エラーは守備力がない証明ではない! データは野球をどう変えたのか? | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
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エラーは守備力がない証明ではない! データは野球をどう変えたのか?

         

盛り上がりを見せた今年の甲子園も終わり、プロ野球も大詰めを迎えようとしている今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか?

6月にはデータで観るサッカー記事公開しましたが、データが重要なのはサッカーだけではありません。日本での人気スポーツといえばやはり野球ですが、野球でもデータ活用は非常に重要視されています。

今回の記事では、初めて野球にデータの活用を持ち込んだ、ピッツバーグ・パイレーツのお話を紹介したいと思います!

不振にあえいでいた弱小球団ピッツバーグ・パイレーツ

メジャーリーグベースボール、ナショナルリーグ所属のピッツバーグ・パイレーツは不名誉な記録を打ち立てたことで知られています。

なんと1993年から2012年まで、20シーズン連続の「負け越し」を記録してしまったのでした。当時のパイレーツを「史上最弱」と呼ぶ野球ファンもいるほどで、当然、人気も急降下した球団は集客の確保に苦しんでいました。

もちろん、パイレーツも不振に無策だったわけではありません。

経営陣は毎年、主力級の選手を補強して戦力値を上げようと必死でした。しかし、目立った活躍を残せる選手はごくわずかで、チームは継続して勝利をあげることができません。チームの経営難は深刻化するばかりで、結果を出せないジェネラル・マネージャーは解雇寸前だったといいます。パイレーツ関係者にとっての「冬の時代」は終わりが見えませんでした。そんなチームを救ったのが「ビッグデータベースボール」だったのです。

パイレーツに光をもたらしたビッグデータベースボールとは?

弱小時代のパイレーツには、スター選手が移籍したがりませんでした。

そもそも、タイトルから遠ざかっていたパイレーツにはスターを獲得できるほどの資金などありません。そこで、クリント・ハードル監督は「ビッグデータベースボール」の導入を決意したのです。ビッグデータベースボールとは膨大な試合データ、選手データを分析し、戦術に組み込む野球です。たとえば、ある打者の打率や打点だけでなく「打球の方向」「アウトになりやすいコース」などを解析できれば、守備の精度は上がります。ハードル監督はデータ分析官をチームに招聘し、対戦相手を徹底的にスカウティングしました。

データは選手の補強にも応用されます。ホームランやタイムリーヒットを量産している有名選手でなくても、データを分析すると「チームに勝利をもたらす選手」はたくさん存在していると分かりました。ハードル監督は「ヒットは少なくても出塁率の高い選手」「特定の打者に対して勝負強い選手」を安い移籍金で獲得し、重用していったのです。その結果、2013年のパイレーツはポストシーズンに進出を果たす快挙を成し遂げました。

パイレーツ以前に注目されたマイケル・ルイス著「マネーボール」

もっともビッグデータベースボールとはハードル監督が提唱し始めた理論ではありません。全米がビッグデータベースボールに注目するきっかけとなったのはマイケル・ルイスが発表した「マネーボール:不公平なゲームに勝利する技術」という本でした。本書はオークランド・アスレチックスのジェネラル・マネージャー、ビリー・ビーンの経営術を描いたノンフィクションで、ブラッド・ピット主演で映画化もされたベストセラーです。

ビーンはアスレチックスを2000年から4年連続で地区優勝に導きました。ビーンはスポーツ的な要素よりも「セイバーメトリクス(SABRmetrics)」と呼ばれる統計学を重視してチーム作りを押し進めました。ビーンの経営法はビッグデータベースボールの雛形として、多くの球団に影響を与えます。

・「エラーは守備力がない証明にならない」

・「打点よりも長打率のほうが重要」

など、ビーンの理論は野球というスポーツの概念を大きく揺さぶったのです。

ビッグデータベースボールは野球史に残る革命だったのか?

ビッグデータベースボールが球界の経営、戦術において「革命」と呼べるほどの出来事だったかは賛否が分かれるところです。

スポーツである以上、「精神論」「ファンの歓声」といった不確定要素によって勝敗が決するケースがあるのは無視できません。また、データ分析すらもねじ伏せるほどの絶対的なスター選手がいることも事実です。しかし、地方の弱小球団が強豪としのぎを削っていくために、有効な理論であるのは間違いありません。日本の球団でも甲子園でデータを収集し、スカウト活動に取り入れるなど「ビッグデータ・ベースボール」への関心は高まっています。ともあれ、データによって「さらに野球が面白くなった」のは確かでしょう。

ここで、データのじかんの鋭い読者の皆様は気づいた方も多いはず。

「マネーボール」では、今集計できるデータで現状を把握し、野球のルールの中で最適なチームを作りだしました。これは、ビッグデータなのでしょうか?定義も曖昧ではありますが、ビッグデータの対極としてスモールデータという定義もあるのはご存知でしょうか?

参考URL:

・野球の守備の「定位置」はナント思い込みだった!?ビッグデータが明かした真実 |講談社
・話題の『ビッグデータ・ベースボール』の著者を直撃!メジャーリーグで、この次にカギを握るデータは何か?|ヤフーニュース
・『マネー・ボール』を検証する|All About

(データのじかん編集部)

 
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