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働き方の多様化が進み、本業・副業でフリーランスとして働く方が増えた実感がみなさんにもあるのではないでしょうか。基幹統計として初めてフリーランスの働き方を把握した『令和4年就業構造基本調査』(総務省)によると、2022年に有業者のうちフリーランスが占める割合は本業の場合3.1%、副業を含めて3.8%でした。
そんなフリーランスの働き方を整備するための新しい法律が2024年11⽉1⽇施行の「フリーランス新法」です。
フリーランスに仕事を依頼する「特定受託業務従事者」の方も、フリーランスとして働く「特定受託事業者」の方も、本記事でその法律の内容を詳しく押さえましょう。
フリーランス新法は、フリーランスの権利保護や労働環境の整備を目的として2023年4月28日に成立し、同年5月12日に公布されました。「フリーランス・事業者間取引適正化等法」、「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」なども同様の法律を指します。
その法律は「特定受託事業者に係る取引の適正化」と「特定受託業務従事者の就業環境の整備」について定め、目的や用語などの定義について記述した「総則」、国や厚生労働委員会、公正取引委員会などの役割についての「雑則」、違反が生じた場合の「罰則」などとともに条文化されています。
企業とフリーランスやフリーランスとフリーランスの取引に関するルールを定めるパートです。以下のような内容で構成されています。
企業や個人(フリーランスを含む)がフリーランスに仕事を依頼する際、報酬などの契約内容を書面あるいは電磁的記録で明示することを義務化しています。これにより、契約条件の透明性が高まり、後々のトラブルを防ぐことができます。
原則として発注した成果物を受領した日から60日以内に支払期日を定め、支払うことを義務化しています。依頼者自身も業務の委託を受けている再委託の場合の期日は、依頼者が報酬を受け取ってから30日以内となります。
企業がフリーランスに対して不当な取引条件を押し付けることを防ぐための規定が設けられています。具体的には、以下の7つの行為が禁止されています。
1.フリーランスに落ち度がないのに受領を拒否すること
2.フリーランスに落ち度がないのに報酬を減額すること
3.フリーランスに落ち度がないのに返品を行うこと
4.相場に対して著しく低い報酬額を不当に定めること
5.正当な理由なく指定したものを買わせたり契約にない仕事をさせたりすること
6.自身のために金銭や労働などの経済上の利益を提供させること
7.フリーランスに落ち度がないのにやり直しや内容変更を強制すること
企業の社員に比べて整備が不十分なことが多いフリーランスの働く環境を整えるためのパートです。以下のような内容が記述されています。
・フリーランスの募集広告などで虚偽や古い内容を表示したままにすることの禁止
・一定の期間以上契約を結ぶフリーランスが介護や育児と業務を両立するための配慮の義務付け
・相談窓口などフリーランスに対するハラスメントを防ぐために必要な体制の構築
・一定の期間以上契約を結ぶフリーランスとの契約解除を少なくとも30日前までに告知することの義務付け
フリーランス新法が制定された背景には、日本の就業環境の多様化が進む中で、企業との契約において不当な取引条件や不安定な労働条件にさらされやすいフリーランスの保護を手厚くするという目的があります。
2021年7-8月、内閣官房、公正取引委員会、厚生労働省及び中小企業庁が実施したアンケートで「直近3年間の取引において依頼者から納得できない行為を受けた経験がある」と答えたフリーランスは39.2%でした。
引用元:フリーランス新法の概要と施行に向けた準備の状況について┃公正取引委員会
たとえば、2023年10月にインボイス制度が施行されたことで生じたのが、免税事業者に対する不当な値下げや価格交渉の拒否、免税事業者が課税事業者となることの強制といった問題が起こる恐れでした。
すでに下請法や独占禁止法によりそうした行為は不当とされる可能性が高いと見込まれるのですが、フリーランスに特化して安心して働ける環境を整備するため、2020年の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」と「成長戦略実行計画」などでルール整備の方針が盛り込まれ、今回の新法の成立にいたりました。
たとえば下請法では対象外となる、建設業法における建設工事や発注事業者が自ら用いる役務の業務委託もフリーランス新法では保護されます。
企業などの発注者に対して弱い立場となりがちなフリーランスを保護するための取り組みは、フリーランス新法の施行以前にも講じられてきました。
2020年11月には「フリーランス・トラブル110番」が厚生労働省、中小企業庁、公正取引委員会、内閣官房によって設置されました。同ダイヤルは東京第二弁護士会によって運営されており、電話あるいは問い合わせフォームから無料で弁護士にトラブルを相談可能です。必要な場合にはWeb会議や対面での相談も可能で、トラブルの解決にあたって和解あっせんや関連機関の紹介といったサポートも受けられます。
電話番号:0120-532-110
受付時間:9:30-16:30(土日祝日を除く)
問い合わせフォーム:https://freelance110.mhlw.go.jp/#contact-form
また、2017年に設立された「一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会」もフリーランスに様々なサポートを提供してくれる非営利団体として押さえておきたいところです。
同サイトに登録すれば無料でフリーランスに特化した情報が提供されるメルマガや仕事の獲得につながるデータベース、オンライン講習、コミュニティ、コワーキングスペースの割引などの権利などが提供されます。さらに、有料の一般会員(年1万円)には、賠償責任保険や弁護士費用保険、病気やケガの備える保険、キャリア相談や福利厚生、Zoomの限定ライセンスといったサービスも提供されるということです。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会「フリーランス白書 2024」によると、フリーランス新法について「名称について見聞きしたことがあるが、あまりよく知らない」という方は83.6%、内容を理解している、少しは内容について知っているという方は33.7%でした。
何を隠そう私自身、フリーランスのライターでありながらここまで述べた内容についてきちんと調べたことはありませんでした。自分で調べて動くことが不可欠なフリーランスだからこそ、受けられる支援や自らを取り巻く世の中の動きについてアンテナを高く張っておきましょう!
(宮田文机)
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