようになり、人件コスト削減、水道料金の低価格化が実現した。

資料提供:一般財団宇宙システム開発利用推進機構(JSS)

次に大気汚染問題。東京都市部ではさほど大きな問題とはなっていない印象もあるが、WHOの調査によると、世界のおよそ9人に1人が大気汚染に起因する病気で命を落としているという。ここでは、イギリスの大気汚染注意報サービスの事例が紹介された。ロンドンでは近年ディーゼル車が増加傾向にあり、2018年1月5日の段階で、EUが設けている2018年1年間の基準値をすでに超えてしまった、ということが背景にあり、リアルタイムで大気汚染状況を発信し、注意勧告する必要性がある、と想定されている。その解決策としてコペルニクスのAtmosphere Monitoring Service(大気監視サービス)のデータを利用し、かつおよそ3万ものセンサーデータを掛け合わせることによってこのサービスを実現させている。

資料提供:一般財団宇宙システム開発利用推進機構(JSS)

続いて、都市化の裏の問題と言われている里山管理。都市部に人が集中することにより、過疎地が生み出される。これにより、過疎地周辺の里山の管理が手薄になってしまい、土砂崩れや水害が引き起こされるケースもある。しかし、人が山の状況を確認しに行くのは人的コストがかかるため現実問題として困難だ。これを衛星データと地上データを組み合わせることで、現場に行かずとも竹林の分布を把握することが可能となる。

提供:Copernicus Sentinel data (2015-16) / ESA SEOM INSARAP study / PPO.labs / Norut / NGU

また、番外編として、サンフランシスコにある高層ビルミレニアムタワーが毎年5センチ沈下していることが、衛星からのSARデータによって確認できた、という事例が紹介された。

広範囲のデータを常に記録することができることが衛星データの利点だ、とクレイドン氏は締めくくった。

ますます身近になる宇宙

オープンデータとして提供されているデータは活用が難しい、というのが全ての業界で共通した課題であり、コペルニクスが提供しているデータも例外ではない。しかし、いわばデータと刃物は使いようであり、使う人のアイデアに大きく依存する。実際、コペルニクスのデータは、2012年に起きたコスタ・コンコルディア号の座礁事故の際に、環境被害を最小に抑えるため、燃料流出の予想範囲を計算したデータをイタリア当局に提供したり、2013年のヨーロッパ中部で2013年に起きた洪水の際には、洪水の氾濫状況を被災現場に伝える地図データを作成するのに活用された。コペルニクスプロジェクトは2030年まで継続されることがすでに決定しており、それ以後の活動についても検討が始まっている。

おりしもこの日は、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイの創業者兼代表取締役社長の前澤友作氏が民間人として世界初となる月周回旅行を契約したことが報じられた日であり、宇宙がかつてないほど身近になりつつあることが感じられた。

コペルニクスについてより詳しく知りたい方はこちらのサイトの記事も合わせてチェックして欲しい。

衛星データの活用を促進する一般財団宇宙システム開発利用推進機構(JSS)の活動を今後もデータのじかんでは取り上げていく予定だ。10月31日には「インバウンド(訪日外国人観光)」をテーマにしたトークセッションが開催され、12月19日には「食」をテーマにした衛星データの活用事例を紹介するコペルニクスインフォセッションが開催される。衛星データ、オープンデータ活用、宇宙、インバウンドなどのキーワードに興味がある方は足を運んでみてはどうだろうか。

(データのじかん編集部)

 
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