About us データのじかんとは?
ビジュアライズされた地図からマーケティング計画を練る、災害発生時のBCPを俯瞰的な視点から練り上げる……。
メタバースの世界が拡大しているとはいえ、まだまだ職場や自宅の存在する“土地”に根差して生活している我々にとって、地図データはときに非常に有用なデータとなります。
そこでこの記事で、有用な無料ツールとしてご紹介したいのが「QGIS」。その取得方法やメリット、簡単な利用法についてデモとともに解説いたします!
QGISとは、無料で使えるオープンソースのGISソフトです。
Windows、Mac、Linux、Unix、Androidなど、iOSを除く主要なOSのほとんどに対応しており、機能は有償ソフトにひけを取らない程充実しています。NHKや兵庫県西宮市など大手メディア・自治体でも活用されており、使いやすさ・教えやすさにも定評があります。
最新版とLTR(Long Term Release)版が用意されていますが、初心者の場合はバグ修正が長期的に行われており安定しているLTR版を選ぶことが推奨されます。
引用元:QGISダウンロードページのスクリーンショット(2022年4月29日)
まずは、ご自身の環境に合わせてQGISをインストールしてみてください。
それではさっそくQGISを使ってみましょう。
今回は、筆者の住む宮城県仙台市のオープンデータを活用し、地図上で地下鉄の路線図と高齢者向け優良賃貸住宅の配置を俯瞰してみます。
「QGIS Desktop」を立ち上げ、最初に表示されるのは下図のように何も読み込まれていない真っ白な画面です。
まずはデータセットを取得しましょう。
仙台市は『せんだいくらしのマップ』という地理情報システムにて、「交通機関マップ」や「ごみ・リサイクルマップ」「洪水ハザードマップ」などのオープンデータを誰もが自由に二次利用できる形で公開しています。
出典:せんだいくらしのマップ
今回はその中から「地下鉄駅」「地下鉄路線」「高齢者向け優良賃貸住宅」のshapeデータをダウンロードしました。
zipファイルを解凍すると、以下のように3つの形式のshapeデータが格納されています。いずれもQGISで取り扱うことができますが、今回は「SHP」形式で読み込みましょう。
以下の画像の赤い四角で囲まれたボタンをクリックし、「データソースマネージャー」を開いてください。ここでは文字コードを「UTF-8」に設定。さらに、ベクタデータセットの欄に「SHP」データのURLをコピペするか、右端のブラウズボタンで直接ディレクトリから選択して、データを読み込みます。
3つのSHPデータをレイヤ上に読み込むことで以下のように、仙台市の路線図と駅、そして高齢者向け優良賃貸住宅の関係性を重ね合わせて示すことができました。
しかし、これだけでは地図上での位置関係がわかりにくいですよね。
国土地理院の「地理院タイル一覧」から地図データを読み込みます。下記URLよりアクセスしてください。
URL: http://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html#seamlessphoto
「2.基本測量製海外で出典の記載のみで利用可能なもの」に含まれる「全国最新写真(シームレス)」を今回は利用しましょう。ここで用いられるのが、タイル形式の地理院データを読み込むための下記URLです。
URL:https://cyberjapandata.gsi.go.jp/xyz/seamlessphoto/{z}/{x}/{y}.jpg
「QGIS」画面左に表示されているブラウザ内の「XYZ Tiles」を選択し、「新規接続」をクリックしてください。
すると、下記ウィンドウが呼び出されますので、任意の「タイトル」と先ほどの「URL」を入力します。
OKをクリックすると、ブラウザの「XYZ Tiles」の下に「全国最新写真(シームレス)」が現れました。ダブルクリックして、「レイヤ」に追加し、ドラッグアンドドロップで最下部に移動させたのが、以下の画面です。
地図と重ね合わせることで路線図や施設名ラベルが少し分かりにくくなってしまいました。そこで各レイヤのアイコンを右クリックして「プロパティ」を呼び出し。「シンボロジ」タブで線の太さを変更したり、「ラベル」タブで“テキストバッファを描画”させたりすることでデータの見た目を整えましょう。
完成させた地図は自由に拡大・縮小し、またほかのデータを追加しながらマーケティングや都市計画などさまざまな用途に利用することができます。
QGISでできることとして、まだまだこれは序の口です。より専門的な学習教材は「GIS実習オープン教材」や個人のブログなど、Web上に充実していますので、自分の興味に従って遊びながら学びを深めていくことをおすすめします!
QGISの格納されたディレクトリを開くと、「GRASS GIS」というソフトもインストールされていることがわかります。
これは、QGISとはまた別のフリーGISソフトウェアで、QGISと連携するように最適化された形のバージョンがインストールされており、QGISSのツールボックスからGRASS GISを利用することもできます。
GRASS GIS単体でダウンロードしたい場合は、公式サイトより個別に手に入れましょう。ラスタデータ・ベクタデータの処理にまつわる機能が充実しており、衛星データの分析など独自の用途に使われる場合はGRASS GISがより適した場合もあります。
なお、ラスタデータはピクセルで構成され、拡大縮小により解像度の劣化が生じるデータ、ベクタデータは座標値を持った点で表現され、拡大縮小しても劣化が生じないデータを意味します。
フリーGISソフトQGISのダウンロード方法と概念、利用のはじめ方についてご紹介しました。本記事で取り上げたデモはまだほんの序の口であり、データを加工したり重ね合わせたり、位置同士の関係を分析したりすることでGISソフトウェアは本領を発揮します。
地図情報のオープンデータは国土交通省や国土地理院、地方自治体などから多数提供されているため、利用規約を守りつつ上手に利用していきましょう!
【参考資料】 ・GISとは┃国土地理院 ・QGIS初心者向け入門マニュアル 実践「災害データ」を地図で分析してみよう(取材ノート広げます)┃NHK ・GIS(地理空間情報システム)の基本~できること、活用事例、GISデータ、ソフト~┃宙畑 ・© GIS Open Educational Resources WG, CC BY-SA 4.0(GIS実習オープン教材) ・GIS・地理空間情報活用への取組┃国土交通省
(宮田文机)
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