M2Mという言葉を耳にしたことはありますか?
知っているという方でも「IoTとの違いは?」と聞かれると、はっきりとは答えられないのではないでしょうか?
家電、産業機器、自動車、自動販売機、エレベーター、ヘルスケア機器、各種計測器といった機械で活用されているM2M。メーカーのみならず、機械を直接・間接に仕事で用いる方は必ず押さえておくべき概念です。
本記事ではM2Mの概要やIoTとの違い、活用事例、通信網構築のポイントなど導入の基本知識をまとめてご提供します。
M2MはMachine to Machineの略で、“機械と機械が人を介さずに通信や制御を行う技術”を意味します。M2Mにより、機械単体では行えなかった他の機器へのデータの送信・蓄積や遠方への故障アラート、機械による機械の制御などが行えるようになります。
M2MとIoTの違いは、“インターネットへの接続を前提としているか否か”です。IoTはInternet of Things(モノのインターネット)の略であり、インターネットを介してあらゆるモノをつなぎ、データを収集・活用することが発想の中心にあります。
一方、M2Mはインターネットを介さないローカルな通信も含みます。またその目的はデータの収集や機械のコントロールの自動化であり、集めたデータを経営やマーケティングに生かすのはあくまで副次的なことです。インターネットを前提としないM2MはIoTに先駆け、1990年代後半から注目され始めました。
そこから現在までM2M市場の成長は続いており、矢野経済研究所によると、2018年度の国内市場規模は前年比7.5%増の2,010億円でした。これは同年度のPLM(製品ライフサイクル管理)市場規模(2,675億円)に迫る数値。今後も右肩上がりに成長し、2023年度には2.570億円規模となることが予測されています。
2018年度の国内M2M市場は前年度比7.5%増の2,010億円と好調を持続~LTE対応通信モジュールを中心として、主要3通信キャリア及びMVNOのサービスがともに堅調に推移~┃株式会社矢野経済研究所より引用
より具体的にイメージを深めるために、代表的なM2Mの事例を3つ見てみましょう。
JR東日本の駅構内で目にするタッチパネル式の次世代自動販売機。実は、気候や時間帯、カメラに映った人の属性で表示を変えたり、売上データや故障、購入者の情報をサーバに送ったりするM2M装置です。
導入により、在庫補充や修理を適切なタイミングで行えるようになる、POSデータをマーケティングに用いることで売上アップにつながる、といった効果が得られました。
自動運転システムはこれからのM2Mによるイノベーションのなかでも最も注目を集めるものの一つです。ほかのクルマや街燈、信号機とレーダーやカメラで得た情報を通信することで障害物の動きを予見し安全に走行が行えます。また、広域ネットワークと連携してビッグデータにアクセスすれば正確な渋滞情報や所要時間がキャッチできるといわれています。
建設機械メーカーとして知られるコマツの機械稼働管理システムKOMTRAX(コムトラックス)はM2Mの先進例として良く知られています。
元々は1998年ごろ建設機械の盗難防止に「GPSをつけたらどうか」という発想からスタートしたこのシステム。位置情報と合わせてエンジンやポンプの稼働データを取得することで、盗難が防げるのみならず市場調査や顧客サポートの充実につながりました。
2004年の中国の不況時には、機械の稼働がつぎつぎと停止していることを感知し、生産抑制に踏み切ることで在庫超過を抑制できたといいます。
M2Mを導入するにあたって重要なのがどのように通信網を構築するのか、です。
M2MではLTE、3Gといった携帯無線通信網やIEEE 802.11などさまざまな形で通信網が構築されますが、意識すべきは以下の3ポイントを満たすことです。
多数の機器をM2Mでつなげば通信端末の代金、通信利用料が増大します。機械の制御において安定稼働は必須条件。そして、充電することなく年単位で使用されることが想定されるM2Mではなるべく電力消費を押さえることが求められます。
そこで注目されるのがLPWA(Low Power Wide Area)。通信速度が遅い代わりに長距離・省電力で安定した通信が行えるIoT・M2M向けの通信技術です。LPWAにもCat.1、802.11.ahなどさまざまな規格が存在するため、実際に導入する際は通信速度や距離などそれぞれの違いをより深く調査しましょう。
情報通信白書29年版┃総務省より引用
M2Mとは何か、IoTとはどう違うのかといったポイントについてまとめてご紹介しました。
M2Mは、機械同士を通信させることでデータ活用や自動化の素地をつくってくれます。
興味を持った方はぜひ、IoT/M2M展の取材記事などデータのじかんの過去のM2Mにまつわる記事も参照してみてください!(リアルなイベントが今となっては懐かしいですね。。。)
(宮田文机)
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