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筆者はベルリンに定住する前、中南米や東南アジアの国々を転々としていました。当時は頻繁に長距離フライトに乗っていたため、フライトをお得に予約できるタイミングの分析を重ねること幾歳月。(導き出した答えは記事の最後に)

しかしなぜ、同じ商品の価格が購入時期によって変動するのでしょうか?  それは販売元である企業がイールドマネジメントを行っているからです。私たちに身近な業界でも活用されているこの手法、仕組みを知っておくと様々なサービスをお得に利用できるかもしれません。

イールドマネジメントの基本的な仕組み

イールドマネジメントとは、簡単に言うと「顧客の購入意欲に合わせて商品の価格と量を調節し、収益を最大化する戦略」。具体的には、足元を見た高めの価格、通常価格、割引価格を販売時期によって使い分けます。

レベニューマネジメントとも呼ばれるこの手法は、ランニングコストに対する固定費(最低限の人件費や光熱費など)の割合が高く、売れ残った商品を次の日に持ち越せない業界で多用されます。代表的なのが、冒頭にも挙げた航空や宿泊などの旅行業界です。

需要が集中しやすい繁忙期や、価格を気にしないビジネス客向けには、足元を見た高めの価格を。

反対に、初動が鈍い閑散期や売れ残りが多い商品に対しては、「時間は自由になるが、価格にシビア」な人たちの購入意欲を刺激するため、早期予約割引や直前割引を設定します。

イールドマネジメントの発祥

イールドマネジメントが誕生したのは1970年代のアメリカ航空業界。規制緩和により市場に参入してきたLCCと対峙することになったレガシーキャリアが、値下げ合戦で疲弊せずに勝ち抜くために考案したのが、イールドマネジメントでした。

アメリカン航空は当時使用されていた座席予約システムの在庫管理機能を利用して、早期割引運賃「Super Saver」をローンチ。データを解析して空席数を予想し、それを前もって割引価格で売ってしまおうという素晴らしいひらめきでした。

他のレガシーキャリアも次々とこのアイディアを採用し、現在では世界中の航空会社の常識となっています。

イールドマネジメントの具体例

例えば100室あるホテルの○月X日の予約率が、1週間前で50%だったとします。ホテルとしては、このまま50室の空室で当日を迎えるより、宿泊客を少しでも増やした方が収益の増加に繋がるわけです。極端な話、固定費(人件費、光熱費など)を上回る価格で座席を販売すれば、収益にはなるのですから。そこでホテルはその日の宿泊料を大幅に値下げします。

反対に、繁忙期には足元を見た価格設定がされることも。航空業界を例に挙げると、2019年のゴールデンウィークは並びが良く最大で10連休となったため「航空券が軒並み高額に設定されて身動きが取れなかった」という日本の友人の嘆きを耳にしました。

身近なところでは、スーパーのお惣菜の値引き販売もイールドマネジメントの一種と言えます。お惣菜の原価率は約30%と言われており、値引きしてでも売った方が店の収益に貢献するのです。

最近の話では、コンサートのチケット価格が需要に応じて変動する「ダイナミックプライシング」という制度が導入される事例が出始めていますが、これもイールドマネジメントの具体例の一つと言えるでしょう。

賢いイールドマネジメントに欠かせない戦略とは

イールドマネジメントにおいて最も重要なのは、収益最大化のポイントを見極めることです。値引きのタイミングを見誤り、定価の1万円でも購入意欲があった人に7500円で購入されてしまっては元も子もないわけです。

値引きをすることで、またはしないことで生じる損失をできるだけ避けるためには、顧客属性や動向などのビッグデータ解析が欠かせません。イールドマネジメントの成功は、どれだけきめ細かいデータ解析ができるかにかかっていると言えます。

AIが活躍する分野ではありますが、解析結果への意味付けや紐付けといった作業には、まだ優れたマーケッターが必要とされるのではないでしょうか。

ちなみに冒頭の問いの答えは、「搭乗日が繁忙期なら予定が立ち次第、通常期なら約2ヶ月前の予約がお得で、閑散期なら直前に格安チケットが出る場合もあり」。この原則を押さえておくだけで、同じ搭乗日、路線、席でも30%ほど安くフライトを予約できるかもしれませんよ。

参考リンク:
1日3分で身につけるMBA講座
情報システム用語事典:イールドマネジメント

佐藤ちひろ

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