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社会人になったばかりの新人が初めて聞くビジネス用語のひとつに「帳票」があります。「何やら重要な書類らしいけど、帳票とは何のことだろう」「経理に関係している感じだが、自分は営業なので関係ない」など、帳票に対する理解がいまひとつという方も多いようです。なぜ企業に帳票が必要なのか、その理由を考えていきます。

実はレシートも帳票の一部

レシートと家計簿と経営管理」というコラムで、レシートデータをもとにした家計管理と、企業の経営管理は本質的に似ているというお話がありました。どちらもその根底には、「いつ誰が、何をいくらで購入したか」を記録することで、家庭・企業という組織のお金の流れを明らかにしたいという目的があります。

お父さんが会社の帰りに立ち寄った夕食の買い物も、その代金は家計費から立替費用として出してもらわなくてはなりません。次回からは、買い物前に費用の仮払いを請求することもあるでしょう。家庭ではわざわざ出金伝票などを書く必要はないでしょうが、企業では入出金の管理はもう少し厳格にルール作りがなされているはずです。そうしたルールに基づく書類を、ビジネスでは「帳票」と呼んでいます。

帳票には様々な種類がある

帳票というと、面倒な書類や法定調書を連想する方も多いでしょう。「帳票とは何か?」という質問がありますが、会社や社会のルールに基づいてモノやお金、人を動かすための書類はすべて帳票と捉えておけば間違いありません。

証憑として法的に価値がある総勘定元帳などの帳簿を始め、出張時の仮払伝票や、倉庫からの出荷指示書、有給休暇の申請書もすべて帳票です。コンビニやスーパーで受け取るレシートも、企業から見れば帳票の一種です。

一般のお客さんから見ればお店のビジネス活動はレシートという形になりますが、内部では、注文書や納品書、請求書、出荷伝票、出金伝票などさまざまな書類を通じてビジネス活動を展開しています。このように、レシートを含め物品やお金を動かすための指示書であり、時には証憑になる書類のことを帳票と呼ぶのです。

帳票の起源は江戸時代?

帳票の起源は諸説あります。
会計の観点からいえば、江戸時代の商人が付けていた大福帳も帳票の一種であり、帳票の起源かもしれません。大福帳は、「売掛金の内容を隈無く記し取引相手ごとに口座を設け、売上帳から商品の価格や数量を転記し取引状況を明らかにした帳簿」であり、いまの売掛金元帳と顧客名簿に相当すると考えられています。

顧客名簿、いまの顧客管理システム(CRM)の起源をたどれば、富山の薬売りが使っていた「懸場帳(かけばちょう)」が有名です。富山の薬売りは、顧客の家に薬箱(救急箱)を設置し、数カ月〜半年ごとに各家庭を巡回して減っている薬を補充し、使った分だけの代金を請求していました。この管理のために使っていたのが懸場帳です。

懸場とは、自分が担当する巡回地域を指します。懸場帳には顧客の世帯構成や薬の購入(使用)流歴、売掛情報や集金情報が記録されており、まさに「これがなければビジネスは成り立たない」という基幹帳簿でした。実際、懸場帳は薬売りの財産として代々継承され、継承されない場合は高値で売買取引がなされていたとの記録が残っています。

一方、伝票の起源ははっきりわかっていません。江戸期の大きな商家や明治以降の株式会社など、人が増えて組織化される中で、モノやお金や人の動きを管理するために伝票が誕生したと考えられています。

帳票は何のためにあるか

帳票は、ビジネスの記録であり、人・モノ・お金の動きを記した書類であり、企業内の情報伝達手段です。

昨今はインターネットが普及し、請求書の起票・送付や仮払い請求、有給休暇請求などの帳票はデジタルのワークフローで回るようになり、情報伝達がよりスムーズになりました。帳簿類もすべて基幹システム内でデータベース化され、多くの企業では紙で印刷した帳簿や伝票が少なくなっているでしょう。

ですが、帳票の存在価値は紙の印刷物にあるわけではありません。繰り返し述べているように、帳票を語る上で最も大切なことは、それが「記録」され、時には「証憑」になるということです。たとえば有給休暇の申請書も、他人から見たら意味のない書類かもしれませんが、その企業の給与計算や人事考課にとっては意味のある書類で、必ず記録する必要があります。

記録をすることで、私たちはビジネスの推移や状況が把握できるようになります。記録をもとに、過去の失敗や成功を参考にしながら次の戦略を考えることができるし、新たなビジネスの芽をつかむことができるかもしれません。また、何か不備や不具合があった際、帳票が記録されていればしかるべき対応が取れるし、場合によっては不備や不具合の原因究明に役立つ可能性があります。

普段の買い物では「たかがレシート」という感覚かもしれませんが、そのレシートや帳票類が企業にもたらす価値は、これほど多大なのです。今度からレシートを受け取ったら、「これもこのコンビニの帳票のひとつなんだな」と思うと、帳票に対する考え方や活用の仕方が変わるかもしれません。