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ChatGPTに代表される生成AIがビジネスや我々の暮らしを大きく変えようとしている。
そう感じている方は非常に多いでしょう。実際、帝国データバンクが2023年6月に行った調査(生成AIの活用に関する企業アンケート)によると、生成AIを「業務で活用している」企業は9.1%、「活用を検討している」企業は52.0%と、数多く存在します。
一方、同調査の内容には、そのうち37.8%で「具体的な活用イメージがわかない」と回答されているという報告も。
いったい、生成AIとは何で、具体的にどのように活用できるのでしょうか?
本記事で詳しく見ていきましょう。
生成AI(Generative AI:ジェネレーティブAI)とは、「テキスト、画像、プログラミングコード、音楽などさまざまなコンテンツを生み出すことができる人工知能」です。ここまで生成AIに注目や投資が集まるようになった発端は、2017年にGoogleの研究チームの『Attention Is All You Need(アテンションこそ必要な全てである)』という論文により、同時並列的な高速処理と文脈に応じた高品質な言語の生成が可能なニューラルネットワーク、「Transformer(トランスフォーマー)」が発表されたことにあります。
ニューラルネットワークとは、人間の脳を構成する神経細胞(ニューロン)を模倣した数理モデルであり、パラメーターを用いて学習データをモデル化することで、さまざまな情報処理を可能にします。トランスフォーマーは「Self-Attention(自己注意)」という手法により単語同士の関係を重みづけし、自然な文章の生成を画期的に前に進めました。
そして、現在の生成AIへの注目のきっかけとなった大きな出来事が「ある程度コンピューターに親しんでいれば誰でも使える高度なUIを備えたサービスの登場」です。『Midjourney』や『Stable Diffusion』など、テキストを入力するだけで画像を生成できる画像生成AIが2022年の夏に相次いで公開され、瞬く間に話題を呼びました。
さらに、2022年11月にはOpenAI社がトランスフォーマーをベースに開発した対話型チャットボット『ChatGPT3.5』を公開します。それまでのAIチャットボットとは一線を画した自然な受け答えや使いやすいUI、応用性の高さによりChatGPTは公開から2カ月後の2023年1月にユーザー数1億人を突破。OpenAI社と長期的パートナーシップを結ぶMicrosoft社が同年2月に検索エンジン『Bing』への生成AI導入を発表、Google社も3月に対話型AIサービス『Bard』を発表するなど、2023年8月現在まで群雄割拠の様相を呈しています。
生成AIはパラメーター数の増加や新たなアルゴリズムの開発によりまだまだ精度を高める可能性を持ち、これまでの「検索」のあり方やホワイトカラーを中心とする多くの職業の業務内容を変える可能性が指摘されています。このようなシンギュラリティ(AIが人間に追いつく技術的特異点)まで見据えた成長性と、使いやすさ・わかりやすさから一般のビジネスパーソンが触れ、理解できる機会が増えたことが、現在の生成AIを特別な存在に位置づけていると考えられます。
生成AIで実際にどんなことができるのか、具体的なツールとともに観ていきましょう
ChatGPT、Bard、Bingなどに代表されるチャットボット型の生成AIで情報収集を行ったり、文章を執筆させたり、アイディアを提案させたり、まとめさせたり、翻訳させたりといったテキストにまつわる使い方です。大規模言語モデル(LLM)の開発や日本語対応はどんどん進んでおり、公共機関や大手メディアなどでの導入事例も現れ始めています。
ビジネス向きの文章だけでなく小説やドラマの脚本などエンターティメントの分野への応用も進められており、ハリウッドで2023年5月から起こった脚本家組合のストライキには、AIにより仕事が奪われることへの懸念が影響しています。
Midjourney、Stable Diffusion、NovelAIなど画像生成AIは活用・普及を続けており、デザイナーやイラストレーターのツールとしてデファクトスタンダードである『Photoshop』や『Illustrator』をリリースするAdobe社も画像生成AI『Adobe Firefly』を発表しました。Bingからも画像生成機能『Bing Image Creator』を利用することが可能で、『Canva』や『Designmaker』のようなAIデザインツールも続々と登場しています。『Runway AI』のような動画生成AIも今後続々と登場し、精度を高めていくでしょう。
一方、AIの学習元データとして他者の著作物を用いることの是非や、既存のクリエイターの作品に酷似した絵柄や構図の作品が生み出されてしまう問題、脚本家組合と同時に立ち上がった俳優協会が訴える‟AI俳優に役者の仕事が奪われる問題”など、対処すべき課題も山積しています。
ChatGPT、Bard、Bingなどはテキストと同様に、プログラムコードも生成することができます。7月に公開されたChatGPTの公式プラグイン「Code Interpreter」(2023年8月現在有償ユーザー向け)は、プログラミングに特化しており、Pythonによるデータ分析や描画などもテキストによる指示で行わせることが可能になっています。また、Microsoft社も同社所有のコード共有・管理サービス『GitHub』上にてAIプログラミング支援サービス『GitHub Copilot』を提供しています。
また、Microsoft社はWord、ExcelをはじめとするOffice製品に特化したAI支援サービス『Microsoft 365 Copilot』のリリースも発表しています。
音楽生成AIサービスも『Mubert』『AIVA』『SOUNDRAW』など数多く存在します。AI利用はミキシング、マスタリングなど一部の用途ではすでに普及しており、コード進行やリズムなど作曲の根幹にかかわる部分、またAIシンガーによる歌唱もより発展し、広がっていくことになるでしょう。生成AIによるボイスチェンジャーを用いた実在の歌手を模倣した楽曲なども動画サイトなどではみられますが、ここでも著作権や著作者人格権にまつわる問題が発生しています。
生成AIの誕生は、産業革命レベルの衝撃だ──。
そう指摘する声は数多く存在します。確かに、文章の作成や論理的な助言といったこれまで人間が担っていた業務が、AIに代替される兆しがあるのは間違いありません。それは前述の脚本家や俳優、イラストレーターやデザイナーからの反発にも現れています。また、アップル共同創業者スティーブ・ウォズニアック氏、『サピエンス全史』著者ユヴァル・ノア・ハラリ氏などの著名人はAIの安全性や倫理にまつわるリスクに警鐘を鳴らしています。
とはいえ、IT関連のトレンドをハイプサイクルという独自のモデルでマッピングする、ガートナージャパン株式会社が『日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年』で「生成AI」を「『過度な期待』のピーク期」に位置付けていることも押さえておきたいところです。
引用元:Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を発表┃Gartner
メタバース、Web3など、我々の世界を変えるかもしれないといわれるテクノロジーはほかにも数多く存在します。「そのなかでも有力なもののひとつ」と捉える冷静な目も向けながら、少しづつでも生成AIを活用しはじめてみることをおすすめします。
2023年、世界中の期待を集める生成AIとは何か、なぜこれほどまでに注目を集めるのかについてご紹介してきました。野村総合研究所の発表によると2023年4月時点で日本はChatGPTの利用度合いが高い国として米国、インドに続く世界3位です。生成AIの開発では米国や中国といった他国に水を空けられているといわれる日本ですが、活用することで開かれる可能性や開発に与える良い影響もあるはず。
前述の通り、幸いツールは無料のものを含め、数多くリリースされています。「過度」にならない期待をよせて、ぜひ自らの手で生成AIを使ってみてください。
【参考資料】 ・小林 雅一『生成AI 「ChatGPT」を支える技術はどのようにビジネスを変え、人間の創造性を揺るがすのか?』ダイヤモンド社、2023 ・生成AIの活用に関する企業アンケート┃帝国データバンク ・Ashish Vaswani, Noam Shazeer, Niki Parmar, Jakob Uszkoreit, Llion Jones, Aidan N. Gomez, Lukasz Kaiser, Illia Polosukhin『Attention Is All You Need』┃Arxiv ・生成AI時代の人材育成(松尾研究室)┃経済産業省 ・東京都、チャットGPT開始 指示のコツ共有し活用促す┃日本経済新聞 ・Gartner、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2023年」を発表┃Gartner ・「GPT-4より強力なAIの開発を直ちに停止せよ」──公開書簡にマスク氏やウォズニアック氏が署名┃AI+by ITmedia NEWS ・日本のChatGPT利用動向(2023年4月時点)~利用者の多くが肯定的な評価~┃NRI
(宮田文机)
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