新人賞やトップセールス賞を毎年いただいてはいましたけど、特に最初の頃は毎日いろんな壁にぶち当たっていました。
例えば、お客さんが「これができたら買ってあげる」と言うので、AccessとVBAでその要望をかなえる簡単なアプリケーションを作ったんです。でも、買ってくれなかった。その時は「ひどいな」と思いましたけど、そういう経験を経て、どういうお客さんだと買ってくれないか、ということも分かるようになりました。
あと、案件数が多くなり忙しくて、相対的に緊急度が低いお客さんのことを待たせることが常習化してしまった時に、すごく怒ってくれたお客さんがいました。「久我さんはたくさん案件を持ってるかもしれないけど、僕にとって窓口は久我さんしかいないんだよ。対応してくれないと、僕の仕事が全部止まるんだよ」と。そんな風に怒ってくれる人ってなかなかいないので、とてもありがたかったですね。
とにかくたくさん動いて、経験しないと分からないことがいっぱいあるんですよね。理論はただの理論です。それをちゃんと自分で身に付けるには、やらない限り絶対無理だと思います。
壁にぶち当たりながらもずっとやってきたのは、もっとパフォーマンスを出せる人間になりたいと思い続けてきたからです。僕にとって「働く」というのは、人間にとってのすごく自然な行為なんですよ。原始時代にマンモスを追いかけていたのと同じで、生きるためには経済活動が必要ですから。そして、ただ働くんじゃなくて、仕事を通じて自分や会社、そして人類が進歩していくのが理想だなと。会社の中で一番になりたいとかではなく、とにかく昨日よりもパフォーマンスを発揮するにはどうしたらいいんだろう、そんなことを考えながらやってきています。
あとは、単純に楽しいんです。ちょっとしたことでも、なにか新しいものを生み出せたりするとすごく嬉しい。状況は常に変わって、次々にやってくる難しいことを乗り越えていくのが、終わりのないゲームみたいですごく面白いんですね。
今、仕事が楽しいと思える理由には、営業と開発が一緒に良いものを作っていくという、ウイングアークの文化もあると思います。
入社1~2年目の頃、開発は別の会社でやっていたんですけど、その会社の社長さんが僕みたいな若造の話をちゃんと聞いてくれました。「お客さんがこう言ってるから、こんな機能があった方がいい」と伝えると、さらに上の提案をしてくれるんです。「久我、お客さんの言うことは分かる。だけど、それじゃダメなんだよ。こういうことが起きる。だからこういうふうにした方がいいんだ」と。学ぶことがたくさんありました。こういう開発と営業の関係性は、今でも受け継がれていて、開発の担当はすごく現場に来てくれて、営業ももの作りに参加できているという喜びを感じられるんです。
振り返ってみると、僕は営業というよりも事業の成長に興味を持ってやってきたんですよね。営業は会社の事業を引っ張るためのトップラインを作る重要な役割であり、会社の未来を創る仕事です。営業のプレイヤーとマネージャーというのは、事業を引っ張っていくための役割の違いでしかないので、マネージャーになったときもモチベーションに変化はありませんでした。今のメンバーにも、なぜ営業が必要なのか、全体像の中で把握してほしいと、よく言っています。自分たちのプロジェクトを助けてくれる社内のメンバーがいて、お客さんがいて、そのお客さんの先にさらにお客さんがいて――、そう意識すると仕事が面白くなるし、その好循環を止めずにより良くしたいと思いますよね。
最近では、会社の働き方改革の企画の骨子にも携わりました。「働きやすい環境を作る」と言いますけど、ラクな環境を与えるというのは違うと思うんです。本当にパフォーマンスを発揮したい人たちが思いきり力を出しやすい環境、それこそが「働きやすい環境」だから、それを作ろう、という提案をしました。
例えば女性の場合、出産や子育てで時間をフルに使えないときもあるかもしれません。でも、それで能力が高い人を失ってしまうのはあまりにももったいない。そういう人が力を発揮できるようにもっていくのが合理的です。
この会社で働いていてとても楽しいんですけど、僕の理想とする状態は、まだ実現できていない。もっと可能性を引き出していきたいと思っています。
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