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Sales-led Growth(SLG)/Product-led Growth(PLG)について聞いたことがある方は多くいらっしゃるかもしれません。
ではみなさんは、比較的新たな「Community Led Growth(コミュニティ主導の成長:CLG)」という言葉をご存じでしょうか。近年存在感を増しているSaaS企業で見られる成長戦略であり、顧客や利用者を中心としたコミュニティを通じて事業の成長を促進させる戦略として重要性が高まっています。
当然ながら従来も「顧客の意見を反映したサービス、製品づくり」は存在しましたが、CLG戦略特有の、SaaS企業が活用するエッセンスとはいったい何でしょうか。
まずはCLG戦略の意味から詳しく解説しましょう。コミュニティ主導の成長( Community-Led Growth, CLG )とは、企業や組織が顧客や利用者を中心に据え、彼らのニーズや意見を直接取り入れて事業の成長を促進させる戦略です。つまり、このアプローチは、顧客が製品やサービスの価値を理解し「口コミで拡散する」「顧客同士で紹介(リファラル)し合う」ことによって事業の成長が加速されることを目指しています。では、なぜ「拡散や紹介が価値を高める」のか、そして成長につながるのでしょうか。
具体的にはコミュニティ主導の成長戦略(CLG)は、製品やサービスそのものが持っている価値の他に企業に対して以下のような価値をもたらします。
1) 顧客満足度の向上:顧客の意見を直接取り入れることで、ニーズに合った製品やサービスが提供され、顧客満足度が向上する。
2) ブランドの信頼性向上:顧客が主体的に製品やサービスを推奨することで、ブランドへの信頼性が向上し、既存顧客の推奨を見た新規顧客の獲得が容易になる。
3) 継続的なイノベーション:コミュニティからのフィードバックを活用することで、企業は継続的に製品やサービスを改善し、イノベーションを生み出すことができる。
コミュニティビルダー、コミュニティマネージャー、およびコミュニティプロフェッショナル向けの国際カンファレンスであるCMX Summit2022おいて、Commone.ioのファウンダーであるSumeru Chatterjee氏は、Peloton/Shopify/Gong.io/Duolingo/Notionなどの取り組み例を挙げながらコミュニティ主導の成長がSaaS業界で重要になっており、現在はSaaS 3.0の時代が到来していると話しています。
Slackは、公式のコミュニティイベントやユーザーグループを通じて、ユーザー間の情報共有や交流を促進しています。また、コミュニティフォーラムでは、ユーザーが疑問やアイデアを共有し、他のユーザーやSlack社員とコミュニケーションできる環境が提供されています。
GitHubは、オープンソースプロジェクトを通じて、開発者同士が互いに協力し、知識やスキルを共有するコミュニティを形成しています。さらに、GitHubのブログやイベント、カンファレンスを通じて、開発者たちが最新の情報やトレンドにアクセスできるようになっています。
「nest」は、データのじかんを運営するウイングアークが提供するデータドリブンを推進する方々の成功をサポートするデータ活用コミュニティです。
構成されるコンテンツは「nest Membership Portal」 「nest Working Group」 「nest Success Story」 「nest Round Table」の4つ。その中で、nest Membership Portalはウイングアークユーザーのためのポータルサイトです。ポータル内では製品情報や他社の活用事例など、幅広い情報の獲得が可能です。また、nest Working Groupは、ユーザー主導型のコミュニティであり、ユーザーが共有した課題解決のために活動をする場となっています。
企業の枠を越え、より広く、より多くの人が交流するデータ活用のよりどころを目指すコミュニティがあります。それはファイル連携ミドルウェア「HULFT(ハルフト)」とデータ連携ソフトウェア「DataSpider(データスパイダー)」の開発、提供を手がけるセゾン情報システムズが運営しているデータ活用コミュニティ「DMS」です。累計数千人の参加者がいた既存のコミュニティを統廃合して誕生したDMS Cubeは、ベンダーである同社の役割を果たすために、あえて「ベンダーらしいコミュニティから脱却」にこだわって運営されているといいます。
「データラーニングギルド」はデータ活用を中心に専門家同士の交流、スキルアップ、キャリア支援、コラボレーションや仕事が生まれるような仕組み作りを提供しているコミュニティです。支援者としてプロジェクトに参画するデータのじかんは、村上氏およびプロジェクトメンバーをお招きした座談会を以前開催しました。編集長の野島がデータサイエンティストたちの課題と、これから目指す理想郷について話を聞いたのは以下の関連記事です。コミュニティを「生き物」と捉え、常に何かしらの活動が動いていることを意識して運営されています。
コミュニティ主導の成長戦略は、これまでの事例からもわかるように、企業にイノベーションをもたらす力があります。
今後、さらに多くの企業がコミュニティ主導の成長戦略を取り入れることで、以下のような未来の可能性が広がることが見込まれます。
1) より顧客志向の製品・サービス開発:
顧客の意見やニーズが色濃く、ダイレクトに反映された製品やサービスが増えることで顧客満足度が向上し、より競争力のある市場が形成される。
2) サステナビリティの向上:
コミュニティからの幅広いフィードバックを活用し、環境や社会に配慮した製品やサービスが開発されることで、持続可能な社会の実現に貢献する。
3) 地域コミュニティの活性化:
地域コミュニティがビジネスの中心となることで、地域経済の活性化や雇用創出につながる。
今回は「コミュニティ主導の成長戦略(CLG)」によって価値の創造をし、イノベーションを起こすという話題でした。この戦略には報道などでよく聞かれる、CSV(Creating Shared Value)経営との関連があります。CSV経営は「共有価値の創造」を基盤とした経営であり、その「共有価値」とは、経済的価値(利益の獲得)と社会的価値(社会的課題の解決)を両立を指します。
つまり、今回のコミュニティ主導の成長戦略(CLG)は、社会的課題を拾い上げ、解決するための最適な場となる可能性があります。中でも、SaaS企業がCLG戦略を用いて、顧客や利用者のニーズや意見を直接取り入れ、事業の成長を促進することは今後ますます重要になってくるでしょう。
TEXT:ことのわ
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