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1973年開業し、2019年11月にリニューアルオープンしたばかりの渋谷パルコ。新たな若者たちの流行の発信地ともいえる「次世代型商業施設」の誕生は多くのメディアの注目をあつめました。
「次世代型」と銘打つだけに、軒を連ねるさまざまなブランドが、ジェネレーションZと呼ばれるデジタルネイティブ世代の若者たちの琴線に触れるような店舗設計を採用。今後の消費を予見するようなさまざまな仕掛けが光ります。
そこで、今回は、「買い物はインターネットで」という印象が強い若い世代を惹きつける実店舗に必要なマーケティング戦略とはどのようなものなのか、渋谷パルコの事例をもとにご紹介いたします!
「ジェネレーション Z」とは90年代後半から2000年代に生まれた世代を指します。
近年、1980年から90年代に生まれたミレニアル世代をターゲットとしたマーケティングが盛んに行われていますが、ジェネレーションZはミレニアル世代に続く新たな特徴を持った消費集団として、この数年でグッと存在感を高めています。
初代 iPhone の発売が2007年であることを考えると、この世代は、物心つくころには、スマートフォンが当たり前にあり、YouTubeやTwitter、Instagram、tiktokをはじめとしたSNS を活用して、自らの体験や意見を発信していく、超デジタルネイティブの世代です。
リアルだけではなくデジタルにも自分の居場所があることが当たり前、そんな次世代の若者の消費動向は一体どのようになっているのでしょうか?
2017年にIBMがNRF(全米小売協会)の協力のもと、日本や中国、アメリカ、インドなどの16カ国におけるジェネレーションZの消費者1万5,600人を対象に行った調査によると、ジェネレーションZは、他の世代よりもインターネット・リテラシーに長けており、その知識の豊かさから、従来の世代と比較して家族の購買意思決定に大きな影響力があるということです。
消費から人間関係までデジタルとリアルを行き来しながらこなしていくジェネレーションZは、様々な情報や知識を手軽に入手できるが故に、自立して自ら道を切り開いて行く起業家精神が強く、現実的な考えをもちやすいというのも大きな特徴です。そして自立心が強く、堅実である結果、ジェネレーションZの98%が実店舗での買い物を好む、という意外な調査結果も出ています。
デジタルデバイスを自由に操りながらも、実店舗での買い物を楽しみたい、そんな若い世代の心を掴むために近年増えているのが、リアル店舗にデジタルマーケティングを接続する手法です。
渋谷パルコにおいても、ファッションフロアで、店舗とECをシームレスに接続する取り組みが行われています。ここでは、店舗に設置されたモニターに、店舗にある商品とともに、QRコードが表示され、コードを読み込むと ECショップに接続するという仕組みが採用されています。
ここで期待される店舗の役割は、商品の販売・受け渡しではなく、商品を試着したり質感を確かめるという体験を提供するというもの。そのため、店舗に置いてある商品は最低限の数に抑えているということです。
こうした取り組みによって店舗側は過剰な在庫を取り置く必要もなく、利用者にとっても、オンラインで買い物をすれば、後日、購入品が家に届くため、買い物をしてそのまま手ぶらで帰れるというメリットがあります。
渋谷パルコと、クラウドファンディングサイトを運営する CAMPFIRE が提携したショールーム「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」も新たな取り組みとして耳目を集めています。
このショールームでは、「アフターデジタル時代のものづくり」をコンセプトにデジタルテクノロジーを駆使したプロトタイプや発売前の新製品が展示されているそうで、出展する企業もスタートアップから大企業まで多種多様。
そして、大きな特徴といえるのが、「売らない店舗」である、という点です。
つまりショールームを介した製品の販売は行わず、実店舗ならではのフィードバックの速さを生かし、実証実験を行うことで、利用者の行動データや製品に対する声を収集することを目的としているのです。
また、開発中の一部製品は CAMPFIREが運営するクラウドファンディングサービスにてプロジェクトを実施しており、利用者は気に入った商品があればプロジェクトを支援することもできるということです。
利用者視点に立ってみると、まだ市場に出回っていない商品を手軽にいち早く体験できたり、開発者と直接やり取りできるチャンスがあったりと、まさに自分で道を切り開くという「起業家精神」が強いとされるジェネレーションZにとってはグッとくるサービス設計になっていることがわかります。
少子高齢化の日本において、ジェネレーションZのマーケットは他の世代と比較して、非常に小さいもののように思えるかもしれません。しかし、世界に目を向けるとこの世代の人口は、 20〜25億人と推計され、さらにインターネットを通じて他の世代への発信力も高いため、その影響力は絶大なものになると考えられます。
実際に、アメリカでは、ジェネレーション Zの総消費支出は、2015年時点で8000億ドル(約80兆円)に達しているそうで今後もマーケットは拡大していくことが予想されます。
幼少期からインターネットについての様々な知識や経験を積んでいる彼らは、インターネットでできる体験の限界をよく知っています。だからこそ、彼らの商品における決定においては、インターネットでできることとリアルでしか体験できないことをきちんと切り分けてバランスよく提供されているか、ということが非常に重要になってきます。
したがって、今後のサービス提供者やマーケティング担当者は、自分が関わるサービスや製品においてデジタルとリアルをどう使い分けて行くかということをこれまで以上にじっくり考えて行く必要があるのかもしれません。
そうした中でECでの買い物を中心とした店舗設計や、体験を価値として提供する「売らない店舗」という新たな取り組みを実行した渋谷パルコの事例は、今後、若者に向けたマーケティング戦略を考える上で、非常に重要な役割を担うと考えられます。
ぜひ参考にしてみてはどうでしょうか?
【参考引用サイト】 ・ 渋谷パルコ、22日新装開店 休業3年へて再び流行発信 ・ 渋谷パルコのアートギャラリーや注目カルチャー&エンタメ、「AKIRA」展覧会や任天堂ショップ ・ パルコ、CAMPFIRE共同運営店舗「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」が2019年秋「新生渋谷PARCO」にオープン ・ Uniquely Generation Z - IBM
(大藤ヨシヲ)
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