「名選手、名監督にあらず」と言いますが、ウイングアーク1stの久我 温紀さん(営業・ソリューション本部 副本部長)は例外です。
新人の頃からトップセールスの道を走り続け、マネージャーになると自部門の成績を常に向上させてきました。成功の秘密は、データの活用にあります。予算や実績だけでなく個々人の成績や進捗をことごとくオープンにするとともに、久我さんが培ってきた、勘に頼らない合理的な営業のノウハウを伝授。それによってメンバーの考え方や行動を変革したのです。
ウイングアーク1st株式会社
マーケティング統括部統括部長兼経営戦略担当
2004年新卒入社。
法人向けソフトウェアの営業に従事し、新人賞、最年少トップセールス、4期連続トップセールス。その後、営業企画部門リーダー、事業推進責任者を担当。東日本営業統括部長を経て2017年9月より現職(営業・ソリューション本部 副本部長)営業改革に取り組み予算未達成部門の全てを達成部門へと導く。インサイドセールス導入、ワークスタイル変革、組織ステートメント設計など幅広い分野で活躍。
2010年以降、会社全体の売上は伸び続けていたものの、東日本地域の営業部門の多くが、高い目標を達成できない状況が続いていました。
しかし、その中で久我さんが率いる部は2014年に独自の可視化システムを導入し、2015年以降は目標を連続達成してきました。そして、複数に分かれていた営業部門が徐々に統合され東日本営業統括部となり、久我さんが部長に就任。現在は60名超の人員で会社全体の約7割の売上予算を背負っています。
営業のベストプラクティスを実現し、意思決定を支援するダッシュボード「MAPPA」
※「MAPPA」はBIツール「MotionBoard Cloud」上での営業組織向けテンプレートのひとつ
久我さんの部門で導入した可視化システムの名称は「MAPPA(マッパ)」。
イタリア語で「地図」を表す単語ですが、目標達成までの道のりを示したものという意味と「営業プロセスを“真っ裸”にする」という意味が込められています。一般的には「ダッシュボード」と呼ばれるもので、部門全体、そして各個人の予算に対する実績や営業活動の状況(訪問件数や受注見込の案件数や金額など)がリアルタイムに、分かりやすいグラフで表示されます。
注目すべきは、このダッシュボードが管理職だけでなくメンバー全員に公開されているということ。情報の透明性を高めた結果、営業メンバーひとりひとりの自律性が高まったと、久我さんは振り返ります。
「例えば『部門としての今期の目標に、あと少し足りない』というとき、以前は『少し足りないから、何とかならないか』という話をマネージャーからしなければ、メンバーは動かなかったんです。でも、各自がリアルタイムに部門の状況を把握できるようになって、『あれくらいなら自分の持っている案件でなんとかなりそうだ』と、何も言わなくても自分から動いてくれるようになりました。データを可視化したことで、それが個々人にとっての道標になって、共通の目標に向かっていけるようになったのです」
リーダーが細かな指示を出してメンバーを動かす「コマンドマネジメント型」の組織と、メンバーが自らの判断で動き、リーダーはそれをサポートする「セルフマネジメント型」の組織では、短期的には同じ成果が出せたとしても、後者の方が圧倒的に価値が高いと久我さんは考えています。現場が指示を待たずにスピーディに動くので効率がよく、個々人の持っている発想が生かされ、組織の活性化と個々人のモチベーションも高まるからです。
「MAPPA」の導入以前も、データの共有をしていなかったわけではありません。
2006年にはSFA(営業支援システム)を導入し、それと併行してExcelで各案件の進捗状況を集計していました。
「以前は1~2週間単位でデータを集計していましたが、当然ながら現実の状況は刻々と変わるんですよね。Excelで受注見込みの数字を見て『予算達成できそう』と考えていたら、後からデータが更新されてポコッと数値が減っている。そこで慌てて『他に案件ある?』とみんなにメールや電話で確認してまわると、『まだ入力してないんですけど、実はあります』というのが出てくる……。今はリアルタイムに数字が見えるようになって、会議でもダッシュボードに表示されているものを正として話を進めるようになり、情報の活用度が上がった結果、みんなのデータ入力率も100%近くになりました」
Excelは最も優れた分析ツールの一つではありますが、入力や集計に時間がかかるExcelのデータは実際の状況との乖離がどうしても生じてしまうので、次の行動を判断する根拠としては中途半端なもので脱エクセルが必要だと感じていました。用途によっては脱エクセルすべきことがあると考えています。リアルタイムでデータが更新されるMAPPAは使い勝手がよく、マネジメントで実際に使われるからデータ入力の意欲も上がり、ますます使えるデータになっていったというわけです。
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