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4月、桜が舞い散る中で新しい学年に進学する、という情景は、日本に住む多くの人にとって「当たり前」のものです。

しかし、この「当たり前」が今後変わる可能性があります。2020年のコロナ禍を受けて多くの学校で、カリキュラムの進行が大幅に遅れ、9月入学・進学が現実的な選択肢として検討されているのです。

もしも9月入学を実践された場合、一体どのようなメリットやデメリットが期待できるのでしょうか?

今回は日本と入学時期についてさまざまな視点でご紹介していきます。

4月入学の国は少数派!世界主要国の入学時期は?

世界的には9月入学が主要な入学時期とされていますがその実情はどのようなものなのでしょうか?

そこで、主要7カ国と新興国で構成されるG20参加国における入学時期を見ていきます。

国名

主要な入学時期

日本

4月

韓国

3月

中国

9月

インドネシア

9月

インド

4月

サウジアラビア

9月

フランス

9月

ドイツ

9月

イタリア

9月

イギリス

9月

カナダ

9月

メキシコ

10月

アメリカ

9月

アルゼンチン

3月

ブラジル

2月

ロシア

9月

トルコ

9月

南アフリカ

1月(高等教育は2月)

オーストラリア

2月

出典:世界の学校体系(ウェブサイト版)|文部科学省

出典:世界の学校体系(ウェブサイト版)|文部科学省

欧州連合(EU)を除く19カ国について入学時期を調査した結果、60%以上の国が、9月入学を採用しており、その他の地域は1月から4月にかけて入学時期がまばらに分布しています。

なお、4月入学を採用しているのは日本とインドでした。一方欧州や北米地域では9月入学が主流になっています。

日本はもともと秋期入学が主流だった?4月入学の理由とは?

今では4月入学が当たり前になっている日本ですが、江戸時代に寺子屋や私塾のような学び舎ができた頃は、入学時期等は決まっておらず、好きなときに入学することができました。

明治時代に入ると、西洋の文化が一気に流入してきて、それに追従するように大学の前身となる官立学校が秋入学を採用するようになりました。しかし、秋入学といっても、入学月は学校ごとにバラバラだったそうです。その傾向が大きく変わったきっかけは、現在の筑波大学の前身である高等師範学校が4月入学を採用したことでした。

この4月入学は政府が4月から3月までを一区切りとする「年度」を導入したのに合わせたものといわれています。こうした年度の設定については、諸説がありますが、有力な説として当時、政府の主要な税金収入源だった米の収穫時期に合わせた、というのがあります。米を換金し、収支を把握、さらに、予算編成をするということを考慮し、時期を逆算すると4月頃が都合が良かったということです。

また、当時勢力を拡大しつつあったイギリスの会計時期とも一致していた、ということも判断理由となったそうです。

秋入学については度々議論されてきた!その背景とは?

コロナ禍以前にも、東京大学をはじめ、複数の大学で秋季入学を現実的に検討する動きが広がり、高等教育における9月入学の可能性については議論されていました。

背景には、日本の高等教育を国際化するべく、欧米諸国と足並みをそろえたい、という意向が強くありました。

そうした中で、秋季入学の様々なメリットやデメリットがあげられています。

立場別、9月入学のメリット、デメリットをご紹介

大学の秋季入学には、国際基準に合わせる、ということはもちろん、春から初夏にかけて入学試験を行うことで、インフルエンザの流行や積雪などを回避できると言うようなメリットも挙げられます。

一方で、高校卒業からのギャップや就職活動など既存の社会システムとの折衷が難しいと言うデメリットもあります。

秋季入学についての議論が繰り返される中、2004年に、様々な大学の学長、企業経営者、さらに高等学校の校長を対象とした「大学の秋季入学に関する調査研究」が文部科学省主導で行われました。ここでは立場別に秋季入学のメリット・デメリットの上位の回答を紹介します。

メリット


大学長

  • 海外の大学との連携が容易になる(56.7%)
  • 入試をさらに多様化でき、広範に学生を集められる(39.6%)
  • 留学生の増加が期待できる(38.0%)

企業経営者

  • メリットは特にない(55.3%)
  • 国際的な人材を集めやすくなる(26.2%)
  • 採用活動が合理化できる(17.5%)

高等学校長

  • ゆとりあるカリキュラム編成で3年生の3学期まで指導が可能(82.7%)
  • 十分な受験準備が可能になり、大学への進学実績の向上が期待できる(38.3%)
  • 就職や専門学校後進学希望者と進路指導時期がずれるのでゆとりができる(26.5%)

出典:大学の秋季入学に関する調査研究

それぞれの立場別に海外を見てみると、各大学では、海外との連携の容易さや、より様々な立場の学生を集められるといった国際化を主軸とした回答が目立ちました。

また、高等学校長の回答では、ギャップイヤーを進学の準備期間としてのゆとりとして肯定的にとらえたものが多い印象でした。

一方、企業経営者の立場で見ると、「メリットは特にない」と全体の約60%の企業が回答しており、まだまだ、課題が多いように感じられます。

デメリット


大学長

  • 就職活動にどのような影響があるか不透明である(59.4%)
  • 会計年度と各年度のズレが不合理である(58.1%)
  • 入学前のほぼ半年間の活動プログラムの提供のため新たな負担が増えて(49.0%)

企業経営者

  • 既存の人事体系給与体系との調整が困難になる(42.7%)
  • 事業年度とのズレが不合理(38.8%)
  • 高卒者の採用を従来通り4月とのズレが不合理(25.2%)
  • デメリットは特にない(25.2%)

高等学校長

  • 卒業後も大学進学希望者の進路相談を受けなければならない(69.3%)
  • 卒業後も大学進学希望者の学習指導の面倒を見なければならない(53.6%)
  • 高校により十分な受験準備が可能になり進学実績において高校間格差が拡大する(28.1%)
  • 就職や専門学校進学希望者と指導時期がずれるのでスケジュールが合わなくなり指導しにくくなる(28.1%)

出典:大学の秋季入学に関する調査研究

デメリットについては、どの立場においても既存のシステムとの調整の難しさが課題として挙げられています。また、ギャップ期間に大学や高校における負担が増えるのではないかと言う懸念も強く、きちんとしたシステム作りが重要になると考えられます。

一方ここまで挙げたメリットやデメリットは十分に準備期間を持った上で大学を対象に検討されてきたものです。今回のコロナ禍では、義務教育を含め抜本的な秋季入学が検討されています。

急を要するからこそ、変革を実践するチャンスと捉え、秋季入学にシフトし、国際化に乗り出すのか、はたまた、既存のシステムの中で打開策を考えるのか、答えはまだわかりませんが、日本の教育に大きな進歩が生まれることを期待していきたいですね。

(追伸:6月1日現在、来年度の9月入学を断念したというニュースが入ってきました。しかし、新型コロナウイルスの影響を受け、9月入学についての議論が活性化したことは事実です。今後、どうなるのかデータのじかんでは引き続き注目していきたいと思います。)

【参考引用サイト】
・ 世界の多くの国々では9月入学が主流!4月に入学する国は少数派 
・ 9月入学関連資料|官邸 
・ 大学の秋入学に関する主な課題・論点|官邸 
・ 世界の学校体系(ウェブサイト版):文部科学省 

(大藤ヨシヲ)

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