さて、ここではじめてCDというソフトとしての音楽の売り上げです。
堂々の1位を獲得した安室奈美恵「Finally」ですが、安室奈美恵のデビュー25周年&引退を記念した3枚組52曲入りのオールタイムアルバムということで、従来のファンのみならず昔ファンだったユーザーや報道に触発されて購入するユーザーも多かったことが勝因ではないでしょうか。
注目すべきはSNS未使用という点。
前述のチャートのアーティスト達はSNSを通して、日々ファン達に文字や写真でメッセージを届けているのに対して、安室奈美恵はTVや雑誌などSNSが流行する前からあるプロモーション方法で今回の結果を残しています。
そのためかYouTube国内MV再生回数ランキングにおいては35位と、オリコンチャートとは打って変わった結果になりました。25年間トップを走り続けてきたアーティストでも、ここ数年でデビューした新人×新サービスを超えることは難しいようです。
CDシングルランキング1位は例年のごとくAKB48。
握手会券やツーショット撮影会券を特典にすることにより、買えば買うだけ好きなアイドルと触れ合える時間が増えるというまさに夢のような商品にCDが早変わり。
しかし、これまで何度も話題になっていますが、はたしてこれは「音楽」チャートに載るべきものなのでしょうか?現にSpotifyやYoutubeチャートでは両方とも圏外。曲自体に影響力があるとは言い難いです。
一方で、派生グループであり、同じ路線のマーケティング戦略を活用している乃木坂46や欅坂46はオリコンランキング、Youtube再生回数ランキング共に上位にランクイン。(欅坂46「不協和音」はYoutube再生回数ランキング5位、オリコンランキング8位。乃木坂46「インフルエンサー」はYoutube再生回数ランキング8位、オリコンランキング6位。)
どちらもダンスが話題になった作品であり、ビジュアルやダンスが売りのK-POPと同じジャンルで結果を残している数少ない国内アイドルとして活躍しており、勢いは新たな波に乗って増してゆくでしょう。
今回の記事で取り上げたランキングの数から分かるように、音楽の提供方法やトレンドの形は多種多様となってきています。それぞれの提供方法にマッチした音楽が存在しているため、今後もしかしたら、ある特定のアーティストが全分野で1位を取るなんてことはなくなるかもしれませんね。
国際レコード産業連盟(IFPI)の2017年のレポートによると、音楽録音物の収益は3年連続で拡大しており、ストリーミングサービスの収益が最大の収入源になったそうです。
国別の市場の大きさではアメリカに次ぐ2位を記録する日本ですが、ストリーミングサービスは前年比+8%とまだまだCDの需要が高く世界的に見ると特殊な音楽市場となっています。はっきりとした理由はわかりませんが、AKB勢の活躍や、レンタルCDの普及、ストリーミングサービスでの邦楽アーティストの反応の悪さ、が主な原因かも知れません。
今後このまま日本は独自の市場展開を見せていくのか、トレンドの形はどうなっていくのか、とても楽しみですね。
(坂本龍之介:シンガーソングライター)
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