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日本最高峰の玉露『八女伝統本玉露』にIoTを導入! グローバル展開を視野に入れた、具体的施策と効果とは?

         

福岡の都市の進化が目覚ましい。アジア圏に近い立地、賃料などの固定費や生活コストの安さ、食のクオリティなどQOLの高さが数年前より注目されている。産学官連携プラットフォームの活動も活発で、IoT関連のハードウェア/ソフトウェア技術が集積する福岡県はテクノロジー都市として地方のなかでも台頭しはじめている。

しかし、一方で影の部分もある。九州全体の生産性は全国比で0.61倍と低く、農林水産業のみが全国水準以上の1.09倍で、それ以外は大幅に下回っている状況だ。

九州経済調査協会「九州経済白書」

参考資料:九州経済調査協会「九州経済白書」より引用

九州で抱える生産力の弱さ問題。これを逆に伸びしろと捉え、福岡県では地元発のテクノロジーでIoT社会を実現し各産業の底上げや生産性の向上につなげようと、庁内で総力をあげて県内企業による新たなIoT関連製品・サービスの創出に向けた取り組みを進めている。

県では「福岡県IoT推進ラボ」を新設。継続的にテクノロジーで地域課題に向き合う部門を創設した。以降、オール県庁で部門を超えて地域課題を掘り起こす「福岡県IoTプロジェクト推進会議」を実施。この会議では警察本部や教育委員会も巻き込み地域の問題点を探った。さらにはIoT導入の意向を持つ現場に直接ITベンダーを連れて行き、マッチングを行う「現場ニーズ把握会」を開催するなど、全国的にも珍しい取組みを行っている。

実績も着実に出ているようで、福岡県が誇るブランドいちご「あまおう」の栽培支援システム、飲酒運転防止システム、農業やものづくり、医療・福祉など、様々な分野で次々にプロジェクトを創出し、製品化事例もリアルに生まれているようだ。

そして新たに取り組みがスタートしているのが、福岡の代表的産業である『八女茶』だ。

八女は、古くからお茶の名産地として知られている。特に玉露は、国内最大級の産地として5年連続で農林水産大臣賞、18年連続で産地賞を授章するなど、まさしく日本最高峰の玉露産地として不動の地位を得ている。しかし現状では、生産にあたりいくつか課題もあるようで、今回その対策としてIoTの導入を決めたという。課題とは、一体どういうものなのだろうか。また実際にIoTを導入して八女の茶がどのように変化しているのだろうか。その実態に迫った。

八女のなかでもとりわけ美味しいとされる『八女伝統本玉露』の専用ページ
インスタグラムやNYでのエキシビションなど積極的にPR活動をおこなっている。

匠の技を可視化することで、事業生産性を高める

「八女の玉露は“とろみ”があり、“かおり”も柔らかい。凝縮された旨味を全て持ったお茶です」
と語る角重分場長。

ーまずはじめに、IoTの導入時期と設置箇所を教えてください。

「平成30年度に福岡県の重点事業として株式会社システムフォレストと共同して進めてきました。実際にIoT機器が入ってきたのは平成31年1月から2月にかけて。そして試行期間を経て4月からこの八女分場(2箇所)と八女市星野村の6園地に設置してデータ収集を開始しています」

ー1年かかっていないんですね。なぜ、いち早くIoTを導入しようと決めたのでしょうか?

「八女は静岡や鹿児島と比べて全体の栽培面積が少なく、県全体の茶園面積は1550ha、昨年の収穫量は1960tと、全国で5、6位の水準です。日本茶の約8割が生産面積の大きな静岡や鹿児島で占められるため、量では勝負ができない。だとしたら質で勝負するしかないと、高級化に狙いを定め、お茶の品質を向上するための施策を考えたのがきっかけです。

幸い、八女は1200年代から受け継がれる、歴史あるお茶の産地です。特に玉露に関しては100年以上続く伝統的な職人技があり、トップブランドを走っています。さらに我々はそのなかでも味の品質によってブランド価値を高めようと、近年、伝統的な技法や手摘みにこだわって作られた玉露を『八女伝統本玉露』と称し、高級茶への道筋を作りました。

ーどれくらいの価格で販売されているのでしょうか?

平均取引価格は12,000円/kg。普通の煎茶だと3,300円〜3,500円なので、約4倍の違いがあります。さらに八女伝統本玉露の中でも更にトップクラスの味わいをもつ茶葉として農林水産省から認められた「GI認証 (地理的認証制度)つきの玉露」というのもあります。GI認証は、伝統的な方法で地元の特産品を作ったものに与えられる称号ですが、平成27年に八女茶が日本茶で初めて獲得しました。こちらは高品質維持のために内部規定で13,000円/kg以上としています。味は煎茶と比べても15倍の人件費をかけるだけあり、非常に美味しい味わいとなっており、海外でも日本茶ブームとともに高い評価を得ています。

しかし、これらは大変な希少品です。平成29年の各種統計資料によると県内の生産量1,960tのうち、玉露は34t(全体の3〜4%) 、更に八女伝統本玉露になれば8〜9t(1%)、GI認証八女伝統本玉露は2〜3t(0.3%)となっています。ブランドとして成り立っていても、国内外からニーズがあっても、ロットが足りていない状況なので、確立するためには八女伝統本玉露の生産高、そして茶園の違いによる価格差のバラツキを抑え、どの茶園でも高単価な茶葉が生産できるようにしていく必要がある。そこにIoTを導入する意味があるのではと推測しました。今まで口伝で受け継がれていたお茶職人の匠の技を、データによって可視化し、八女茶全体の技術向上を図って行ければ、と考えています」


玉露は春に伸びた新芽の部分をひとつひとつ手摘みする。


カメラで茶葉の生育状況も撮影。昼と夜の二回撮影して変化の様子をチェックする。

 
 

 
データ化で見えた、教本には載っていない栽培方法

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