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スマートデバイスで実績を見ながら店頭施策に反映

そこで2015年頃、「SCRUM(スクラム)」というプロジェクトを立ち上げました。「本部担当」「ユニットキャップ」「店舗担当」それぞれが、自らの役割をしっかり果たし、ラグビーチームのようにSCRUMを組んで店頭で勝つという思いから生まれたプロジェクトです。その一環として、アサヒビールの本部営業や店舗担当がリアルタイムに店舗施策の結果を把握できるように、2017年2月から各店舗の売上実績、店舗担当への指示、活動内容などを共有するためのタブレット端末を配布し、システムとしてウイングアーク1stの「MotionBoard Cloud」を導入しました。売場にタブレットを持ち込んで、担当する店舗の売上実績、前月比、予算比などを確認しながら提案活動を行っています。Excelに慣れ親しんだ環境を考慮して、インターフェースはExcelの形式を反映させました。

従来は実績データを確認する頻度が限られていたため、本部からの指示や各店舗担当の工夫に頼った売場作りが中心でした。しかしMotionBoardによって、売場の実績をほぼリアルタイムに確認できるようになり、客観的な根拠に基づいた店舗への提案が可能になりました。店舗担当は自分が行った施策の成果が翌日に確認できるため、仕事のやりがいも向上し、モチベーションも高まっています。

MotionBoardの導入は、全国で多様な営業活動をしている方に対して、本人のスキルに加えて新しい提案の切り口を増やしていこうというのが狙いです。便利なツールを提供してデータを役立ててもらいたい一方、地域に溶け込んで独自に営業活動をしている店舗担当には、それぞれの個性を活かした売場づくりにも期待しています。

本部担当もオフィスでも、PCのMotionBoardから実績を確認しています。これにより上流から下流まで、情報共有のスピードが大きく上がりました。基幹システムから実績を見ることも可能ですが、MotionBoardで見られる数値データは最新の必要最低限の数千万件に絞り込んでおり、カテゴリー単位、商品単位、店舗単位でブレイクダウンしながらすばやく見ることができます。従来会議で配布していた紙の資料に比べると圧倒的に使いやすくなっています。実績を発表して終わりだった会議も、現在は実績ありきで会話ができるため、店頭活動に対してより突っ込んだ議論ができるようになりました。

アサヒグループでは各種データ分析も行っていますが、店舗担当に限っていえば、分析業務には重きを置いていません。MotionBoardは、シンプルに結果を表示する形にこだわって作りました。高度なシステムを作っても、分析したことだけで満足してしまうことが多いからです。それより、なぜこのような結果が出るかを理解する過程が重要で、その部分は教育やマインドセットで高めるべきだと考えています。高度な分析ツールで思考の過程がブラックボックス化されてしまっては原因の追及ができません。シンプルなツールだからこそ伝わることもあります。

活動内容の可視化で店舗スタッフのモチベーションが向上

一方、MotionBoardをSalesforceと連動させ、活動報告の内容を表示する項目も設けました。リーダーやマネージャーは、Salesforceを通して店舗担当に具体的な施策の指示を出します。店舗担当が毎日の活動をSalesforceに入力すると、活動報告として登録されてグループ内で共有されます。それまでリーダーやマネージャーは個々にあげてきた報告を見ながら実態を確認していましたが、現在はMotionBoardでほぼリアルタイムに活動内容を共有しながら新たな指示を出すことができます。店舗担当全員の行動が把握できるため、どこに課題や遅れなどがあるかが即座にわかり、フォロー体制も立てやすくなりました。店舗担当にとっても、自分自身のみならず他のスタッフの活動も可視化されたことにより、モチベーションをより高められるようになっています。

MotionBoardの導入が店頭での売上にどれだけ貢献したかは、複数のKPIを設定して効果測定を行っています。今まで見られなかった売上や店頭活動の実績など、店頭で確認できる情報量が圧倒的に増えていることを考えれば、効果が出ないわけがありません。流通に寄り添うことが重要となる店舗営業にとって、科学的根拠を持って対応できるメリットは大きく、流通との距離を縮めることにつながっていると思います。MotionBoardを使い始めてまだ1年足らずですが、今後も活用レベルを高めてさらなる進化を目指していきます。

お話をお伺いしたDataLover:清水 博(しみずひろし)さん

アサヒプロマネジメント株式会社業務システム部 業務グループ

国内システムインテグレーターでIT技術者として勤務。2007年、アサヒビール株式会社に中途入社し、業務用&エリア営業を担当。その後、アサヒグループホールディングス株式会社で国際事業企画・業績管理・M&Aに従事。その後、アサヒプロマネジメント会社に在籍し、現在は営業領域を主としたアサヒグループのIT企画を担当する。


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取材・TEXT:SEデザイン+木下真之 PHOTO:Inoue Syuhei

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