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昨今、日本では少子高齢化による労働人口の減少や、働き方改革の進展により、これまで以上に生産性の向上が求められています。
生産性を数字として見える化したものが、生産性指標です。
この記事では、生産性指標についての基礎知識と、代表的な4つの業界(製造業、ソフトウェア開発、建設業界、コールセンター)で用いられている指標について説明します。
まずは、生産性の定義とその代表的な指標の考え方について見ていきましょう。
・生産性の基本計算式
生産性は、産出量(アウトプット)を投入量(インプット)で除して計算します。
産出量は、工場であれば実際に生み出された物の量を当てはめることもあります(物的労働生産性)。しかし、企業活動においては生み出された付加価値である粗利益(円)を産出量として当てはめることが一般的です(付加価値労働生産性)。
この記事では、特に別の定義がない限り、産出量を付加価値(粗利益)と定義して説明します。
投入量は、生み出す上で投入した労働力を人件費(円)で、機械設備などの資本力を有形固定資産の金額(円)で当てはめることが一般的です。
・労働生産性の計算式
労働生産性とは、投入量のうち労働力に着目し、労働者1人がどれだけ生産できるかを表す指標です。
労働生産性(円)=付加価値額(円)÷従業員数(人) |
例えば、1か月あたり粗利益2,000万円を生みだす工場において、スタッフの総数が100人だった場合、1人20万円の付加価値を算出できているということになります。
・資本生産性の計算式
資本生産性とは、所有している資本1単位あたり、どれだけ生産できるかを表す指標です。資本には、土地や、生産に関する機械設備などの有形固定資産が当てはまります。資本を有効活用できているかがわかります。
資本生産性(円)=付加価値額(円)÷有形固定資産(円) |
例えば、1年間あたり付加価値額2,000万円を生みだす工場において、工場の建物や設備の投資金額が3億円だったとします。この場合、この工場の資本生産性は約6.66%ということになります。
生産性の指標は、業界や企業により異なります。それは、生産工程においてそれぞれの企業が重視する箇所が異なることが理由です。例えば、機械製造業であれば、所有している機械を有効活用する資本生産性が重視される傾向にあります。一方、コールセンターであれば、出勤しているスタッフを有効活用する労働生産性が重視されます。
それでは、各業界において重視されている生産性指標についてそれぞれ見ていきましょう。まずは、製造業において利用されている生産性指標を紹介します。
製造業の生産性を向上させるメリットやその際の着目ポイントなどを解説 | BizDrive(ビズドライブ)−あなたのビジネスを加速する|法人のお客さま|NTT東日本 (ntt-east.co.jp)
製造業においては、工場で行う作業の無駄をいかに省くかというのが重要です。また、有形固定資産である機械設備をいかに効率よく利用するかというのも重要となります。
製造業では、以下の生産性指標が用いられます。
・労働装備率
生産における、1名あたりの設備投資額を指します。
多いほど、一人当たりの設備投資額が多いことを意味します。製造業においては、高い方が望ましいと言えます。
労働装備率(円)=有形固定資産(円)÷従業員数(人) |
・資本生産性
前述した資本生産性も、固定資産を活用できている指標としてよく用いられます。
製造業で生産性を向上させるには、各機械設備の稼働率をなるべく100%に近づけ、休んでいる状態がないようにすることが重要です。
例えば、最適な製造ラインの再検討や、ロボットの導入により人がする作業の削減、IoT導入により設備の状況を可視化することなどが挙げられます。
次に、ソフトウェア開発において利用されている生産性指標を紹介します。
ソフトウェア開発では、複数のエンジニアが協力しあって、一つのソフトウェアを開発します。そこで必要なのは、エンジニア一人ひとりがきちんと成果をだしているかという指標です。その点で、労働力に着目した指標が用いられます。
ソフトウェア開発では、以下の生産性指標が用いられます。
・労働生産性
前述した労働生産性も、労働力を活用できている指標としてよく用いられます。
労働生産性(円)=付加価値額(円)÷従業員数(人) |
アウトプットである付加価値額については、売上や粗利益額、ソースコード量(SLOC)
やファンクションポイント量など、エンジニア特有のアウトプットにすることでより細かく生産性を確認することも可能です。
個々のエンジニアのスキルを伸ばし、より多くのタスクを効率的にこなせるようにすることが重要です。また、決められた納期に向けて、タスク管理を行うことも重要です。
例えば、エンジニアに対するOJT、OFFJTといった教育、タスク管理のアプリを用いた全体の進捗管理の見える化が挙げられます。
次に、建設業界において利用されている生産性指標を紹介します。
建設業界は、工事作業員(労働力)と重機など(資本力)の両方が重要になる業界です。
その上で、作業員が1時間あたりにどれだけの成果を出したかという指標がもちいられる傾向にあります。
建設業界では、以下の生産性指標が用いられます。
・物的労働生産性の計算式
物的労働生産性とは、投入量のうち労働力に着目し、労働者1人がどれだけの物を生産できるかを表す指標です。建設業界の場合は、実際に施工した物件数などが挙げられます。
物的労働生産性=生産量(個)÷従業員数(人)÷ 労働時間(h) |
例えば、1ヶ月において施工できた件数が100件、従業員数が10名、総労働時間が一人当たり8時間×5日間×4週間の160時間としましょう。100件÷10名÷160時間で、一人当たりが1時間に出した成果は、0.0625物件/人時と算出できます。
建設業界においても、やはり重要なのはどれだけ少ない人数で多くの物件を施工することができるかです。例えば、工程数の少ない工法の採用や、事前に現場での作業をなるべく少なくするなどの工夫が挙げられます。
ただし、建設業界においては、労働災害を防止するため安全についても留意しなければなりません。生産性と安全性の両立を図りましょう。
最後に、コールセンターにおいて利用されている生産性指標を紹介します。
コールセンターはお客様からの問い合わせに対して、どれだけ効率的に回答するのかというのが重要となります。そのため、生産性指標については、オペレーターがどれだけ早く対応できたかという観点のものが用いられます。
コールセンターでは、以下の生産性指標が用いられます。
・応答率
お客様からの入電数に対して、オペレーターが対応できた割合です。高いほど多くの入電に対応できたと言えます。
応答率(%)=(応対件数(件)÷入電件数(件))×100= |
・平均応答速度
オペレーターが、お客様のコールを取るまでにかかった秒数を指します。少ないほど早く応答できていることを意味します。
平均応答速度(秒)=応答までにかかった時間の合計÷コールの総数 |
コールセンターはオペレーター一人の対応数を増やすことが生産性向上にとって重要です。そのため、オペレーターがしなければならない業務を削減・効率化する必要があります。
例えば、議事録作成AIを導入しオペレーターの通話後のメモを削減する、よくある質問についてはbotやお問い合わせHPに掲載するなどが挙げられます。
この記事では、生産性と生産性指標について、その基本的な定義と計算方法を解説し、製造業、ソフトウェア開発、建設業界、コールセンターという異なる4つの業界での具体的な指標とその計算式を紹介しています。生産性の向上は、各業界や企業の持続的な成長において必要不可欠な要素であり、そのための指標がいかに重要であるかを理解することは、経営者やマネージャーにとって有益です。各業界における生産性向上の施策や、労働力と資本力の最適なバランスを理解し、持続可能な発展を目指すための一助となることを期待します。
著者:野田頼政
早稲田大学文学部を卒業後、不動産会社で商業施設の開発、売買、賃貸を行う。中小企業診断士・FP1級・宅地建物取引士などを取得して店舗開発などを支援するほか、不動産投資家として関西に6軒、関東に3軒の不動産を保有している。会社勤務や不動産投資の経験を活かし、ライター業にも勤しむ。
(TEXT:野田頼政 編集:藤冨啓之)
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