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第4回 BIツールを導入した後にあらわれる課題はこう乗り越える! BIツールユーザーによる、BIツールユーザーのための、BIツールのトリセツ

世の中にBIツールは数多く存在します。ですが、インターネットで検索して、BIツールを比較した記事を見ても、今ひとつイメージがわかない。そんな経験をもつ人も多いと思います。そんな人のために、BIツール研究所のメンバーが、合計8本のBIツールについてのトリセツを作成。前半4本ではBIツールを探すポイントや導入時の注意点、そして導入後に実施しなければならないことを解説、後半4本はよりテクニカルな内容で、データ利活用の推進のポイントを解説していきます。

         

BI(Business Intelligence)ツールを無事に導入できた! ひとまずは運用が軌道にのってホッとした」
「BIツールの運用を始めてみたけど、新たな課題が見つかった!」

前の記事をご覧になり、BIツールの導入プロジェクトを終えることはできましたでしょうか。

現場の人にBIツールの使い方に慣れていただいたら、これからは皆様がデータに基づいた意思決定をどんどんと推進することになります。

しかし、そのまますんなりと進むでしょうか? BIツール利用者が自発的に自分たちに必要なレポートを作成したり、新しいデータソースを投入していったり――。理想的なのはそのような流れですが、私の経験では、そこまでスムーズにBIツールを活用できた例は極めてまれです。

本記事ではBIツール導入後の「壁」について、どう乗り越えていけばよいかを解説していきます。

BIツールを導入してからが本当のスタート

想像してみてください。数ヶ月、規模によっては1年くらいかけて、無事にBIツールの導入を終えました。肩の荷も下りて、「ホッと一息」という状態です。

ホッと一息つく理由が私にはよくわかります。会社ではプロジェクト終了の節目として「BIツールの導入完了」を位置づけることが多いのです。しかも、プロジェクト終了のタイミングを「年末まで」や「今期中」とすることも多いので、プロジェクトが終了すると、時期的にも心機一転して新しい業務へと気持ちが移りがちです。

しかし、ちょっとお待ちください。そもそもBIツールを導入した理由は何だったでしょうか? 何がしたくてBIツールを導入したのでしょうか? 導入を終えたところで、いま一度、本来の目的を振り返る必要があるのです。

そうです。BIツールの導入はゴールではありません。「BIツールを導入してから」が本当のスタートです。

以前の記事(1.BIツールとはどのようなものか〜分類の紹介〜のURL)では、BIツールの導入のために、自社内で誰がどのようなことをやりたいのかという目的を明確にして、その手段としてBIツールを選定・導入するべきとお伝えしました。

導入したBIツールを基に「どうやってデータを利活用していくのか」というプロセスを達成して、初めて目的が達成されるのです。

「データの利活用プロジェクト」を立ち上げよう

もし、BIツールの導入まででプロジェクトが終了してしまった場合、ぜひとも「データの利活用プロジェクト」を立ち上げてみてください。

「データの利活用プロジェクト」とは、BIツール導入後に、自社が定めた目的に沿って、どのようにデータと向き合っていくかを検討・推進するプロジェクトです。具体的には3方向の進め方があります。

  • ・レポート拡張プロジェクト
  • ・ユーザー拡張プロジェクト
  • ・データソース拡張プロジェクト

これらの拡張プロジェクトを推進していくと、社内でのデータの利活用をさらに進めることができます。それぞれについて解説します。

レポート拡張プロジェクトとは

BIツール導入の際には、どのようにデータを表現するかをユーザーにヒアリングし、レポートやダッシュボードを作成していきます。そのレポートの毎月の閲覧数を把握しているでしょうか?

閲覧数はあくまで指標の1つに過ぎません。ですが、せっかく作ったのに見ている人は少ないなんてことはよくあります。見ている人が少ない理由は何でしょうか。もっとたくさんの人に見てもらえるようなレポートを作るにはどうしたらよいでしょうか。

これらを分析、検討して既存のレポートの改修や新規レポートの作成をすることがレポート拡張プロジェクトの進め方です。BIツールを導入した段階のユーザーに対して、さらに拡張していくプロジェクトなので、次に紹介する2つに比べて進めやすいことが特徴です。

例えば本プロジェクトのユーザーの対象が1つの部門だった場合、この部門での成功が例となり、次のユーザー拡張プロジェクトにつなげることができます。

ユーザー拡張プロジェクトとは

BIツール導入プロジェクトやレポート拡張プロジェクトで、1つの部門に対して十分な成果が果たせたら、別の部門に横展開し、さらに利用者を増やしていきましょう。このプロジェクトが、ユーザー拡張プロジェクトです。

すでにBIツールの基盤は完成しているので、ポイントを抑えれば、効率的に別部門に導入をすることが可能です。

さて、ここでひとつ考慮しておきたいポイントがあります。それは所属部門によって、BIツール導入の目的が変わってくることです。

あなたが現場の部門に所属されていて、「自分の現場で効率的にデータ活用をしたい」という思想でBIツールの導入をしたのであれば、別部門への横展開は目的にかなっていないかもしれません。その場合は自部門の他ユーザーへの拡張をして、次はデータソース拡張プロジェクトに進みましょう。

一方で、あなたが情報システム部門(情シス)や、部門を超えたデータ分析のタスクフォースに入っている場合はどうでしょうか。BIツールの利用ユーザーを拡張することは、目的の達成のために必要な手段となるでしょう。

BIツール導入の要件定義でヒアリングしたように、別部門でもヒアリングが必要です。その際に最初の部門では「どのようなヒアリングをして、現在どのように活用しているか」を事例として話すと、円滑にプロジェクトを進めることができます。

データソース拡張プロジェクトとは

データソース拡張プロジェクトはレポート拡張プロジェクトやユーザー拡張プロジェクトと補完し合う関係になります。つまりレポートやユーザーを拡張する話のなかで、データソース拡張の必要性が出てきたり、データソースを拡張することで、レポートやユーザーが拡張できたりするという関係です。

例えば、今までは基幹システムのデータのみをBIツールで扱っていたのであれば、SFA(営業支援システム)や会計のデータも取り扱うことで、分析するべきデータの対象を増やすことができます。またSFAデータ→販売管理データ→会計データのように、横串をさすようにデータを可視化することによって、新しい知見を見いだすことも可能となります。

データソース拡張プロジェクトは、ターゲットとしているデータベースやクラウドアプリから、データが抽出できることの検証から始まります。接続検証に時間がかかることも想定されますので、今後データ分析に使用しそうなデータソースについては早めに検証しておく必要があります。

データの利活用プロジェクトのポイント

続いて、データ利活用プロジェクトを実施するにあたって押さえておきたいポイントについて整理します。プロジェクトを推進するにあたり、どの部分に気をつけていくべきかを述べたいと思います。ここではレポート作成の方針と、情シスと現場ユーザーの役割分担について解説します。

レポートの運用の利便性と汎用性はトレードオフ

ユーザーにヒアリングをして、ユーザーが普段使用しているレポートをBIツールで再現したとします。そうするとそのユーザーはそのレポートを使用してくれますが、他のユーザーは同部門の人でも使わないでしょう。他のユーザーのために他のレポートを作ると、今度はレポートの数が膨大になってしまいます。

では、レポートの数を抑えながらも、さまざまなユーザーにヒアリングをして、1つのレポートにたくさんの人に見てもらえるように、汎用的なレポートを用意したとします。そうすると、各ユーザーがそれぞれの見たいレポートにたどり着くまでの操作が複雑になってしまい、こちらのレポートも利用者数が増えないでしょう。

このようにレポートの運用の利便性と汎用性はトレードオフの関係にあります。どのくらいのバランスがよいかは、各社の状況によって分かれてしまいます。こうした側面からも、レポート拡張プロジェクトでのレポート閲覧数の分析はとても大きなポイントです。

データの利活用の方法には完成形がありません。常にブラッシュアップしていく姿勢が重要です。

現場と情シスのそれぞれの役割を意識する

10数年前の日本のBIツールの導入の仕方は、情シスが現場にヒアリングし、情シスでデータを集め、情シスでレポートを作成するという流れでした。1つの部門で完結しているのでレポートの精度が高くなりやすく、BIツール導入の初期には向いています。

しかし、データの利活用の段階に入ると、この手法では限界がきてしまいます。レポートの改修や新部門に対してのヒアリングの段階で手が回らなくなるのです。また現場も新規レポートの作成を情シスに依頼することになり、データ利活用にスピードが伴いません。

このような事態を解消するためにも、各部門の役割を明確に定めるべきと私は考えています。特に「レポート作成をどの部門が行うか」を定めておくべきです。

さまざまな部門でレポートを作る場合は、現場の部門の中でデータ集計をよく依頼される人やITリテラシーの高い人、その部門で求められるデータ分析を把握している人に、データ利活用プロジェクトのメンバー(パワーユーザー)になってもらいます。そして、それぞれの現場にいるパワーユーザーがレポートを作成するように位置づけ、レポート作成技術を習得してもらいます。パワーユーザーが現場の窓口となり、レポートの作成や改修も担当してもらうことが重要です。

情シスは各現場の取り扱うデータのガバナンスを注視します。新しいデータソースからのデータを手配したり、共通のマスタを整備したり、各部門で扱うオリジナルマスタの運用について協議したりするなど、データソースを整備する役目を徹底するのです。このような体制が築ければ、レポート・ユーザーの拡張もスムーズに行うことが可能です。

以上が、BIツール導入後にデータの利活用を柔軟に行うコツです。所属部門を超えて進めるプロジェクトなので、それぞれのメンバーの思いが少しずつ違ってくるはずです。その違いを理解し、互いに補助しあえる体制が築ければ、データ利活用プロジェクトはうまくいくでしょう。

BIツールのアハ体験!④レポートを活用してもらえると……

朝、PCを開いたとき、もしくは月末などに決まったタイミングでレポートを開き、作業を行う――。皆さんがルーティンワークをおこなうときに使うそのレポート、実は私が作ったんです。

皆さんが意識せずにレポートを活用してくれる様子を遠くから眺めつつ、ニヤニヤするのが、BIツールエンジニアとしての私の楽しみです。みんなの「当たり前」になるレポートができたときに感じる喜びでもあります。

この記事を書いた方

りょうさん

りょうさん
フリーランスのBIエンジニア。新卒から8年間はITベンダーでBIのシステムエンジニアを経験し、その後BIメーカーでセールスエンジニアとカスタマーサクセスを学ぶ。2020年3月にフリーランスに。現在はデータ分析に関するコンテンツマーケティングやデータエンジニアリングを行うかたわらで、町中華のデータ分析基盤の構築に着手。町中華のすべてのデータを可視化することが目標。
ホームページ:https://data-parade.com
Twitter:https://twitter.com/RyosanBIMania

 
 
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