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なぜ分析ツールのUIを「ダッシュボード」と呼ぶのか?

         

統計局は5月12日、企業や教育機関などさまざまな分野で統計データの利活用を促すWebサービス「統計ダッシュボード」の提供を開始しました。

統計局では以前から政府統計のポータルサイト「e-Stat」も提供しています。本稿では、統計ダッシュボードとe-Statの紹介とともに、そもそも“ダッシュボード”とは何かについて紹介いたします。

統計局がリリースした「統計ダッシュボード」とは?

総務省統計局は2017年5月12日、「統計ダッシュボード」の提供を開始しました。統計ダッシュボードとは、各府省などが作成する約5,000の統計データを、「人口・世帯」など17の分野に整理して収録し、統計になじみのないユーザーでも簡易なデータ活用ができるWebサービスです。

ちなみに統計局では、「e-Stat」という政府統計ポータルサイトも提供しています。「政府統計の総合窓口」という位置づけのとおり、e-Statは、さまざまな政府統計を集約してリンクを張り、検索しやすいことが特長です。もちろん「都道府県・市区町村のすがた」など一部のデータは、Webサイト上で見やすく加工できますが、主な利用法としては必要な統計データを自分で探してダウンロードし、ExcelやBI(Business Intelligence)ツールなどのデータ分析ツールに取り込んで加工するケースの方が多いでしょう。APIを公開しているので、APIを通じてさまざまな統計データを集約し、独自のデータ分析サービスを展開することも可能です。

統計ダッシュボードは、誰でも簡単にデータを利活用できるように、あらかじめグラフなどに加工して提供しているので、データ分析や統計に不慣れなユーザーでも気軽に使いこなすことができます。使い方が動画で説明されているのも、わかりやすくていいですね。

分析ツールのUIとは?分析ツールにおけるダッシュボードの役割

それでは分析ツールにおけるUI(ユーザーインターフェース)についてと、ダッシュボードの役割について、ダッシュボードが備える機能の観点で紹介します。

UI(ユーザーインターフェース)とは

UIとは「User Interface(ユーザーインターフェイス)」の略称のことで、ユーザーとコンピューターあいだで情報をやり取りするマウスやキーボード、マイクやスピーカーなどの音声入力装置、ディスプレイなどの画面表示装置といった様々な機器や入力装置を指します。

分析ツールのダッシュボードのUIは主に、ディスプレイに表示するGUI(グラフィカル ユーザー インターフェイス)のことを指します。

分析ツールにおけるダッシュボードの機能

企業向けの分析ツールであるBIツールは、企業内に蓄積された大量のデータに対して以下の分析を行い、その分析結果を視覚的にわかりやすいグラフや表のような形式でダッシュボードに表示します。

データの絞り絞り込みや集計結果の項目ごとの詳細表示といった機能を活用することで、ユーザーが必要とする情報の迅速な提供を支援します。

レポーティング

蓄積された企業データやIoTで集めたリアルタイムデータを可視化して表示する機能です。

ダッシュボートと共有することで、集計したデータの内容のチェックや、一定の値を超過した際にはアラートとして通知することで異常をいち早く察知することができます。

OLAP(オンライン分析処理)分析

蓄積されたデータを多次元的に扱って集計値の参照し、分析することでデータ同士の関連性を抽出します。

データマイニング

重回帰分析やディシジョン・ツリーといった統計式を用いてデータを分析し、その中から価値ある法則を導き出します。

シミュレーション

過去のデータをもとに予測値などを決定する際に、「プランニング」機能でシミュレーションして分析し、結果を計算して最適な数値を導き出します。

分析でダッシュボードを活用するメリット・デメリット

分析ツールでダッシュボードを活用することのメリットとデメリットを紹介します。

基本的にダッシュボードの活用は多大なメリットをもたらしてくれますが、導入コスト、立ち上げ期間、専門的なスキルが必要など、リターンまでコストや一定の期間が必要といったデメリットもあるため、導入にあたってはそれぞれをしっかり理解しておく必要があります。

メリット

データを可視化することで、状況が視覚的に捉えられる

数字の集合体であるデータは、それぞれの値がなんであるか?どの程度であるか?を捉えるためには、認識しやすい形に変換する必要があります。

ダッシュボートは、必要な情報を収集し、視覚的に把握しやすい表やグラフに手早く可視化してくれます。

必要な情報が手早く収集できる

複数の領域や部署間に渡った業績の確認、グループの目標の達成状況、予期した経営戦略の状況確認など、企業は様々なシーンでデータを活用しています。

ダッシュボートは、データを追跡することができるため、少ない負担で手早く、必要な情報の収集をできるようにしてくれます。

様々な形式のデータを統合して表示できる

分析ツールは様々なフォーマットのデータの統合が可能です。

これまでフォーマット毎に対応したツールででしか活用できなかったデータが一つの分析ツールのダッシュボートに表示できるようになるので、潜在的なデータの分断を解消し、データの活用範囲を劇的に広げてくれます。

データドリブンの精度を高めてくれる

人工知能 (AI) による予測分析をダッシュボードに組み込むことにより、蓄積したデータを比較して軌道について理解し、より正確な数値予測の作成、より戦略的な経営の計画、目標を達成するための適切なプロセスの判断といったデータドリブンを支援します。

デメリット

初期費用、ラーニングコストの発生

ダッシュボードを備えた分析ツールを導入する場合、機器やインフラの導入費用、ツールを使用し続ける事で発生するラーニングコストの負担が強いられることになります。

運用開始までに時間と手間がかかる

ダッシュボートを運用するには、これまで企業が蓄積したデータを分析ツールに取り込む必要があります。

企業データはこれまで使い続けてきたツールやサーバーなど、クラウドや社内のサーバーに分散されているケースが多く、また分析ツールはデータの母数が大きければ大きいほど、価値を発揮するので、ダッシュボードの有用性が実感できるようになるまでは、どうしても一定の期間を必要とします。

知識やスキルが必要な場合も

最近はノーコード / ローコードでデータ分析が利用できるダッシュボードも増えつつありますが、分析ツールによってはプログラミングで実行するものもあります。

ノーコード / ローコードとプログラミングで比較した場合、プログラミングの方が柔軟に対応できるため、コーディングの知識やスキルを備えた人材がいないとダッシュボードの活用がどうしても制限されてしまいます。

そもそも「ダッシュボード」とは

統計ダッシュボードは分析機能を持つWebサービスですが、e-Statはポータルサイトです。では、統計ダッシュボードにある「ダッシュボード」とは何でしょうか

BIツールや経営管理システムでは、企業活動の状況を示すさまざまなデータを統合して表示する管理画面のことを「ダッシュボード」と呼びます。実はダッシュボードとは、もともと自動車もしくは飛行機などの走行・操縦に必要な計器類を搭載したボードのことです。そこから転じて「さまざまな情報を見せる」画面の意として使われるようになりました。ちなみに、馬車やソリの泥よけやボートの波除けもダッシュボードといいますが、これは「泥や波から守るボード(板)」です。同じように、運転者や搭乗者を守るために自動車前面に取り付けた内装のことをダッシュボードと呼ぶようになり、そこにさまざまな計器類を入れたのが始まりです。

さて、ダッシュボードの特徴は2つあります。1つは、自動車や飛行機の計器のように、直感的にわかりやすく情報を表示することです。たとえば速度であれば、数字が変わるよりも丸いメーターの針が動く方が視覚的にわかりやすいですし、「危険域」でメーターの色を変えておけば、スピードを出し過ぎないように自然と自制心が働きます。

もう1つは、ニーズや目的に応じて必要な情報を追加したり、深堀したりする機能を備えていることです。現実のダッシュボードは計器の付け替えは難しいでしょうが、BIツールや経営管理システムでは、分析したいデータを自由に選び、興味関心が赴くままにデータをドリルダウンできる機能を備えているものが大半です。

ダッシュボードはなぜ生まれたのか

BIツールや経営管理ツールにダッシュボードの概念が取り入れられたのは、1970年代に研究開発が勧められた意思決定支援システム(Decision support system)が最初といわれています。そのダッシュボードという概念が一気に広まったのは、1992年に『Harvard Business Review』に発表された「バランススコアカード」(Balanced Scorecard、以下BSC)がきっかけでしょう。

BSCとは、ハーバード・ビジネススクールのロバート・S・キャプラン教授と、コンサルティング会社社長のディヴィッド・P・ノートン氏が提唱した、組織成長のための業績評価モデルです。BSCでは「財務」「顧客」「業務プロセス」「成長と学習」の4つの視点で業績指標を設定して達成率を測り、現状を把握する管理手法として知られていますが、2000年前後にこのBSCの考え方を取り入れたBIツールや経営管理システムが次々と開発されました。

この2000年前後という時代は、ちょうど日本国内でERP(Enterprise Resource Planning)システムのニーズが高まった時期に当たります。バブル崩壊後、企業が効率的な経営手法を求めるようになったことや、管理会計を重視した国際会計基準への対応義務もあり、経営管理手法に注目が集まっていたころです。BSCの考え方を踏まえた経営管理システムは、SAPやOracleなどの主要ERPベンダーからも提供され、BSCブームが起きました。BSC対応のテンプレート画面を提供するBIツールベンダーもありました。

BSCを適用したBIツールや経営管理システムでは、その表現力豊かな画面のことを「ダッシュボード」と呼んでいました。会計や顧客、業務、成長など複数の視点で業績指標を一つの画面内で表示するため、さまざまな形態のグラフが必要だったのです。このように複数の表現機能を備えた経営管理システムやBIツールのUIを、ダッシュボードと呼ぶようになりました。

いまはグラフの形態だけでなく、クリック一つで系列を切り替えたり、データを自在にドリルダウンしたり、またはアニメーション形式で推移を表したりと、表現がより多彩になっています。現在の状況や分析結果などがより直感的にわかりやすくなっていますし、データに不慣れなユーザーでも容易に分析が可能です。

資料提供:MotionBoard

ダッシュボードは、その由来のとおり、「先へ進むため」に必要な情報を視覚的にわかりやすく表示し、自由に分析できる機能なのです。

(データのじかん編集部)

 
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