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一般社団法人データ流通推進協議会(Data Trading Alliance、以下DTA)がデータの利活用を促進する目的で主催するイベント「第6回マッチングSWG」が2019年1月29日、港区六本木にあるウイングアーク1st本社のイベントスペースにて開催された。
今回のイベントは、特定の種のデータを保有する企業とそのデータを活用したいと考える企業のマッチングを行うことを目的としており、今回で6回目の開催となる。
今回のイベントの口火を切ったのは世界初のIoTデータ流通プラットフォームであるエブリセンス社の真野氏。移動に関するデータの網羅性を高め、不特定多数の移動に関するデータを活用するオープン・テレマティクスについての説明を行なった。
自動車に搭載されたネットワーク端末を使い、交通情報や天気、ニュースのような多種多様な情報を取得することができるようにするのがテレマティクスだが、これはコネクテッドカーによる車の自動運転には欠かせない技術となっている。
ビッグデータの中でも移動データは特に需要が高く、ビジネス領域の話で言うと、コネクテッドカーなどの自動運転技術が注目されている自動車は近未来の中では技術革新の中心となる。
データ収集に使用されるシステム概要や計画中のプロジェクトの全貌が明らかにされ、参加者たちも真剣に耳を傾けていた。このプロジェクトに関する詳細はこのサイトで公開されている。
続いて登壇したのは、ソニーマーケティング株式会社の内藤氏。ソニーではテレビの視聴データを利活用する新事業を展開している。
国内におけるテレビのインターネット結線率は年々上昇しており、それに伴いテレビデバイスの視聴行動データはますます増加している。同社として、ユーザーの同意を得た上で蓄積されたデータをどのように活用していくのか、あるいは事業化していくのかについての説明を行なった。
ソニーでは視聴者の利便性向上、魅力的なコンテンツ作り、広告主のプロモーション最適化を目的に、広告事業者、番組制作者向けに視聴に関する統計データを分析するレポーティングサービス「TV Viewing Trend®」、さまざまな企業が保有する個人を特定できないデータと接続することで視聴データをさらに深掘りして活用できるデータ接続サービス「TV Viewing Connect™」を提供している。
なお、両サービスで扱うデータには個人情報は含まれておらず、また、社内および顧客企業側の個人情報との連携はできないよう措置を講じている。
このサービスの詳細はこちらのサイトで見ることができる。
最後に登壇したのは、京セラコミュニケーションシステムの山本氏。同社はAPIを経由したデータ配信サービスを提供しており、気象データを販売しているが、販売しているデータの特徴、気象データを販売するに至った経緯などについての説明を行なった。データの販売元から買い付けたデータのクレンジングを行い、RESTやJSONなど利用しやすい形式に加工したものを提供しており、初期費用なし、しかも使った分だけ課金されるシステムとなっている。
また、データを提供するに至った経緯として、気象業務支援センターで購入できるデータのフォーマットはGRIB2などであり、これを読み解くのに多くのリソースを費やす必要があったため、同じ問題を抱えている人たちがすぐに使えるデータを提供することには需要があるのでは、と考えお天気APIサービスを開始した、と説明した。
このサービスについての詳細はこちらで知ることができる。
ヒトやモノに関する大量のデータを保有し、そのデータを有効活用することにより巨大企業に成長を遂げたGAFAが活躍する昨今の世界ではデータ活用は不可欠な要素となっている。
1月に開催されたダボス会議に出席した安倍首相も「成長のエンジンはもはやガソリンではなくデジタルデータで回っている」と発言しており、データのやり取りが自由に行われることの重要性を訴えた。また同じ演説で安倍首相は、医療や産業、交通などのデータの流通は経済成長に繋がり、貧富の差の解消するための鍵となる、とも発言しており、データの利活用を促進させようとする政府の積極的な姿勢がうかがえる。
しかし、データの取り扱いには厳重な注意が必要であり、データを取り扱うデータ流通事業者は中立の立場でデータを提供することが求められる。そのため、データ流通事業者が自ら取引に参加することは禁じられている。データを利用する人、提供する人が安心できる環境づくりのためには、それなりのガイドラインやルールが必要だ。DTAはデータ提供者とデータ利用者が安心してスムーズにデータのやり取りを行うための技術的および制度的な環境を整備することを目的の一つとしている。
技術革新により各社が保有するデータの量は年々増加する一方だが、データを企業間で取引するためのルールや仕組みは定まっていない。取引方法もデータの形式もまちまちであり、入手できる情報も限定的だ。しかし、この環境が改善され、信頼できるデータが取引できるようになれば、提供側にもユーザー側にも大きなメリットがもたらされる。
例えば、ユーザー側は自社単独で収集することが困難なデータを購入し、活用することが可能となる。提供側も自社が保有するデータをマネタイズすることが可能となる。より多くのデータを入手できることで、より競争力のある優れたサービスや製品が生み出されるであろうことは想像に難しくない。
しかし、求めているデータが信頼できるものなのかどうかを判断する基準、あるいは求めているデータを誰が保有しているのかを調べる方法は存在していなかった。これらの問題を解決し、日本中のあちこちに点在するデータを企業や業界の垣根を超えたところで流通・連携させ、内閣府が提唱するSociety5.0、総務省が提唱するデータ主導経済、経産省が提唱するConnected Industriesを実現させるべく、2017年11月に株式会社インテージ、株式会社ウフル、株式会社NTTデータ、オムロン株式会社、エブリセンスジャパン株式会社、さくらインターネット株式会社、株式会社日立製作所、日本電気株式会社、富士通株式会社などが中心となり一般社団法人データ流通推進協議会(DTA)が設立された。
現在、129会員が所属しており、国の壁、競合他社の壁、業界の壁、産官学の壁などあらゆる障壁を乗り越えた協創を目指した活動を続けている。
データ活用が今後の世界での競争に不可欠であることは誰の目にも明らかだが、活用するためのデータをいかにして入手するか、あるいはそのための環境をいかにして整えるか、という部分に目を向けている企業や業界はまだまだ少数派だろう。
データの正規ルートが整備されることにより、どんなデータが誰からどのくらいのコストで入手できるのかが明らかになれば、データの利活用が進み、データの価値はより高くなるだろう。
P2P技術を使ったファイル共有が盛んに行われ、違法ダウンロードが横行していた2000年頃にiTunesが登場し、楽曲を入手するための正規ルートが整備されたことで多くのユーザーが楽曲を購入することを選択するようになったように、データの流通に関しても、機能的で安全でオフィシャルなインフラを整えておくことは極めて重要だ。その動きを率先するDTAの取り組みはデータ主導経済の実現という限定的なものではなく、日本の今後の発展にも大きく貢献することだろう。
データのじかんでは今後もDTAの取り組みに注目していきたい。
(データのじかん編集部)
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