企業などが、パソコンの入力作業などの定型的な業務を自動化することをRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と言います。
RPAによって、ホワイトカラーの間接業務をロボット(ソフトウェア)に移譲でき、業務効率化が可能です。例えばヒューマンエラーが起こりやすい業務などにおいてRPAは威力を発揮します。ITの発達に伴い、中小企業でもデジタルデータを扱うようになってきたため、RPA導入を検討している企業が増えてきているのです。
しかしながら、管理者の異動などで管理者不在のRPAロボットが生まれてしまうことがあります。そういった、管理者不在のロボットは「野良ロボット」と呼ばれます。
野良ロボットが生まれてしまう理由としては、以下のようなことが考えられます。
まずは上にも書いた通り、管理者が異動したり退職したりするなどして管理者不在になってしまうことによるものです。これまで現場にいた、ロボットについて詳しい人がいなくなり、そのまま「野良化」してしまいます。
次に考えられるのは、ロボットの開発を外部委託したため、です。こちらも社内にそのロボットについて詳しい人がいないため、誰も管理することができず「野良化」していきます。
そして業務プロセスの変化に、ロボットの仕様が追い付いていないという理由もあります。業務に使うアプリが日々バージョンアップしていく中で、ロボットのほうもそれに対応していく必要があります。それに追いついていけない場合、そのロボットは「野良化」してしまう場合があります。
また、ロボットを導入してみたはいいけれど、コストや手間に見合わず、使用されないまま放置されてしまう、という理由も考えられます。
野良ロボットが放置されているだけなら問題はありませんが、勝手にデータ入力作業をはじめたり、間違ったアクションを取り続けたりすると脅威になります。売上データを間違った数値で入力したまま処理を進められてしまうと、企業経営にも影響を与えてしまいます。ロボットが野良化すると、データ管理にリスクが生じてしまう可能性もあるのです。
日本経済新聞では、このような悪さをする野良ロボットのことを「ブラックロボット」と呼んでいます。これこそが野良ロボットの最大のリスクと言われています。
野良ロボットを発生させないようにするためにはどうすればよいのでしょうか?
上記の日本経済新聞の記事によれば、現段階で野良ロボットやブラックロボットの問題が出ている事例はまだ多くないようです。RPAの導入をしている企業の多くはまだパイロット導入が終わった段階だから、というのが理由ですが、今後そのリスクが顕在化してくることでしょう。そのため、RPA導入時点で対策を講じる必要があります。
東芝情報システムは「Blue Prism」というソフトウェアの販売を始めました。
このソフトは各部門に分散しているRPAロボットを、管理サーバー側で一元管理することができるものです(参考記事)。ロボットの修正履歴の管理や、ロボットの更新に伴う新旧ロボットの比較ができ、これによって、各部門にはびこる野良ロボットの増加を防ぐことができます。また「NICE Advanced Process Automation(NICE APA)」というソフトウェアでは、社内のすべてのロボットをモニタリングし管理することができるので、自立的に動作する野良ロボットの発生を防ぐことができるそうです。こういったソフトウェアを導入するという方法もあるでしょう。
ロボットが業務効率化を担う一方、それが制御できなくなると暴走する。
小説の世界の出来事が、まさに起きようとしているのです。ロボットに支配されないよう、あらかじめロボットを統制するシステムを構築しておきたいものです。
(参考記事) 野良ロボットとは _ RPA biz 生保や銀行で急速に普及する事務作業「ロボット」 保守怠ると“野生化”の恐れも (1_3) - ITmedia ビジネスオンライン 東芝情報システム、野良ロボを防止できるRPAソフト「Blue Prism」を販売 _ IT Leaders やがてブラックに 職場の「野良ロボット」に要注意:日本経済新聞
(安齋慎平)
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