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オープンイノベーションのその先へ。運輸事業者の課題解決の手法としてのオープンイノベーション2.0。

         

前回の記事「データの力で運輸業界を救う!運輸デジタルビジネス協議会とは?」では、運輸デジタルビジネス協議会(TDBC)が設立に至った経緯を紹介したが、運輸業界が抱える様々な課題にはITの力だけでは解決できないものも多い。

デジタルな手法に頼るだけでなく、教育や企業間の連携、一般向けの認知活動など、アナログな要素も非常に重要だ。TDBCは、すでに様々な取り組みを行っており、これまでの活動成果は4月25日に開催される「TDBC Forum 2018」で発表される予定だ。

「TDBC Forum」は去年に引き続き、「運輸事業者の課題をともに解決」がテーマとしている。課題の解決に向けて一つの鍵となるのが、「オープンイノベーション」という概念だ。それも、これまでのオープンイノベーションとは少し異なる「オープンイノベーション2.0(OI2.0)」と呼ばれるものがTDBCの活動には該当する。 

この記事では、TDBCの活動をより詳しく紹介すると共に、従来の「オープンイノベーション」と「オープンイノベーション2.0」の違いについて説明したい。

そもそもオープンイノベーションとは

オープンイノベーションは、2000年代初頭に米ハーバード・ビジネススクールのヘンリー・チェスブロウ(Henry W. Chesbrough)博士によって提唱された概念だ。

企業が社内リソースだけでなく、他社や大学、公的研究機関、社会起業家など、広く社外から技術やアイデアを集めて組み合わせ、革新的なビジネスモデルや製品・サービスの創出へとつなげるイノベーションの開発方法論と言われており、基本的にはそれを推進したい企業を中心にネットワークが構築される。関係としては、実現したい企業1に対し、外部が複数(n)社との1:nとの関係と言う事ができる。

例えば、デンマークに本社を構えるLEGO社は、「LEGOをより面白くするのがLEGO社員である必要は無い」、「消費者の一部はクリエイティブなアイデアを持っており、それを共有したいと考えている」という発想のもと、誰でもアイデアを共有できるサイト「LEGO Ideas site」を開設している。このサイトでは、共有されたアイデアを評価することもでき、1万人以上が「良い」と評価したアイデアはLEGO社によってレビューされ、実際に商品化される場合もあるという。(商品化された場合、提案者には売り上げの一部が支払われる。)

TDBCのワーキンググループ活動の場合には、課題を解決したい企業がn社あり、さまざまな技術やソリューションを持つ企業もn社という、複数対複数の関係性というところが一般的に言われるオープンイノベーションと異なっている。

もともと、TDBCの活動は「オープンイノベーション」であることを重視していたわけではなく、一般的な用語として「マッチング」や「オープンイノベーション」という言葉を使ってTDBCの活動を説明してきた。

だが、最近では、オープンイノベーションをさらに進化させた「オープンイノベーション2.0」という概念が提唱され始めている。TDBCの活動は、どちらかと言うとこちらに当てはまる。では、オープンイノベーション2.0は従来のオープンイノベーションとどう違うのだろうか?

オープンイノベーション2.0と従来のオープンイノベーションの違い

オープンイノベーション2.0の定義は、JOIC(オープンイノベーション協議会)が公開している「オープンイノベーション白書 初版」に掲載されている。

従来のオープンイノベーション(オープンイノベーション1.0)は、前述したLEGOのケースのように「研究開発効果の向上」や「新規事業の創出」を目的とした共同開発を指す。一方で、オープンイノベーション2.0は、不特定多数の参加者による「社会的な共通課題の解決」を目的としている。TDBCの活動は、業界全体の共通課題の解決を目指すものであり、まさにこれに該当する。

(出典: オープンイノベーション白書 クリックするとPDFが開きます)

例えば、「交通事故の撲滅」のワーキンググループでは、運輸事業者だけでなく社会的な共通課題である交通事故をテーマに、タクシー事業者やトラック事業者などの複数の事業者とITなどのサポート企業が参加して取り組んでいる。

このワーキンググループのリーダーを担当しているフジタクシーは、事故の履歴やヒヤリハットの映像を分析し、乗務員の交通安全教育に活かすことで、2年間で事故件数を25%削減(2013年比)し、その後も継続して成果を出している。これは、国土交通省中部運輸局が主催し、2015年9月に開催された「自動車防止セミナー2015」で事例として紹介された。

今回、ワーキンググループでは、この実績のある仕組みをさらに改善し、他社でも使用できるテンプレート化することを進めている。まずは、タクシー事業者向けとトラック事業者向けのテンプレート作成に取り組んでいる。今後はメンバー以外の他事業者での実証実験を実施し、協議会のテンプレートとして公開する予定だ。

また、AIを使った取り組みも行っている。この取り組みでは、既に設置されているドライブカメラの映像を利用し、運転中のスマホ使用などの危険行為を検知する。複数の事業者が既に実証実験を行っており、実用化に向けた準備が進められている。この取り組みも、ワーキンググループに参加しているドライブカメラのメーカー、ソリューションベンダー、AIなどデータ分析に強みをもつ企業など複数の企業が、共通課題を解決するために連携することで実現している。

これは、事故発生件数を減らす、という「社会的な共通課題の解決」を目的とし、業界全体で協力して行う取り組みであり、オープンイノベーション2.0の事例と言えるだろう。

このようなTDBCの活動は、自然発生的ではあるが、イノベーションや課題の解決方法としては正しい方向にあるのではないだろうか。

各ワーキンググループの活動の内容や成果については、前述の通り、4月25日に行われる「TDBC Forum 2018」で発表を予定している。

イベント名TDBC Forum 2018
期日2018年4月25日(水) 13:00~(受付、展示は12:00開始)
会場ベルサール秋葉原(JR秋葉原電気街口3分)
東京都千代田区外神田3-12-8住友不動産秋葉原ビル
定員450名
参加費参加費無料 ※事前登録制
プログラム(予定)・ご挨拶 国土交通省より
・ラストワンマイルインタビュー(作家 楡 周平 氏)
・ワーキンググループ成果報告
・特別講演 Mobility-as-a-Service(MaaS)車の所有から移動サービス化へ
申し込みURLhttps://unyu.co/forums/2018.html

 

執筆者:小島 薫(コジマ カオル)
ウイングアーク1st株式会社 ビジネスプラットフォーム開発室室長


運輸デジタルビジネス協議会 事務局長として協議会の設立に携わる。

 

 

 
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