2024年3月16日に北陸新幹線は福井県の敦賀駅まで延伸した。首都圏と北陸がより近くなり、人の流れにも大きな影響を与えることになるだろう。その一つが大学入学者数である。やはり、北陸の高校生は首都圏の大学を目指すのだろうか。2015年の北陸新幹線金沢開業の前後年のデータも参考にしながら、進学者数の推移を考察してみたい。
そもそも、敦賀延伸により、福井県と首都圏はどれほど近くなるのだろうか。今回の延伸により、恩恵を受けるのは福井県である。従来、北陸新幹線経由で東京~福井間は3時間27分だったが、延伸により36分短縮の2時間51分になる。東京~敦賀間も3時間58分から50分短縮の3時間8分になる。
ただし、東京~福井間は北陸新幹線経由の他に東海道新幹線米原経由も考えられる。参考までに米原経由だと東京~福井間は約3時間30分、東京~敦賀間は約2時間50分だ。実は北陸新幹線敦賀延伸後も東京~敦賀間は米原経由の方が速達性では勝っているのだ。
2015年の北陸新幹線金沢開業時による時間短縮の効果も確認しておきたい。開業前の所要時間は東京~金沢間が約3時間50分、東京~富山間が約3時間10分だった。2010年3月までは東京~金沢間には寝台特急「北陸」が存在した。
北陸新幹線金沢開業後は東京~金沢間が約2時間30分、東京~富山間が約2時間10分に。単純に所要時間だけ見ると、金沢から大阪よりも、東京の方が近くなったのだ。それだけ、北陸新幹線は北陸に大きなインパクトを与えたのである。
2015年北陸新幹線開業の前後で北陸3県(富山県、石川県、福井県)にある高校から東京都、京都府、愛知県内の大学への進学者数の推移を見ていきたい。資料として旺文社教育情報センターのデータを用いる。なお、括弧内の数値は県内大学進学者における割合を示す。
富山県では北陸新幹線金沢開業の影響があまりない2015年度4月進学者数のうち、東京都へは614名(13.4%)、京都府へは278名(6.1%)、愛知県へは395名(8.6%)だった。北陸新幹線開業後の2018年度4月進学者数は東京都が612名(13.3%)、京都府が228名(5.0%)、愛知県が329名(7.2%)。最新の2023年度4月の進学者数は東京都が580名(12.5%)、京都府が270名(5.8%)、愛知県が321名(6.9%)だった。
石川県は2015年度4月が東京都487名(8.9%)、京都府401名(7.3%)、愛知県288名(5.3%)。2018年度4月は東京都505名(8.9%)、京都府360名(6.3%)、愛知県260名(4.6%)。2023年度4月は東京都460名(8.1%)、京都府403名(7.1%)、愛知県229名(4.0%)だ。石川県は北陸3県の中で、最も県内への進学比率が高い。
福井県は2015年度4月が東京都289名(7.4%)、京都府413名(10.6%)、愛知県329名(8.5%)。2018年度4月は東京都248名(6.1%)、京都府429名(10.5%)、愛知県306名(7.5%)。2023年度4月は東京都292名(7.2%)、京都府517名(12.7%)、愛知県288名(7.1%)だ。福井県は関西圏に近いこともあり、北陸3県の中では京都府への進学者数が最も多い。
北陸新幹線金沢開業前後を比較すると、北陸から東京都への進学者数はそれほど変化していない。京都府に関しては、2016年度~2018年度にかけて富山県、石川県からの進学者数は減少しているが、2023年度は2015年度とそれほど変わらない進学者数を叩き出している。一方、愛知県への進学者数は減少している。これは北陸新幹線が関係しているのかどうか、わからない。
先行研究として、筑波大学の松尾和史氏ら3名による研究「北陸新幹線開通による 大学選択への影響に関する実証分析」を紹介したい。この研究では新潟県、富山県、石川県、長野県を取り上げ、北陸新幹線金沢開業前後の大学進学者の動向を分析している。その結果、沿線4県の大学進学者に占める各地域への進学者の割合において「県内に大学に進学する学生の割合が増加」とし、「北陸新幹線開通に伴う特異的な変化はほとんど見られない」としている。
関西難関私立大学「関関同立」のトップに君臨する同志社大学の県別入学手続者数も紹介したい。このうち石川県からの入学手続者数は42名(2015年度)→41名(2016年度)→27名(2017年度)→29名(2018年度)→29名(2019年度)→34名(2023年度)となっている。
同志社大学では2017年度に30名を切り、北陸新幹線の影響も考えられる。一方、2023年度は34名と30名以上を確保した。とはいえ、北陸新幹線敦賀延伸に関して、油断はできない。
一方、東京都から北陸3県への大学進学はクッキリと北陸新幹線の影響がみられる。東京都の高校から北陸3県内の大学への進学者数を見ていこう。
北陸新幹線金沢開業の影響があまりない2015年度は富山県17名、石川県40名、福井県17名だった。北陸新幹線金沢開業の翌年、2016年度は富山県41名、石川県58名、福井県13名になり、富山県への進学者数は2倍超となった。2018年度は富山県43名、石川県69名、福井県13名。2023年度は富山県46名、石川県87名、福井県14名と、東京都から北陸新幹線沿線の富山県、石川県への進学者数の増加傾向は続いている。
石川県にある金沢大学の入学者数を見ても一目瞭然だ。北陸新幹線開業前にあたる2014年度の東京都から金沢大学への入学者数は17名、2015年度は12名だった。2016年度になると23名に。以降、23名(2017年度)→41名(2018年度)→38名(2023年度)と、開業前と比べると2倍以上になっている。これは明らかに北陸新幹線の影響と考えられる。
一方、北陸新幹線が乗り入れない福井県の進学者数は横ばいだった。敦賀延伸以降は東京都から福井県への進学者数も倍増するのだろうか。
2023年度の東京都内高校の大学への進学者数を見ると、石川県は87名の21位にランクインしている。前後の県を見ると、19位が新潟県、20位が福島県、22位が秋田県、23位が滋賀県となっている。秋田県を除くと石川県と同じく首都圏から鉄道を使って3時間未満でアクセスできる。
一方、秋田県には公立の国際教養大学があり、国際系を志望する受験生に人気が高い。国際教養学部に所属する864名のうち、東京都からの学生は98名で約10%を占める。地域別だと関東が約30%を占める。金沢大学の場合、入学者数の比率は関東と甲信越地域を足しても23%だ。そのため、秋田県への進学者数は「例外」と考えていいだろう。
また、福井県への入学者数は14名で、42位に甘んじる。前後を見ると、40位宮崎県、41位島根県、43位三重県、44位鳥取県、45位香川県、46位佐賀県、47位和歌山県だ。いずれも、福井県と同じく(2024年3月16日以前)東京駅から新幹線でダイレクトにアクセスできない。
このように見ていくと、東京都から地方への大学へ進学する際、アクセスのしやすさも取捨選択の要素になっていることがわかる。
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