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「ゲーミフィケーション(Gamification)」とは「本来ゲームではない活動に、ゲームの要素や仕組みを取り入れて、人々のやる気や行動を引き出す手法」です。
たとえば、勉強やダイエット、仕事のタスク管理など──「できればやりたくない」「続かない」そんな行動を、思わず“やりたくなるもの”へと変えてしまうのが、ゲーミフィケーションの力です。
たとえば、こんな経験はありませんか?
・語学アプリで連続学習日数がカウントされ、「あと1日で7日連続!すごい!」と通知が来たので、なんとなく開いてしまった
・健康アプリで1万歩を達成したらバッジが表示されて、少しうれしくなった
・ポイントカードで「あと○回でゴールド会員」と言われて、つい買い物してしまった
これらすべて、実はゲーミフィケーションの事例です。達成感・報酬・レベルアップ・ランキングなど、ゲームでおなじみの要素を活用することで、行動を楽しく、そして継続しやすくしているのです。『知能と情報 2013 年 25 巻 3 号』の用語解説で「ゲーミフィケーションに必要な要素」として挙げられているのが以下の10要素。
(1)明瞭な目標
(2)直接的なフィードバック
(3)課題が達成できる見通し
(4)レベルアップ、レベルデザイン
(5)スコア(ポイント)やランキング
(6)バッジや実績
(7)競争
(8)協力
(9)ストーリー
(10)視覚化
また、日本ゲーミフィケーション協会は、そのホームページにおいてゲーミフィケーション6要素として以下を掲げています。
1.能動的な参加:やめるタイミングや難易度などを自分で選べる。また、物語や構造、キャラクターが人を引き込むように設計されている
2.賞賛を演出:クリアすると目に見える形で称えられる
3.即時のフィードバック設計:プレイヤーの働きかけに即座に結果が提示される
4.独自性の歓迎:クリア方法や装備、攻略過程などを独自にカスタマイズできる
5.成長の可視化:成長の結果が数値や装飾などで可視化される
6.達成可能な目標設定:段階的に進めることで必ず目標を達成できる
確かに多くのゲームが上記の要素を満たすように設計されており、だからこそ我々は一見面倒くさいと思われることにも能動的に取り組めるのだと気づかされます。
それでは、具体的にどのように社会にゲーミフィケーションが実装されているのでしょうか?
5つのユニークな事例を見ていきましょう。

国内で深刻化するインフラ老朽化の課題に対し、位置情報ゲーム×ポイントによるインセンティブ設計が応用された事例です。このゲームでは、マンホール・電柱といった社会インフラを撮影し、投稿・レビューを行うことでポイントを獲得することができます。ポイントはアプリ内で相棒となる犬の育成に用いることができ、さらに運営元のNPO 団体Whole Earth Foundation(WEF)が発行する暗号資産「Whole Earth Coin(WEC)」に交換することも可能です。
また、『ドラゴンクエストウォーク』『ポケモンGO』など位置情報ゲームも数多くリリースされており、高い人気を誇っています。こうした位置的に離れた大勢の人が「明瞭な目標」を持って「能動的な参加」ができるゲームは、物理的な距離という困難を解決し大きな成果を得られることが期待されるため、他の社会課題に対する応用可能性にも注目したい事例です。
公式サイト:https://tekkon.com/
「2人で一緒にボタンを押すと、飲み物がタダに?」──そんなゲーム要素を取り入れることで、オフィスのコミュニケーション促進に貢献するのが、サントリービバレッジソリューションが法人向けに提供するサービス『社長のおごり自販機』。社員証や専用カードを2人同時にタッチし、10秒以内にボタンを押すと、飲料が無料で2本排出される自動販売機です。
この取り組みは、ゲーミフィケーションの中でも「明瞭な目標」「即時のフィードバック設計」「協力」といった要素が巧みに設計されており、「話しかけるきっかけがない」「社内交流のきっかけが欲しい」といった課題に対して、仕組みで“雑談の場”を演出することに成功した好例といえるでしょう。さらに、専用ダッシュボードによって利用実績が可視化されるため、施策の効果測定や社内報告にも役立てられる点も評価されています。
公式サイト:https://www.suntory.co.jp/softdrink/jihanki/ogori/
リズムゲーム×英語学習──。まさにゲーム特有の体験で楽しく継続して学べる環境を実現するのが、ベネッセとSEGA XDが共同開発した英語学習アプリ『Risdom(リズダム)』です。Eiken®(英検)5級〜1級、TOEIC 600〜900点レベルまでの学習範囲をカバー。「リズムゲームパート」と「英語学習パート」が交互に展開され、英単語や文法に触れながらテンポよくゲームを進められる構成が一番の特徴と言えるでしょう。
社会人でも継続して学習することや新たなスキルを身に着けるリスキリングが重要とされる時代です。英語、プログラミング、各種資格、マネーリテラシーなどさまざまなスキルを学びたいという需要は今高まっており、それにゲーミフィケーションで応えるサービスは数多くリリースされています。共通するのが「明瞭な目標」「課題が達成できる見通し」「レベルアップ、レベルデザイン」「賞賛を演出」……など、ゲーミフィケーションの数々の要素。もはや何かの学習でゲーミフィケーションを使うのは当たり前、という時代となりつつあるのではないでしょうか。
公式サイト:https://risdom.benesse.co.jp/
コロナ禍を経てすっかり世間に定着したデリバリープラットフォームの『UberEats』も配達員の確保やサービスの向上にゲーミフィケーションをうまく取り入れたサービスといえるでしょう。配達パートナーには四半期ごとの実績と品質に基づいて「グリーン」「ゴールド」「プラチナ」「ダイヤモンド」の4段階でランク付けが行われ、ランクに応じてレストランでの割引やオンラインでの優先サポートといった得点が与えられます。
さらに配達完了件数や悪天候、注文件数の増加といった条件に応じて追加報酬が与えられる「クエスト」のように、よりはっきりとゲーム的な仕組みも導入されている同サービス。「明瞭な目標」「直接的なフィードバック」「レベルアップ、レベルデザイン」「成長の可視化」などの仕組みがふんだんに取り入れられているからこそ、世界的なサービスにまで成長したと考えられます。
「面倒くさい」といえば──仕事や勉強だけではありません。たとえば、毎日の掃除や洗濯、ゴミ捨て、皿洗いなど家事は、面倒くさく、また仕事のように役割の分担がはっきりしていないことも多いためもめ事につながることも多いタスクではないでしょうか。『Playful Habits』は、一人一体の「アバター」と共有する「エリア」で‟「面倒くさい」の習慣化”を実現することを狙ったグループ向け習慣化アプリです。
元々CEOである清水氏が「子どもにいい習慣を身につけさせたいあまり口うるさい親になってしまった」という経験から生まれたという同アプリ。自ら設定した週間に継続して取り組むことでアバターの進化やエリアの発展といった目に見える変化が表れるのが、その特徴です。「協力」「視覚化」「能動的な参加」「成長の可視化」などゲーミフィケーションの諸要素が多数盛り込まれており、家庭、職場、趣味などさまざまな場面での活用が期待されます。
公式サイト:https://sites.google.com/playlife-studio.com/playfulhabits/playful-habits-top?authuser=0

ゲーミフィケーションの要素と実際の事例についてご紹介いたしました。本記事で取り上げている『TEKKON』『社長のおごり自販機』『Risdom』『Playful Habits』などの事例は、日本ゲーミフィケーション協会が選定する「勝手にゲーミフィケーション大賞」でもノミネートあるいは受賞経験があり、同賞の歴代ノミネート事例を見てもわかる通りほかにもさまざまなゲーミフィケーションが社会やビジネスに実装され、活用されています。
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(宮田文机)
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