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Google成長の陰に「10x」あり。その効果や関連する「OKR」「ムーンショット」とは?

         

GAFA+M(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の勢いはすさまじく、2020年の4月には東証1部に属する約2,170社の合計を上回る時価総額約560兆円に達したことで話題となりました。

その一角であるGoogle(Alphabet)の社内文化のひとつが「10x」

本記事では「10x」のシンプルな効果や目標管理手法の「OKR」、その目指す先にある「ムーンショット」について解説します!

10x=「10倍以上の成長を目指せ!」という考え方

来期の目標を決める社内会議であなたが「10%の売り上げアップ」を掲げたとします。
Googleならば、そこにツカツカと上司が歩み出てこういうでしょう。

「うーん、いい目標だね。ただし、%が『倍』なら」

そう、「10x」とは「10を掛ける」ということ。
現在の状態に対し、10倍以上の成長を目指せという考え方です。

その効果としては、以下のようなものが挙げられます。

【1】イノベーションが強いられる


10倍の成果を達成するには部分的な改善や急場しのぎの残業をしたところで焼け石に水です。

必然、それまでにない破壊的イノベーションや革新的な持続的イノベーションが強いられることになります。

目標を掲げろと言われるとついつい現状の延長線上で達成可能と思われる“現実的な案”を掲げてしまいがちなのが人間です。10xは強制的にその思考の枠組みを外してくれるツールだと考えられるでしょう。

【2】脱“ポーズ”・脱“現状維持”が進む


「現実的な案」とセットで生じやすいのが達成のために“努力している”と見せかけるポーズです。現状維持に毛が生えた程度の目標を設定し、見せかけ的に”努力しているふりをする“という光景はみなさんも容易に想像できるのではないでしょうか。

目標管理を徹底すれば防げる事態かもしれませんが、管理者の負担は大きくなりますしそれでも「まずは現状維持」の意識が働くことは変わらないでしょう。

そこで「10x」がものをいいます。10倍の目標は主体的に大きな働きかけをしなければ達成不可能。必然的に現状維持よりも試行錯誤へ意識が向かうことになります。

【3】思考の枠組みを外してくれる


いうまでもなく10倍の目標達成によって得られる効果は大きなものです。
しかし、その達成のハードルもそのまま10倍になるとは限りません。

10%程度の成長を目標として掲げると、それまでのやり方に何をプラスするか、どこを効率化するかということが思考の土台となります。それは土台ですが、枠組みでもあります。改善の余地があまりないなかでギリギリの成長を目指すのは非効率的であり、長期的には停滞の原因となりかねません。

一方、10倍の目標達成のためには思考の枠組みを外し、新しいことに挑戦する必要があります。それにはクリエイティビティや勇気が求められることになりますが、取れる手段は無限に広がります。

結果として10%の場合と変わらないコスト・労力で10倍の結果が得られることもあるのです。

“60~70%を目指す「OKR」”が10xの前提

「10x」のメリットについては理解できたけれど、Googleのような高度な人材が集まる企業だからできるんじゃないか? 普通の起業で10倍なんて目標を掲げたら最初から諦めてしまって形骸化するか、さもなくばブラック労働化するのでは?など、実際の職場環境や働き方の事情を考えてこのように懸念を抱いた方も多いはずです。

確かに「10倍」をKPIやMBOなど100%の達成を前提とする目標管理において設定するのは現実感がなく思われます。

ここでご紹介したいのがGoogleやFacebook、Twitterなどで採用されている目標管理手法「OKR」です。1970年代に米インテルの元会長であるアンディ・グローブ氏によって提唱されたOKRが達成の指標とするのは目標の「60~70%」です。そして管理の対象となるのはチームの全員や全社など。個人の評価と目標を直結させないことで全体最適に向けた取り組みを促します。

進捗管理は毎月・四半期ごとなど短期間で行い、目標を見直すことも認められています。

OKRはObjectives and Key Results(目標と主要な成果)の略。動的かつ高いハードルに向かって、達成条件となる成果を積み上げることで、スタートアップ的な姿勢を失わず組織が一体となってゴールを目指すことができます。

10xが成立するのはOKRという高いハードル設定とチーム・企業単位での取り組みに適した目標管理手法が採用されているからでしょう。とはいえ、OKRの運用自体に深い理解や管理スキルの高さが必要ではありますが……。

日本政府も推進する「ムーンショット」とは?

10xのように現状からは考えられない高い目標を設定することを、人類初の月面着陸を目指したアポロ計画になぞらえて「ムーンショット」と呼びます。ジョン・F・ケネディ大統領が「月面に人類を着陸させ、無事帰還させる」という目標を発表した1961年5月25日、アメリカはソ連に宇宙開発において大きく後れを取っていました。しかし、目標の宣言がイノベーションを促進させ、驚くような成果をもたらしたというわけです。

ムーンショットはシリコンバレーでビジネス用語として広まり、インターネットやiPhoneがその代表例とされています。Googleでも研究開発組織X Labsを「ムーンショット」の創造を目指して設立し、自動運転車やネット構築向け気球プロジェクト、植物検査ロボバギーなどを発表しています。

日本政府もムーンショット型研究開発制度を設け、以下の7つの目標に挑戦する研究開発の推進を明言しています。

目標1: 2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現
目標2: 2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現
目標3: 2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現
目標4: 2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現
目標5: 2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出
目標6: 2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現
目標7: 2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現

引用元:ムーンショット型研究開発制度の概要┃内閣府

ムーンショットを狙うことは“無謀”ではなく“必要なこと”だ」という考えは世界的企業や政府の間でもかなり浸透しているようですね。

終わりに

「10倍の目標を掲げろ!」といわれると「絶対無理」「考えなしに言ってるだけでは?」と思ってしまうのが普通ではないでしょうか。

しかし、「10x」について深掘りすると、それは思考の枠組みを外し、人に変化をもたらすためのひとつの手段だということがわかりました。

もちろん場合によっては現実的な目標を設定することも重要ですが、自身やチームの思考のフィールドを広げるために、ぜひ一度は「10x」を試してみることをおすすめします!

【参考資料】
・GAFAMの時価総額、東証1部超え 560兆円に 近づく社会インフラ化┃日本経済新聞
・「10%よりも10倍のムーンショットを」:グーグル X責任者からの提言┃Wired
・大矢博之・岩本有平「グーグルの目標管理術「OKR」とは?3分で分かって明日から使える入門編」┃DIAMOND Online
・鈴木拓也「イノベーションを起こすGoogleの企業文化に根付く思考法「Think 10x」と目標管理法「OKR」」┃@DIME
・OKRとは?KPIやMBOとは違う目標管理方法┃エムタメ!
・OKRとは? 【Google、Facebookが使う目標管理ツール】KPI・MBOとの違い、導入・運用・目標設定方法について解説┃カオナビ人事用語集
・5月25日 「10年以内に人間を月に」 ケネディ米大統領が宣言┃日本経済新聞
・アルファベット傘下のムーンショットファクトリー、「X」の内実┃Wired
・ムーンショット型研究開発制度の概要┃内閣府

宮田文机

 
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