地域密着型DXプロジェクト!「いわき地域ものづくり中小企業等DX研究会」のオープンセミナーを取材!

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DXの波が世界規模で訪れる昨今の社会において、早くDXを行わなければ、と考えることは自然の流れなのかもしれませんが、では具体的にどうやってDXを進めていくか、という質問に答えるのは簡単ではありません。特に予算も人材もない中で、手探りでDX化を進めようとしている中小企業にとっては、行政機関がどのような支援をしてくれるのか、というのはDX化を目指す上で一つの鍵となる部分です。

福島県いわき市の(公社)いわき産学官ネットワーク協会は、地域のDX化を推し進めていくために、「いわき地域ものづくり中小企業等DX研究会」を発足させ、いわき地域でものづくりに携わっている中小企業に特化した取り組みを開始しています。この研究会は、デジタル技術を活用して効率化、業務モデル・ビジネスモデルの変革を行い、それぞれの事業の強化、そして新規事業の創出を目指しています。データのじかん編集部は、9月8日(木曜日)にいわき産業創造館企画展示ホールAにて開催された4回に渡って行われるセミナーの記念すべき第一回のオープンセミナーを取材しました。

ほぼ満席で行われた今回のセミナーは基調講演、事例紹介、いわき地域におけるDXに関する事業紹介の三部から構成されており、参加者らができるだけ多くのことを持ち帰ろうと、熱心に耳を傾けている姿が印象的でした。この記事では、それぞれの登壇の内容を簡単に紹介させて頂きますので、ぜひ最後までお付き合いください。

基調講演:「明日の企業経営のためのデジタル活用〜地域DXのはじめの一歩」

日本商工会議所 地域振興部付 統括調査役 小松靖直氏

最初の登壇では、日本商工会議所 地域振興部付 統括調査役 小松靖直氏によるDXの始め方についての解説がありました。DXという概念が一人歩きしがちですが、経営者本人のビジョンやリテラシーのほうが実際には大切であり、DXとは単に紙のデータをデジタル化するだけではなく、デジタル化されたデータを使って事業の効率化を含む何かしらの変革が行われるところまでを含めた言葉である、という、DXとは何かについての基本的な部分から、必要なデータだけを取ることに徹底することで、スマートファクトリー化を成功させ、大きな成功を収めている旭鉄工の事例の紹介まで幅広い内容を網羅した密度の濃い講演内容でした。

DXはなんでもできる魔法の杖のように思われがちですが、DXはあくまでも経営を行なっていく上で必要不可欠な数多くのアイテムの中の一つにすぎず、その概念に囚われるのではなく、それをうまく活用していきましょう、という話は常日頃から我々がデータのじかんを通じて発信しているメッセージであり、旭鉄工の事例もデータのじかんで何度も取り上げさせてもらっているので、特に筆者にとっては共感要素の強い内容でした。

小さくても良いのでできることをやってみる、ということがDXにおいて極めて大切な考え方であることを改めて確信しました。

事例紹介:DXセレクション2022の認定企業、株式会社丸秀の華麗なるDX戦略〜IoT技術活用で生き残りをかける

続いての登壇はDXセレクション2022(中堅・中小企業等のDX優良事例選定)の認定企業16社に選ばれた株式会社丸秀の代表取締役 小林隆志氏および取締役工場長 新井康二氏のお二方にによる自社事例の紹介でした。株式会社丸秀は山形県長井市に工場を持つ金属部品加工メーカーで、トラックやバスの板金部品や乗用車のトランスミッション部品のプレスや溶接、切削、塗装などを行なっています。

トランスミッション部品が現在の丸秀社の売上の三割を占めているのですが、EV車の普及と共にトランスミッション部品への需要は減少するため、今後の事業展開に危機感を覚え、事業がどのような展開を迎えても柔軟に対応できる体制を整えるべく、「社員全員で情報を使いたおし、QCDを別次元へ。(Q:品質、C:コスト、D:納品)」というスローガンを掲げ、2018年から5ヵ年計画で会社のDX化を進めてきました。社内での課題を洗い出し、その解決策を探っていくと大きく分けて「現場情報の電子化」「稼働状況の見える化」「第3工場のスマートファクトリー化」の3つに分類できることが明らかになりました。

株式会社丸秀 取締役工場長 新井康二氏 /株式会社丸秀 代表取締役 小林隆志氏

現場情報の電子化・稼働状況の見える化・第3工場のスマートファクトリー化


「現場情報の電子化」は、作業指示、作業標準、報告書類などを全て電子化してサーバーへ保存することで、情報へのアクセス性を高め、必要な情報を探し出すための手間を削減する、という試みでした。また、GIMS-Q(Genba Information Management System-Quality)という自社開発ソフトを使って、蓄積したデータを可視化させ、実際に現場で役立つデータ活用を実現させました。

二つ目の「稼働状況の見える化」では、全ての機器がどのくらい稼働していくのかをデータとして取れるようにすることを目指しました。しかし、工場で使用している機器は40年前のプレス機器から比較的最近のものまでかなり多種多様な上に台数も多いため、どのように管理していくのかが課題でしたが、全製造設備にArduino UNOというマイコンを組み込み、そこから機器のオンオフの状態を発信させることができるようになり、今ではおよそ100台の機器の稼働状況が自動で確認できるようになっています。これは、GIMS-P(Genba Information Management System-Productivity)と呼ばれる別の自社開発ソフトを使って可視化を実現させています。GIMS-QとGIMS-Pをセットで使うことにより、かなりのデータを収集することができるようになりました。

三つ目の「第3工場のスマートファクトリー化」は、現在進行形のプロジェクトで、現在は作業員が操作している加工設備にロボットを導入し、設備の無人化・自動化を実現させようとしています。

また、丸秀社では、データの見える化を進めていくと同時に、これらのデータを社員全員がうまく活用できるように、表計算ソフトを活用した業務改善、品質管理に役立つグラフ活用、品質管理基本、生産現場の問題解決などのコースを含む30時間以上に及ぶエクセル研修を社員全員に行っており、作業者個人がデータベースから興味のあるデータを落として分析することが可能な環境が整っており、これも組織のDX化を促進させている一因となっているようでした。しかも、DX化に対して特別な予算を計上することなく、なるべく内製化することで、比較的リーズナブルな予算でDX化を実現させた、というのもDXセレクション2022の認定企業16社に選ばれた大きな要因かも知れません。旭鉄鋼の事例なども参考にされたそうですが、自社ソフトを開発するなど、自社内製でここまでやり遂げた功績は素晴らしく、類稀に見る「華麗なる事例」と言っても過言ではないように感じました!

デジタル応援隊の取り組み~デジタル応援隊の事業概要と実績について

いわき商工会議所 酒井比呂志氏

最後の登壇はいわき商工会議所 酒井比呂志氏によるデジタル応援隊の紹介でした。商工会議所と聞いても何をしてくれる場所なのかいまいちピンとこない筆者のような人向けに商工会議所が何をしようとしているか、どんな人たちを支援しようとしているのかについての説明がありました。

商工会議所は地域の企業の経営安定、新しい取り組みへの支援、セミナーの開催、補助金などを活用した支援策の実施などをおこなっている組織で、デジタル応援隊もその事業の一環となっています。いわき商工会議所は令和2年に「ウィズコロナ時代における地域経済振興プラン」を策定し、主に三つのプロジェクトを行なっています。

一つ目は「いわきへリビングシフトプロジェクト」で、いわき市に人材や企業を呼び込んでいく、という働きかけです。新しい人材を誘致することで、地域の課題の解決を支援してもらい、新しい風になってもらうことで、いわき市を活性化することを主たるミッションとしています。ワーケーション環境を整備する、などの活動を行なっています。

二つ目は「新分野への挑戦支援プロジェクト」で、デジタル応援隊もここに分類されます。事業の持続化、新規事業の開拓、デジタル化による業務の改革など、新しい挑戦を後押しすることで地域の活性化を目指すプロジェクトになっています。

三つ目が「挑戦者(プレイヤー)育成・支援プロジェクト」で、次世代経営者の発掘や育成を行うことを主たるゴールとしています。

自分がどのプロジェクトに当てはまるのかがわからない場合も、商工会議所に相談することで、何かしらの具体的な支援や専門家からのアドバイスが基本的には無料で得られるそうなので、課題を抱えている中小企業の経営者の方はとりあえず一度相談してみると良いそうです。

まとめ

DXとは何か、という基本的知識の導入部分から始まり、それを踏まえた上で、DXを見事に実現させた丸秀社の華麗なる事例の紹介があり、では予算も人材もない中でどうしたら良いのか、という部分には商工会議所という強い味方がいる、というまさにかゆいところに手が届く網羅性の、非常に情報量の多いセミナーだったように思います。

いわき地域ものづくり中小企業等DX研究会は今回が1回目だったのですが、残りの3回は11月4日(金)、12月中旬、1月中旬の開催を予定しているそうです。いわき市近辺にお住まいの方は「いわき地域ものづくり中小企業等DX研究会」にぜひ参加してみてください!

11月4日(金)に開催されるイベントにはこちらから参加申し込みが可能です。

「いわき地域ものづくり中小企業等DX研究会」第2回セミナー

(データのじかん編集部 田川)

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