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レジ袋、食器、歯磨き粉など身の回りのいたるところで使用されているプラスチック。便利で安価なプラスチック商品ですが、実は海洋汚染に深くかかわる側面も……。

その中でも、環境中に存在する微小なプラスチック粒子はマイクロプラスチックと呼ばれ、深刻な環境問題の1つであると言われています。最近は話題になることも増えてきたので聞いたことがある方も多いかも知れません。明確な定義はありませんが、一般的に5mm以下の大きさのものをマイクロプラスチックといいます。1mm以下の大きさ、と定義付けられる場合もあるようです。この記事では現在目の前にあるマイクロプラスチック問題を考えます。マイクロプラスチックにおいて「今何が問題とされているのか」「どのような取り組みが行われているのか」を国や研究機関のレポートを参照しつつ解き明かしていきましょう!

マイクロプラスチック問題とは

マイクロプラスチック問題とは、マイクロプラスチックが引き起こす環境問題のことです。その大きさは5mm以下と微小なマイクロプラスチックですが、引き起こす問題は決して小さくはありません。そしてその小ささ故に回収が難しく、解決が困難な問題であると言えます。

問題の筆頭は海洋生物の生態系の破壊です。その正体は、魚類、甲殻類、貝類やカモメといった海鳥、アザラシなどの海洋哺乳類が海水に混ざったマイクロプラスチックを誤嚥してしまうこと。マイクロプラスチックは消化に適しないため、消化不全や胃潰瘍などを引き起こし、海洋生物を死に至らしめるのです。

マイクロプラスチックの誤嚥は人類にとっても他人事ではありません。欧米消化器学会は2018年に人体にマイクロプラスチック片が取り込まれていることを証拠とともに発表しています。韓国の研究者グループと環境保護団体「グリーンピース東アジア」の合同チームが行った調査では、食塩の9割にマイクロプラスチックが含まれていたことが明らかになりました。

体内のマイクロプラスチックが人体に直接悪影響を及ぼすのかはまだ明らかではありません。しかし、マイクロプラスチックに化学物質が吸着して有害なものへと変質する場合もあります。そのため各国はマイクロプラスチック対策に積極的に乗り出しています。

データで見るマイクロプラスチック問題の現状

さて、ここからは実際にマイクロプラスチックにまつわる数字を見ていきましょう。

まずは、マイクロプラスチックがどれだけ世界の海に分布しているかです。

2015年に磯辺篤彦九州大学教授が行った調査によると、海洋に存在するマイクロプラスチックの個数は日本を含む東アジア海域が群を抜いて多く、172万個/㎢となっています。その数値は実に北太平洋(10万5,100個/㎢)の約27倍、世界の海(6万3,320個/㎢)の約16倍です。

さらに2016年の九州大学の予測によると、世界の海のマイクロプラスチックの量はこれにどとまることなく上昇し続け、2060年までには今の4倍の量になり、世界の海の魚の量をマイクロプラスチックが上回るということです。調査は前述の磯辺篤彦九州大学教授と東京海洋大学の東海正教授・内田圭一准教授、寒地土木研究所の岩﨑慎介研究員らの研究グループによって行われました。

マイクロプラスチックは実は海洋だけで見られるのではありません。風に飛ばされ、陸上にも運ばれてきます。2017年に英仏の研究チームによって英科学誌ネイチャージオサイエンスに発表された論文によるとピレネー山脈山頂の空気中のマイクロプラスチック濃度は1日平均365個/1㎡でした。この濃度はパリの都市部と同程度であり、海中だけでなく空気中でもマイクロプラスチック問題が起こっていることを示唆しています。

マイクロプラスチック問題への対策は海外がリード

マイクロプラスチック問題への対策は日本よりも海外で進んでいます。

2018年にはカナダで開催されたG7シャルルボア・サミットにて、「プラスチックの製造、使用、管理及び廃棄」に関して厳しく取り決めた憲章が提案され、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダの5カ国とEUによって採択されました。しかし、日本はこの憲章に署名していません。

また、すでに45カ国以上の国々でレジ袋の使用禁止が批准されています。欧州議会ではそれだけでなく、ストロー、食器、綿棒、マドラーなどの代替可能な使い捨てプラスチックの使用が2021年から禁止されることになっています。しかし、日本でレジ袋規制の流れが進んでいないのはご存知の通りです。

データ上でも日本の1人当たりのプラスチック廃棄量は年間約32kgであり、アメリカに次いで世界2位となっています。

終わりに

マイクロプラスチック問題の現状についてデータを参照しつつ解説いたしました。

マイクロプラスチックは世界の海水や大気を埋め尽くそうとしていますが、残念ながら日本では対策は遅れています。しかし徐々に危機感が高まっているのも事実。2019年5月31日には、翌月に開かれるG20サミットに向けて海洋プラスチックごみの削減に向けた行動計画海洋プラスチックごみ対策アクションプランが公表されました。

まずは他国の事例に学びつつ、世界の国々と同様の危機感を持つことがマイクロプラスチックが世界一多い海域の周辺に暮らす我々のミッションだといえるでしょう。

参考URL
人体にマイクロプラスチック、初の報告┃NATIONAL GEOGRAPHIC
平成 28 年度海事問題調査委員会報告書「マイクロプラスチック問題について」┃海事問題調査委員会
海洋ごみとマイクロプラスチックに関する環境省の取組┃海洋ごみシンポジウム2016
海洋における将来のマイクロプラスチック浮遊量を世界で初めて予測〜海洋プラスチック汚染の監視と軽減に期待〜┃九州大学
2050年には海のプラスチックの量が魚を超える!?東京農工大学 マイクロプラスチック汚染 高田秀重(2)┃日経ビジネス
政府、海洋プラ対策の行動計画公表=G20でアピール┃時事ドットコムニュース
海洋プラスチック問題について┃WWFジャパン

宮田文机

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