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ビッグデータ・IoT・AIの活用によって自動車の安全運転支援システム、インフラの保全、ものづくりロボットなどビジネスや生活に大きな影響が生まれています。ビッグデータを活用するためには大量のデータを分析する体制、特にデータサイエンティストの確保が欠かせません。しかし、データサイエンティストへのニーズが高まる中、その絶対数は不足しているのです。今回は不足するデータサイエンティストの確保や育成についてどう取り組めばよいかを考えてみましょう。
データサイエンティストにはデータの分析だけでなく、そこから新たな知見を導き出す能力が求められます。データ処理や統計学に関する知識はもちろんですが、豊富なIT知識、ビジネスの内容を把握して課題や予測モデルを導き出す能力、それを人に伝えるコミュニケーション能力も必要になるのです。そのためデータサイエンティストは企業の意思決定に影響する人材でもあります。
データサイエンティストへのニーズはますます高まることが予想されますが、その数は世界的に不足していると言われています。米国の調査会社ガートナーによれば、日本でも将来的には25万人ものデータサイエンティストが不足すると予想されています。求人募集を行なっても多くの応募は期待できず、また企業側でも応募者をどう評価してよいか分からないなどデータサイエンティストの確保には苦戦しているのが現状です。このデータサイエンティストの不足を解決する方法として注目されているのが、オープンイノベーションです。例えば「Kaggle」などのデータコンテスト・プラットフォームでは、コンペ方式で課題を提供しオンデマンドでデータサイエンティストを確保することもできます。
【引用元】・日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO57421630X10C13A7EA1000/
日本におけるデータサイエンティストの役割やポジションはまだまだ曖昧なことも多く、世界的には遅れているといえるでしょう。データサイエンティストとデータエンジニアとの境界も曖昧で混同して使用されることもあります。またビッグデータを活用する企業においても、データを分析すると役に立ちそうだがと、ビッグデータ活用で何を得ようとするのかが明確になっていないことも多いのです。
そのため、求められるスキルも曖昧で本来の分析能力よりも一見仕事ができそうと感じられるコミュニケーション能力やビジネスセンスの方が高く評価される傾向もあります。このような分析能力の低いデータサイエンティストを活用すると、最悪の場合誤った結果を導き出すことにもなりかねません。年収においても日本のデータサイエンティストの平均は655万円と米国の11万7000ドル(約1300万円)と大きな違いがあります。日本におけるデータサイエンティストの評価はまだまだ高いものとはいえないでしょう。
【引用元】
平均年収.jp http://heikinnenshu.jp/it/datascientist.html
Forbes 15 Data Scientist Jobs That Pay $100K Or More
データサイエンティストを育成しようという動きは世界的に高まっています。米国のGalvanize社では1年の課程でデータサイエンティストを育成し、履修者には工学修士号を与えるコースをスタートしています。Galvanize社はGoogle、IBM、Accenture社などが主なスポンサーで、このカリキュラムを終了するとすぐにビッグデータ分析の仕事に就くことも可能です。但し定員は30人と狭き門で、受講料も4万8000ドル(約530万円)と高額なものになっています。
日本では産学連携で「データサイエンティスト協会」が発足しました。データサイエンティスト協会は、データサイエンティストに必要なスキルや知識を定義し、育成のカリキュラム作成、評価制度の構築などを行なっています。またスキルによって「見習い」「独り立ち」「棟梁」「業界を代表する」のスキルレベルも設定しています。データサイエンティストに求められるスキルをチェックするリストも公開しており、上記のどのレベルにあるのかを判断することが可能です。また2017年5月からは「データサイエンティスト養成講座」を開講してデータサイエンティストの育成に努めています。
【引用元】
Galvanize http://www.galvanizeu.com/
データサイエンティスト協会 http://www.datascientist.or.jp/
ビッグデータを活用するためには、分析だけできればいいというものではありません。ビッグデータ・IoT・AIの活用をすすめるためには、どんな人材が求められるのかを考えてみましょう。
まず元になるデータを集めて整備する人材が必要になります。豊富なIT知識を持つ職人的な人が当てはまるでしょう。次にデータを保守・運用する人材も必要です。定期的にメンテナンスを行ない、トラブルに対応し、外部からの攻撃を防ぐセキュリティ対策もできる人が望ましいでしょう。さらにデータを元に価値ある知見を導き出すことのできる人材が重要です。分析に伴う数学的・科学的な知識だけでなく、マーケットの状況を理解し、仮説モデルを創出して前向きに実験のできる人が当てはまるでしょう。社内調整や交渉も必要になるので、高いコミュニケーション能力も求められます。ビッグデータを効果的に活用するためには、このような人材の確保・育成がこれまで以上に重要になるでしょう。
日本でもデータサイエンティスト不足について国家戦略として議論されています。2015年に行われた「ビッグデータの利活用に係る専門人材育成に向けた産学官懇談会」において、データサイエンティスト育成の必要性と我が国の課題が議論されました。
これによると産業界ではデータサイエンティストのニーズが高まっていますが、理工系の学生の数が少ないうえに大学での教育は数理統計に偏っていると指摘されています。データサイエンティスト育成の目標として、育成レベルと1年間の育成人数も発表されています。
専門的な能力を持ち、自らのイニシアチブで高度なデータ分析・問題解決能力を発揮する「独り立ちレベル」が5000人、データサイエンティストのチームを率いて組織におけるビッグデータ利活用を先導できる「棟梁レベル」が500人となっています。これを達成するための具体的な施策として、大学での基礎教育、全国的なデータサイエンスに関するコンテストの実施、社会人対象プログラムの提供などが発表されています。
【引用元】
文部科学省 (PDFファイルが開きます)
「独り立ちレベル」や「棟梁レベル」のデータサイエンティストを育成するための効果的な方法として、コンテストを通じた実践教育が考えられています。産学が一緒になり、PBLで実データを分析し様々な課題を経験することで育成しようというものです。
国内ではデータサイエンティストのチームを率いることのできる「棟梁レベル」が圧倒的に不足しており、最先端の手法をPBLで実際に経験することで「独り立ちレベル」からのステップアップにも効果が期待されています。データコンテスト・プラットフォーム「DeepAnalytics」では様々なコンテストが行われており、人材採用を目的としたコンテストも開催されました。海外においてもデータ分析コンテストは注目されており、「Kaggle」では人材採用を目的としたコンテストも行われています。また「Alibaba Group」では学生向けのコンテストが開催され、オープン形式での人材採用として活用されています。
オープンイノベーションによってビッグデータに関わる人間の働き方も大きく変わってきています。どこにいてもネットですぐに繋がることができるため、打ち合わせや進捗状況の確認のために同じ空間にいる必要はなくなりました。自宅はもちろんのことコワーキングスペースなどで仕事をすることも可能です。時間に縛られることもなく家族とゆっくり過ごす時間や育児の時間、趣味に没頭する時間を作ることもできます。
今後、オープンイノベーションにより、社外の人間とチームを組んで仕事を進めるというスタイルが増えていくことが予想されます。ビッグデータの活用は企業の枠や国境を超えたオープンイノベーションによってますます加速していくでしょう。
お話をお伺いしたDataLover:
齊藤 秀(さいとう・しげる)さん
株式会社SIGNATE(シグネイト)
代表取締役社長CEO/CDO
十数年にわたりバイオ・ヘルスケア領域を中心に幅広い業種のデータ分析・共同研究・コンサルテーション業務に従事。 2013年2月 日本初のデータ分析コンペティションサービスを設立。 2013年12月 株式会社オプトにてAI/ビッグデータ研究開発組織、データサイエンスラボ設立。2018年4月 株式会社SIGNATE(シグネイト)を設立。代表取締役社長CEO/CDOに就任。
SIGNATE(旧DeepAnalyitics)(https://signate.jp)にて、多数の企業・行政のデータ活用コンペティションを実施。 様々なデータサイエンス・AIプロジェクトにおいて、企画・データ取得・分析・モデリング・運用まで幅広く支援、AI人材育成・採用サービスを展開。
【政府のデータ活用やAI人材育成等の委員活動】
経済産業省 政府衛星データのオープン&フリー化及びデータ利用環境整備に関する検討会 委員 未来投資会議 第4次産業革命 人材育成推進会議 第1回講師 自民党教育再生実行本部 第2回成長戦略のための人材教育部会講師 【AI関連の研究・教育活動】 筑波大学人工知能科学センター 客員教授 理化学研究所 革新知能統合研究センター 客員研究員 国立がん研究センター研究所 客員研究員
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