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 8年連続ビール系飲料シェアNo.1と快進撃続けるアサヒビール。2018年のスローガンとして「イノベーションの推進による新たな価値創出でNo.1戦略の深化を目指す!」を掲げる。これらを支えるITは、2015年までにアサヒグループ共通の基盤を構築し、現在もさらなる進化に向けて、新技術の導入に取り組んでいます。攻めのIT戦略について、アサヒプロマネジメント株式会社の清水博さんに語っていただきました。

グループ全体のシステム統合で、攻めの体勢を整える

アサヒグループは中核である酒類事業のアサヒビールを筆頭に、飲料事業のアサヒ飲料、食品事業のアサヒグループ食品に加え、欧州、オセアニア、東南アジア、中国などで酒類・飲料を製造販売する国際事業、その他の機能性食品・飼料といった事業を展開しています。私が所属するアサヒプロマネジメントは、ホールディングスの機能会社としてグループ全体のIT戦略の責任を担っています。

IT基盤の統合に本格的に乗り出したのは、アサヒグループがホールディングス化した2011年からです。M&Aも、2001年にニッカウヰスキーを子会社化し、2012年に飲料部門でカルピスを傘下に収め、2016年にはエノテカを子会社化するなど、積極的に進めています。連結子会社の数は150近く(2018年2月現在)ありますが、従来はIT部門も事業会社ごとにあり、それぞれが個別にシステムを運用してきました。そこでグループのIT戦略、IT資産管理はすべてアサヒプロマネジメントに集約しました。ITリソースを集約することで、「攻めのIT」を進めることが狙いです。

まず、2010~2012年度でグループ共通のIT基盤を構築しました。その結果、事業単位でマスターとデータを集約しましたが、まだ十分ではありません。そこで、2013~2015年度の「第5次中期経営計画」において、生産/調達、原価計算、販売物流、財務会計の基幹システムを統合・集約するとともに、各事業会社の業務プロセスを根本的に見直すBPR(Business Process Re-engineering)を実施しました。BPRの観点から各社と検討しながら標準となるテンプレートを作成し、それをベースに展開していきました。オフコンベースで動いていたレガシーシステムは、2016年までにすべてオープンシステムに移行しています。

基幹システム統合の中でも特に意義が大きかったのは会計システムです。ポイントは、事業会社ごとにバラバラだった勘定科目を統合したことにあります。企業規模の大小に関わらず、連結決算に紐付く勘定科目をグループで揃えた結果、全事業会社を同じ物差しで測れるようになりました。勘定科目を統一しておけば、なぜその会社が急に伸びているのかといったことが客観的にわかり、グループ全体の経営管理がデータに基づいて実践できます。

事業会社ごとにデータセンターを借りて管理していたITインフラも、すべてプライベートクラウドに移行してサーバーを統合し、必要なリソースはグループ各社が利用料として支払う方式に改めました。これによってITコストの大幅な削減が実現しています。最近はMicrosoft AzureやGoogle Cloud PlatformなどのPaaSや、SalesforceやOffice365などのSaaSも、時代に合わせて導入が進んでいます。

ビジネスニーズに応えて随時クラウドも活用

一方、営業システムなどの業務系システムは、事業会社ごとにビジネスの性格が異なるため、要件に応じてアサヒプロマネジメントが個別に構築、提供しています。事業会社で完全に独立して使っているものもあれば、複数の事業会社が共通のシステムを使っているケースもあります。

業務系システムでもスピード化の観点から、PaaSやSaaSを採用する動きが加速しており、適材適所で採用しています。全体的な割合ではまだまだクラウド率は高くありませんが、今後は主流になっていくと思われます。特に、Excelベースで独自に業務システムを構築して使っている事業会社や部署がいくつもあるため、潜在的なニーズに応えて順次システム化していくには、外部のサービスを利用してクイックに対応していくべきと考えています。その反面、各事業会社独自で利用するシャドウITも一部にはあります。セキュリティの領域はIT部門の管轄になるため、データの扱いやセキュリティに関してはルール化も含めて、環境を整備していく方針です。

モバイルも活用して、もっと自由に働く

アサヒグループが進めるIT戦略の一環として、モバイルデバイスを活用したワークスタイル変革も行っています。ホールディングスと主要事業会社では、業務系アプリケーションをインストールしたiPhoneを全社員に配布。電話、メール、SNS、Skype等のコミュニケーションツールから、ポータルサイト、オンラインストレージ、文書作成、表計算など一通りの機能を提供しています。

ホールディングスとアサヒプロマネジメントでは週3回まで在宅ワークが認められていて、会社としても積極的に推奨しています。アサヒビールは会議が多い会社ですが、Skypeを使ってどこからでも会議に参加できるので、特に困ることはありません。私自身も在宅ワークを効果的に活用している社員の1人です。例えば、午後に恵比寿のオフィスで仕事がある場合、浅草の本社に出社してから恵比寿に出向くのではなく、午前中は在宅で業務を進め、午後に恵比寿に直行して仕事が終わったらそのまま帰宅することもあります。このほうが効率的に働けるからです。

在宅ワークが難しい営業系の社員でも、アサヒグループ全体がコアタイムのない「スーパーフレックスタイム制度」を導入しているので、働く時間は社員自身が決めることができます。会社で契約した会員制のコワーキングスペースを、シェアオフィスとして利用することも可能です。会社支給のiPhoneから基幹システムにアクセスできますし、承認系のモバイルシステムもすべて用意されているので、部門長が承認のためだけに出社するといったこともありません。

先端テクノロジーを取り入れながら、IT人材を育てたい

アサヒグループのITを統括する立場から今後の課題としては、次世代のIT人材の育成が挙げられます。どれだけITの知識があったとしても、進化が激しい現在は、過去の経験が役立つ領域は多くないため、やはり自らが興味を持ち、学びに行く姿勢が重要です。そして自分から戦略を立案したり、ITのビジョンを考えたりすることができ、さらにそれをやり抜く力のある人材がこれからは活躍の場を広げていくのではないでしょうか。システムの構築や運用においては、業務側とのさまざまなやり取りも発生します。100社以上の事業会社があり、業務内容もすべて異なるアサヒグループでは、すべての業務知識を身に付けるのは至難の業です。そのため自らが関わる業務に興味を持って学び、業務とIT双方の言い分を分かるように努力する必要があります。私たちもそのような人材を積極的に先頭に押し上げ、育てていきたいと思っています。

こうした取り組みが評価され、アサヒグループホールディングス株式会社は「食料品」の業種で唯一、2015年、2016年、2017年、2018年と4年連続で「攻めのIT経営銘柄」に選定されています。2018年はデジタルトランスフォーメーションの推進とともに、以下の取り組みが高評価を受けました。

  • 業務部門とIT部門の人材交流の促進
  • 「ビール品質保証システム」の刷新に着手

攻めのIT経営銘柄」は、経済産業省と東京証券取引所が共同で、経営革新や競争力の強化に向けてITの積極的活用に取り組む企業を選定・公表しているものです。

お話をお伺いしたDataLover:清水 博(しみずひろし)さん

アサヒプロマネジメント株式会社業務システム部 業務グループ

国内システムインテグレーターでIT技術者として勤務。2007年、アサヒビール株式会社に中途入社し、業務用&エリア営業を担当。その後、アサヒグループホールディングス株式会社で国際事業企画・業績管理・M&Aに従事。その後、アサヒプロマネジメント会社に在籍し、現在は営業領域を主としたアサヒグループのIT企画を担当する。

取材・TEXT:SEデザイン+木下真之 PHOTO:Inoue Syuhei

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