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ワインや美術品、映像作品など貴重な一点物の保管・保存に強みを持つ寺田倉庫は、1970年代から企業の文書管理保存サービスを手がけています。そんな同社は2010年以降、貴重書籍のデジタル化・保管を行う「T-ARCHIVE」や、クラウド上のデータでものを管理できるオンラインストレージ「minikura」といったユニークなサービスを始め、倉庫とデジタルテクノロジーを融合したソリューションを打ち出すようになり、顧客に新しい付加価値を提供することになりました。それはどのような効果をもたらすもので、デジタルテクノロジーやデータとどのような関係があるのでしょうか?
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文書管理を通じて提供される“余白”という付加価値

文書管理のニーズの移り変わりや、「文書」の形態の変化、そして紙・データの保管・管理により、ユーザー企業にもたらした効果を見続けてきた寺田倉庫は、保管業がもたらす付加価値に注目するようになりました。

「最初のきっかけは、文書保管の業務やコストを削減したい、オフィススペースを確保したいというニーズでした。紙文書はどうしてもキャビネットが必要なので場所を取りますし、電子化するにしても、スキャニング、データエントリー、システムの整備などさまざまな面でコストがかかります。しかもこれを内製化しようとすると、文書管理はコアの業務に付帯する作業であるという特性上、自分の本来の仕事ではないとか、きちんと文書管理しているのに評価の対象にならないといったさまざまな不満がでてきます。これらの問題を業務代行やシステムの導入支援などを通じて解消することで、ドキュメントの検索性が向上して業務効率がアップするのはもちろんですが、ユーザー企業にさまざまな“余白”が生まれ、より良い効果をもたらすようになりました」と飯嶋氏は説明します。その効果は、2つに大別できます。

災害やセキュリティなどのリスクへの対応が考慮された文書保管

1つは、これまで紙文書の保管場所に使われていたスペースに余白が生まれたこと。それが社内のコミュニティスペースなど情報交換の場になったり、カフェスペースを作ってコミュニケーションだけでなく福利厚生を向上させたり、そういった働く環境が整ったことで活気が生まれ、入社希望者が増えたりなど、「予想もできなかった良い方向に進んでいく企業をたくさん見てきました」と、飯嶋氏は語ります。

もう1つは、煩雑な業務から解放されたことで、社員の心に“ゆとり”が生まれたこと。「文書管理業務は煩雑な上、主業務と兼業している場合も多く、しっかりやろうとすればするほど精神的な負担になるケースが多いのです。『やらないといけない』という意識はあるもののなかなか手が回らず、それが余計にストレスになる。こうした業務を外部に一括で任せることで、ストレスが劇的に取り除かれ、時間も心にも余裕が生まれます」(飯嶋氏)

タイムスタンプ技術を活用すれば、データに安心も付与できる

最近は、デジタル文書の完全性を担保するため、タイムスタンプ技術分野でウイングアーク1stと協業しました。タイムスタンプとは、スタンプが付与された時点でデータが存在していたという「存在時刻の証明」と、その時点以降改ざんされていないという「非改ざん性」を保証する技術です。「小学生の頃、『いつ何時何分何秒、地球が何回まわった時にそんなこと言ったんだよ?』といった言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、タイムスタンプが実現するのはまさにこれに対する答えの提供です。また、時刻の証明と同時に電子文書は改ざんされていないことも確認できるようになり、安心して電子文書を運用できます。」(飯嶋氏)。
こうしてデータの作成日時や内容の改ざんが容易というデジタルの弱点をタイムスタンプによって解決することで、デジタル文書も紙文書と同等の原本性を保つことができるため、タイムスタンプは紙を電子化する際の必須ツールといえるかもしれません。
「ウイングアーク1stとの協業により、タイムスタンプを活用したソリューションの幅も広がってきています。電子帳簿保存法のスキャナー保存制度に対応した領収書や請求書など国税関係書類のペーパーレス化や、知的財産や営業秘密データの保護を、ウイングアーク1stが提供する電子活用ソリューション『SPA』上で実現できるようになりました。」飯嶋氏)

寺田倉庫のロゴには、余白を表す“「」“のイメージが組み込まれている

余白があれば、イノベーションが生まれる土壌ができる

寺田倉庫では、2014年より「余白創造」というコンセプトを打ち出しており、これには余白(スペース)から生まれる価値を最大限に高めるといった意味が込められています。

余白というのは、心理的な観点でいえば「余裕・ゆとり」と言い換えられます。「たとえばワインや美術品はそれ自体が心のゆとりにつながる品物です。BtoBの領域でいえば、必要な書類がすぐに検索・活用できたり、物理的にスペースに余裕が生まれたり、煩雑な業務から解放されることが、企業内に余裕やゆとりを生み出します。そして、それを作り出すのが、寺田倉庫の保管技術であり、デジタルテクノロジーなのだと考えています」と、飯嶋氏は語ります。そして、「こうした物理的・心理的なゆとりがあるからこそ、イノベーションが生まれる土壌が作れるのです」(同)とも。

その一例として挙げられるのが、寺田倉庫の拠点がある天王洲地域一帯の開発です。かつて倉庫街だった天王洲には現在、ギャラリースペース、ミュージアムといったアート関連施設や、倉庫空間を利用したクラフトビールが楽しめるレストランなどがあり、人が集い賑わうエリアへと変貌を遂げました。それが地域活性化という新しい付加価値創出につながっています。

保管・保存という技術が、デジタルテクノロジーと結びついた時、物理的・心理的な余白がより生まれるようになり、これまで埋もれていた貴重な知見を活用するチャンスも得られる。寺田倉庫の取り組みは、デジタルデータ活用の可能性を大きく広げるものになりそうです。

※1)業務を遂行する上で企業内外のコンピュータ・システムに散在する情報にアクセス可能なユーザー
※2)Information Worker Survey, IDC, June 2012

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