情報は爆発的な勢いで日々増えていっています。
実際、デルとEMCジャパンの調査では、2016年以降、日本企業が管理しているデータの「増加量」が588%だという衝撃的な結果が算出されたそうです。情報流通量が大きく変化する中、データやデータ分析に関する技術の分野のトレンドもまた、変革の時を迎えています。
そうした中、IT分野を中心にリサーチやアドバイスを行うガートナー ジャパンは、「2019年のデータ/アナリティクス・テクノロジ・トレンドのトップ10」を発表しました。
同社によると、このランキングに入っているテクノロジーは人材不足や情報の複雑化や流通量の爆発的な増加を前に、今後3~5年間にデジタル・ディスラプションをもたらす可能性のあるものばかりだということです。
そもそも「デジタル・ディスラプション」という言葉を聞き慣れていない人も多いかもしれません。
ディスラプション(破壊)は、ハーバード・ビジネス・スクールの教授である、クレイトン・クリステンセンの『イノベーションのジレンマ』のなかで紹介され、IT業界を中心に広く使われるようになりました。これは、テクノロジーの発展によってローコストでシンプルな商品が、古いテクノロジーを使ったハイコストで既存の高性能な商品の市場に取って代わるようになること、を意味します。
例えば、日本では馴染みが薄いですが、Uberなどのライドシェアサービスの台頭で多くの国でタクシー業界はどんどん市場が縮小している、という現象は、ディスラプションと言えるでしょう。
それでは、市場や私たちの生活を大きく変えるかもしれない、「2019年のデータ/アナリティクス・テクノロジ・トレンドのトップ10」を見てみましょう
「拡張アナリティクス」とは、機械学習 (ML) と人工知能(AI)の手法を組み込み自動的に分析がなされる仕組みのことを指します。データ分析において工数のかかるデータの整理や品質確保の過程まで自動化することで、コンテンツの開発、利用、共有をより手軽にできるようになります。
この技術の発達によって、今後、アナリティクスツールやBIツールの需要がますます高まることが予想されます。
「自然言語処理 (NLP)」は、人間が日常的に交わしている会話(自然言語)をコンピューターがよ処理する技術のことを言います。
この技術が発展し、様々なアナリティクスサービスで活用されることで、ユーザーはより簡単にデータを検索したり、分析したりできるようになります。また、ガートナーの予測では、2020年までに、分析クエリの50%が、検索、NLP、または音声を通じて生成されるか、自動生成されるようになるとされています。
データをリアルタイムで分析し、イベントに対する行動をサジェストしてくれる「継続的なインテリジェンス」はビジネスにおける意思決定プロセスを変革するということです。
ツールに搭載されたインテリジェンスが拡張アナリティクス、ストリーム処理、最適化、ビジネス・ルール管理、MLといった複数の技術を活用することで、データ分析に加え、意思決定の自動化やサポートまでをツールで賄えるようになるかもしれません。
今後、勢いが拡大していくと予想されるのが商用AIとMLです。データ分析において非常に優秀なオープンソースのプラットフォームはすでにたくさん存在しています。現在は必要な処理に応じてそうしたサービスを使い分けています。しかし、今後はそうしたサービスを統合した商用のAIやMLの取引が拡大していくと予想されます。
「継続的なインテリジェンス」のように、ビジネスにおける意思決定へのAIの介入が拡大していくと、意思決定の結果に対し、説明責任を果たす際には、AIがなぜそのように結論付けたのかを理解しなければならなくなります。
一方で、AIの解析過程の大半はブラックボックスとなり、人間がその過程をきちんと検証することはほとんど不可能です。
そこで、AIが自らが提示したモデルの説明や長所と短所、そしてモデルを採用して起こるであろう事象を予測し提示することで、意思決定の正確性、公平性、安定性、および透明性を確保することができます。
「グラフ・アナリティクス」を活用すれば、組織、人、トランザクションなど様々な要素の間にある関係を分析することができます。関係の分析を実用的に行えるグラフ処理とグラフDBMS (データベース管理システム) のサービスは、2022年までに年間100%成長する見込みだということです。
「拡張データ管理」は、監査や来歴分析、レポート作成などに使用されているメタデータを、システムの強化に役立てる技術です。MLとAIを活用し、データの品質やメタデータなどの管理やデータ統合を、インテリジェンス自らが構成し、調整できるように進化させます。その結果、データを用いた自律的な作業が誰でも行えるようになります。
「データ・ファブリック」は様々な環境下に分散して配置されているデータを一貫性のある単一のフレームワークで管理することで、布目のように連携させるテクノロジーです。この技術によってデータの移行や管理がよりスムーズになるということです。
ガートナーの予測では、2022年末にかけて、主に静的な基盤としてデータ・ファブリックが導入されるものの、その後、より動的な基盤にするために全面的な再設計を行うコストが発生する可能性があるそうです。
「ブロックチェーン」はデータ分析に及ぼす潜在的な影響は大きく、特にネットワークやコミュニティへの参加者との関係性や関わり方において顕著になるという。
その一方で、データ分析分野において、ブロックチェーン技術が活用されるようになるまで、数年間はかかると考えられるため、ガードナーは、ブロックチェーンの先行きに注目し、技術を理解して常に検証しておく必要がある、と述べるに止まっています。
「不揮発性メモリ」とは、電源を切っても記憶を保持するメモリを指します。この技術によって、コストを抑えながらも、アプリケーションのパフォーマンス、可用性、起動時間などを改善でき、データを複製する必要性を減らすことで、アプリケーションやデータの構造の複雑さを緩和できるようになるということです。
今回、ランクインした技術が今後広がっていくか否かはまだわかりません。しかし、直近のトレンドを押さえておくことで、次に起こす行動は自ずと変わってくると思います。自分の仕事にどんなテクノロジーが関わってくるのか、をぜひ考えてみてください。
また、テクノロジーは人間の仕事を奪う、なんて言われていますが、技術は基本的に、人のためにあるものです。技術を知り、受け入れ、活用することで、人々はより自分がやるべき仕事ややりたい仕事に集中できるようになる、ということを心に置いて、来るべき未来に向けて備えていきましょう!
(大藤ヨシヲ)
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