河崎 では、さっそく「デジタルフォーメーションの時代におけるIT部門のリーダーの役割」についてお三方に伺いたいと思います。従来とこれからでIT部門リーダーの役割は異なるか?その理由も含めお願いします。
長谷川 弊社は6~7,000万規模のお客様を抱えているのでこれまでは、巨大な基幹システムをどう作っていくかが課題でした。従来までは組織を引っ張るリーダーに従っていれば良いという安心感のなかにいる状況でしたが、いまはどんどん変化が続き、自分の頭の中だけで考えるのではなく、世界のベストプラクティスを見て、いかに自社に取り込むかを考えるべきです。
単に何かを開発・導入するかではなく、「将来ドコモをどんな会社にしたいか」「どう変わるべきか」がこれからのリーダーに求められる思想です。それを実践できる人材が次世代のIT部門のリーダーだと思いますし、そのために組織も多様な価値観を持ち、グローバルのマインドを持っていかなくてはいけません。
もうひとつは勘と経験に頼る経営から脱却し、データで判断していくデータドリブンな文化を作っていくことです。確固たるデータがあれば、意思決定を迅速化することができ、外部からディスラプティブなプレイヤーが入ってきても破壊されない強いビジネスモデルが構築できるのではないかと。
古川 従来はプランを安く実現できる人材がIT部門のリーダー像でしたが、内容については海外拠点も含め、グループ各社のIT部門任せだったので、ガバナンスが効かなくなってきました。今後は、グローバルな視点でどのようにITと自社事業を関係づけるかを考えなくてはなりません。現在ブラジル、ヨーロッパでも同じシステムを使っていますので、必然的に世界と繋がりやすく、各国のビジネスがリアルタイムで理解できる状態になりつつあります。こうして自社でしか通用しないスキルを身につけるのではなく、他社でも活かせるスキルを身につければ、ビジネス環境の変化にも対応できます。
また、昨今の新しい技術は100%理解した状態ではなく、おおよそ6割の確からしさで判断しなくてはいけない状況が多いと思います。そこで、たとえ6割の確率でもいかにリーダシップを持って事業に取り組めるかも重要ですね。最後に、皆さんもお悩みかと思いますが、新しいデジタルを経営層に理解させるコミュニケーション能力も今後ますます必要になってくると思います。
早稲森 古川さんとの重複はたくさんありますが……。従来はいかに早く安く作れるかを重視されてきましたが、これからは新しいものをどんどん使い、「作る」から「使う」という考え方にシフトしていかなくては、技術に追いつけません。ひとつ決裁を取る間に他社に抜かれますので、スピードに対して評価をしないと、効果が検証出来た頃にはバージョンアップされたりトレンドが終わったりしています。
弊社では営業部門の方からクラウドサービスを持ってきて、使いたい機能を個別にIT部門に提案してきます。今後はこうした業務の役割分担を見直して、業務部門/IT部門間の人材交流をするべきだと考えています。どんどんトライ&エラーをして、日本だけではなく海外にも目を広げていく必要があると。
また、これまでは自動車業界のIT部門間で情報交換をしていましたが、今後は業種・業界を超えてイノベーションをするべきです。「自動車業界しか知らない技術」では通用しなくなり、次のリーダーには違う業種からさまざまな知見を吸収しないと取り残されるのではという危機感を覚えています。
古川さんもおっしゃっていましたが、IT部門だけがITに詳しくてもしょうがないんです。他社の情報を経営陣にタイリーに伝えるミッションがあり、社内にセミナーなどで伝えなくてはいけないですし、弊社自身が社会に発信していくべきとは思います。
河崎 どうもありがとうございました。
私も昔システム部門にいたのですが、いかに安定運用するかが一番重視されていました。いまはガラッと環境が変わったこともあり、経営からは「ITを使って何とかしなくてはいけない」と求められているのがIT部門リーダーの現状だと思います。
お三方とも、それを課題として意識され、変えていこうと対策を講じており、たのもしいと感じました。
最後に今日のまとめとして、各社の微妙に違いつつも共通項としてまとめます。
銀行も今後変わっていくことが求められています。
従来は業務支援システムの開発が要件定義含め2年以上長期に渡るため、途中の人事異動でアプリケーションオーナーが不在となり稼働後のシステムを活用する責任があいまいになるようなこともありました。また、お客様に対して金融サービスを安定供給していくためには「モード1」のアプローチは必要ですが、迅速に提供していくためには「モード2」のアプローチも必要であり、どちらか一方がいいというものではありません。
将来的には「モード1」と「モード2」が融合していかなくてはいけません。お三方はそれを分かっていてチャレンジされているので、非常に感銘を受けました。
本日のお話が、少しでも皆様の会社の貢献に寄与できればと幸いです。今日はどうもありがとうございました。
(伊藤七ゑ)
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