大勢の人の日常を一変させたCOVID-19のパンデミック。未曾有の事態の中で、これまで常識とされてきた価値観が変化を迫られています。
ビジネス面では、ウイルスの拡散を防ぐために人の外出や移動が制限されることから、あらゆる業界でデジタル化が加速しています。例えば高級飲食店。こうしたお店は通常、料理だけでなくサービスや店内の雰囲気を含めた体験を重視します。しかし外出自粛の動きが広まる中で、なんとミシュランの星獲得店までもが、アプリを利用したデリバリーサービスに登場しています。
ビジネスの主戦場がオンラインへ移行すれば、データエコノミーはますます強化される傾向になるでしょう。
データエコノミーとは、累積された情報から価値を引き出すことを目的とし、企業間のネットワーク上でデータを収集、整理、交換するグローバルデジタルエコシステムのことを指します。データは検索エンジンやSNS、オンラインベンダーや実店舗、決済システムやSaaSベンダー、その他の多種多様なIoTデバイスなどから集められます。これは文字通りデータを原動力とする経済システムで、2000年代初頭からGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)が牽引してきました。
データは今や新しい石油と言われるほど価値ある資源。GAFAのようなIT業界の巨人たちは、自社サービスを通じて収集した膨大なデータを分析し、マーケティングに活用したり、プログラムにフィードしてAI(人工知能)開発を進めています。
データの活用までの大まかな流れを図に示すと下記のようになります。
しかし、GAFAのビジネスは閉じたエコシステムのためモノポリーが起こりやすく、デジタル化が遅れている中小企業にダメージを与えると考える向きもあります。これを緩和するために、GDPR(EU一般データ保護規則)のような法律ではデータポータビリティ権(自分のデータを別の企業に移す権利)が定められています。
では、中小企業は法律に守られながら細々と生き延びるしかないのでしょうか? そんなことはありません。以下の4つのポイントに重点を置けば、ビジネスをデータエコノミーにシフトさせることは可能です。
価値あるデータはいたるところに遍在しています。
例えばTwitterやInstagram、YouTubeといったSNSでのトレンドは一般に公開されており、こうしたプラットフォームで1秒間に生成されるデータ量(表参照)は膨大です。こうしたデータを分析して自社ビジネスのマーケティングに活かすことは、どのような企業でも可能でしょう。
eメール送信数 | 2,763,771 |
Googleでの検索数 | 71,966 |
YouTube動画視聴数 | 77,134 |
ツイート数 | 8,342 |
インターネットトラフィック(ギガバイト) | 67,023 |
総データ(ギガバイト) | 289,351 |
ビッグデータ解析の効率化を推し進めるには、機械学習アルゴリズムの導入が欠かせません。これには優秀なデータサイエンティストが必要ですが、データサイエンティストの需要は高く、供給が追いついていない状態です。
ただ、機械学習の知識を身につけたソフトウェアエンジニアは一定数います。機械学習は実際のところソフトウェアですから、彼らが基本的な仕組みを知っていても不思議ではありません。また、ITビジネスアナリストも、訓練すれば分析的施行能力を機械学習に応用することができるでしょう。
実績のあるデータサイエンティストを即時に採用できない場合は、社内ですでに活躍している人材を中心に、機械学習の導入を進める手もあります。
データの保存や分析に使うソフトウェアを自社開発しようとすると、非常にコストと時間がかかります。また独自の閉じたシステムを構築してしまうと、のちに外部プログラムとの連携が難しくなることがあります。
SaaSのようなクラウドサービスを活用すれば、自動アップデートされる最新テクノロジーを低コストで即時に導入できます。クラウドサービスはデータドリブンなビジネスへの近道と言えます。
組織内では、個々のチームが異なるデータ処理システムを構築してしまうせいで、データの孤立化が起こりがちです。
これは大きな時間のロスに繋がるため、データや考察結果の取り込み、管理、操作、統合をスムースに行えるソリューションを、社内全体で共有しておく必要があります。
パンデミック下で必要不可欠になりつつあるデータエコノミーですが、ユーザーは自身の個人情報の扱いにも目を光らせておくべきです。
繰り返しますが、データエコノミーの原動力はデータ。ですから現状では、日常の行動のデジタル化が進んでいる社会ほどデータエコノミーが発展しやすいという理論が成り立ちます。例えば中国は他に類を見ないほどのキャッシュレス社会で、路上パフォーマーもeマネーで寄付を受け取るのだとか。
しかし、すでに8億人以上がキャッシュレス決済を利用している中国では、個人の購買行動が決済プロバイダ内によって記録され、信用スコア(クレディビリティ)に反映されます。ポイントが基準を下回ると、受けられるサービスが制限されたり、購入できない商品が出てくると言います。
データエコノミーの促進と監視社会の強化がイコールであってはいけません。各国が連携してデータ利用に関する国際法整備を進め、データエコノミーとプライバシーが共存するシステムの構築が待たれます。
【参考リンク】 ・The Data Economy, Your Organization, and You ・Data Economy: Radical transformation or dystopia? ・Why you should invest in Machine Learning
(佐藤ちひろ)
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