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文章要約AI「Elyzaダイジェスト」に解説記事やインタビュー、『桃太郎』を要約させてみたら……?

         

2021年8月にデモサイトが公開された東大松尾研発の文章要約AI「Elyzaダイジェスト」。’‘どんな文章でもAIが3行に要約してくれる”というキャッチーさと無料・ユーザー登録不要という手軽さから試してみた結果のSNS投稿が続出しました。

本記事では、解説記事、インタビュー記事、『桃太郎』などジャンルの異なる文章を要約させてみます。果たして、AIの文章翻訳精度はいかほどなのでしょうか……?

「解説記事」を3行に要約させてみた結果

まずは早速Elyzaダイジェスト(デモ版)を使ってみましょう。使い方は以下の通り簡単です。

1.フォームに要約したい文章を入力する
2.利用規約に同意する
3.「要約スタート」ボタンを押す

まずはElyzaダイジェストが比較的得意とするであろう「解説記事」 の要約です。

本サイトで2022年6月13日に公開した『今この瞬間に効果を発揮する「モーメント分析」とは?データの力で消費者の「真実の瞬間」に近づこう!』の「リード~本文」を入力し、要約させてみた結果が、以下です。

消費者の「〜したい」という欲求に着目した「モーメント分析」が主流になっている。購買やファン化といった重要な変化のカギとなるモーメントを分析。各「真実の瞬間」で商品を買うかどうか、あるいはこれから買い続けるかを判断する。

おお! これは、元の記事を執筆した本人の目から見てもかなり良く内容を捉えた要約です。やはり、そもそもわかりやすく伝えることを前提とした解説記事やニュース記事をElyzaダイジェストは得意としており、その実力はすでに実用レベルにあるといっても過言ではないでしょう。

インタビュー記事・イベントレポートの要約精度は?

それでは、会話形式で構築されている「インタビュー記事」はどうなのでしょうか?
今回も対象としたのはデータのじかんの記事。『ちょいバカ戦略―意識低い系マーケティングのすすめ―』(新潮新書、2019)著者である小口覺さんへのインタビュー記事を要約させてみました。

結果は、以下の通り。

「意識低い系マーケティング」について、識者が解説している。「意識が低い」価値観はネガティブに捉えられがちだが、意識低い系は重要だという。商品を売る際に「ちょっとバカ」な目線に立つことで「意識低い系マーケティング」と指摘。


こちらもかなり精度の高い要約となっています! 3文目の文法が少しおかしいのは気になりますが、会話形式の文章でもここまですっきりとまとめられるのは、驚きです。

ついでに「イベントレポート」記事も要約させてみましょう。

2019年5月8日~10日の3日間、有明・東京ビッグサイト青海展示棟にて開催された『第2回AI・業務自動化展』のレポート記事です。

結果は、以下の通り。

有明・東京ビッグサイト青海展示棟にて第2回AI・業務自動化展が開かれた。AIやRPAのような業務自動化ツールを利用したビジネスツール・サービスの展示やセミナー。AIと人間の未来を示唆する、ロボット秘書のような存在である。


おしい! 2文目までは少し文章に違和感はありつつもよく主題を捉えているのですが、3文目で文章のつながりが失われてしまいました。「AIと人間の未来を示唆する」「ロボット秘書のような存在」は「まとめ」段落の前に配置された文章のパーツであり、その配置から「重要だろう」という判断がAIによってなされたのでしょう。

桃太郎が鬼に抱きつく……? 昔話の要約はシュールな結果に

最後に、「物語」を要約させてみましょう。

まずは誰もが知っている日本の昔話「桃太郎」。著作権切れの作品を電子化して無料公開している青空文庫から、大正~昭和に活躍した児童文学者・演劇研究家、楠山正雄(1884~1950)氏の『桃太郎』を引用しました。

その要約結果は、以下の通り。

桃太郎が、鬼の家に連れて行かれたという。犬と猿を乗せて、おじいさんとおばあさんとはねのけていた。桃太郎は「鬼せいばつに行くのだ」と、鬼に抱きついていた。

これは……かなり、シュールな要約が生まれてしまいました。「せいばつに行くのだ」と言いながら鬼に抱きつき、おじいさんとおばあさんをはねのける桃太郎。こんな桃太郎があるなら、今すぐ全文読んでみたいですよね。逆に。

念のため、同じく楠山正雄氏により著された『浦島太郎』を要約させてみます。

浦島太郎というりょうしが、おとうさんおかあをやしなっていた。三百年も前に、浦島は舟にのってつりに出たまま帰ってこなかった。乙姫さまは、浦島を「おごりください」とお礼にあげていた。

こちらも要約結果は元のお話とは別物に。一文目は正しいのですが、浦島太郎の根幹ともいえる「亀を助ける」くだりがなく、主人公は家出。3文目に至っては意味が分かりません。

どうやら、物語の要約はElyzaダイジェストにとって解説記事やインタビュー記事よりも難しいようです。

Elyzaダイジェストの苦手から考える、AIと人間の付き合い方

Elyzaダイジェストを開発したELYZA社のCEO曽根岡侑也氏は、Webメディアの取材に対し、「小説特有の不確定な要素が混ざった文章(※)」や「文章の長さ」が要約の失敗の原因となったのではないかと考察を述べています。

Elyzaの自然言語処理は、膨大な文章を事前学習することでベースの国語力を鍛えるという従来とは異なるアプローチに取り組んでいると本サイトの対談記事にてELYZA CMOの野口 竜司氏は語っています。その結果人間らしくなめらかな文章の生成が可能になったとのことですが、小説の不確定な要素までカバーするにはまだ事前学習が不足しており、また文章が長くなることで処理能力への負荷も大きくなるため難易度が高まるのでしょう。

とはいえ、ビジネス文書や議事録の場合曖昧な表現はそもそも避けるべきであり、分量の問題は解決の方向性が見えています。今、機械翻訳の発展に応じて「AIが翻訳しやすい文」を書く能力が重要だといわれることがあるように、「AIが要約しやすい文」を書くこともスキルのひとつとなっているのかもしれません。

AIを人間に近づけることではなく、人間とAIが互いに歩みよってそれまで成し遂げられなかった効率や成果を生み出すことが重要なのです。

※…引用元:“3行要約AI”大反響 「走れメロス」の失敗報告に開発ベンチャーも注目 原因と対策を聞く┃AI+ ITmedia by NEWS

終わりに

Elyzaダイジェストによる文章の要約は、大規模言語AI「Elyza」の機能の一環です。Elyzaの機能は文章を「まとめる」以外にも、「書く」「読む」「話す」と多岐にわたっており、キーワードを入寮するだけで文章が自動生成される「ELYZA Pencil」のデモサイトも公開されています。

AIの進化を脅威と捉えず、上手く協力するために磨けるスキルはないか考えることが、これからの人材には求められるでしょう。Elyzaダイジェストで‟遊ぶ”こともそのために大いに寄与するはずです!

【参考資料】
・“3行要約AI”大反響 「走れメロス」の失敗報告に開発ベンチャーも注目 原因と対策を聞く┃AI+ ITmedia by NEWS
・【東京大学と考える新規事業】第3弾:東大松尾研スタートアップELYZA┃ミライの事業室

宮田文机

 
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