何を学んだかではなくこれから何を学ぶかが重要!?
Googleがロールモデルとする「ラーニングアニマル」とはどんな人たち?

Share!

市場価値を高めるために、プログラミング、英語、Excelなど専門性の高いスキルを身につけたいと考えている方は多いでしょう。

しかし、単に「スペシャリストになること」を目的とするのは、少なくともGoogleでは求められていないようです。

──では、何を目指せば? そこでロールモデルとなるのがラーニングアニマルです。この記事では、ラーニングアニマルとは何か、なぜ求められるのか、どうすればなれるのかなどについて解説いたします。

常に学び続ける主体──「ラーニングアニマル」が求められる理由

ラーニングアニマルとは、そのものずばり「常に学び続ける主体」のことを指します。
──いったい何を学び続けるのか?

それも学んだことと能力、興味を照らし合わせ、自ら探り当てるのです。

この言葉は、当時のGoogle会長エリック・シュミット氏、シニア・バイス・プレジデントのジョナサン・ローゼンバーグ氏らによって著され2014年に出版された書籍『How Google Works』から広まりました。

同書のGoogleの採用についての章で、ラーニングアニマルは取り上げられており、献身と個人的なプライドの両方をもって常に学習に取り組むラーニングアニマルを採用する、ということがGoogleの指針となっています。

後に、ジョナサン・ローゼンバーグ氏は「根本的に、私たちはスペシャリストではなく、ラーニングアニマル、あるいはジェネラリストに焦点を当てていることに、人々は気づいていないのではないでしょうか。その主な理由は、ダイナミックな業界で条件が目まぐるしく変化するとき、経験やいかに以前の役割をこなすかといった点は、考えるスキルほど重要ではないからです(※)」と述べたとのこと。

ここにあるのは、未来志向で“これから何を学ぶか”を何よりも重視する姿勢です。すなわち、「〇〇な経験をしてきたからどこでも必要とされるだろう」という考え方は、通用しないのです。

※…引用元:「Becoming a “Learning Animal” Google’s Modern Worker Model┃enabley」をもとに筆者邦訳

ラーニングアニマルにはどうすればなれるのか

さて、ラーニングアニマルが必要とされることは分かったけど、どうすればそうなれるの?
そんな疑問を抱いた方へ、現代はラーニングアニマルとしての自己研鑽を支えるコンテンツがどんどん充実してきている時代だという朗報をお伝えします。

例えば、Googleはeコマースの始め方、デジタルマーケティングの基礎、AIの基本などの講座に無料でアクセスできる「Grow with Google」を運営しています。米マイクロソフトは古典的な機械学習について無料で学べる「Machine Learning for Beginners」をGitHub上に公開しています。国内でもサイボウズが2021年のエンジニア研修の講義資料を公開したことが話題になりました。

大学の講座を無料で受けられるオンライン講座サービス「gacco」や、さまざまな専門家の講義が生放送・アーカイブされている「schoo」、など、オンライン学習を専門としたサービスもどんどん充実してきています。『データのじかん』でかつて紹介した中には「オンライン自習室」なんてサービスもありますね。

このように現代は、自己学習を支える無料ツール・サービスがWeb上にあふれている時代です。これらは、自社の社員としてあるいは社会にイノベーションを起こすというリターンが生じることを期待して、ラーニングアニマルを育て助けようという企業や社会の意思から提供されているのではないでしょうか。

ラーニングアニマルになるためには、まずはこのようなコンテンツのうち無料かつ少しでも興味を持てる題材にアクセスし、一日10分からでも継続して学ぶことが重要です。最初から成果に目を向けるよりもまずは継続することにフォーカスして、“大人になってからでも学ぶ”という習慣を身につけましょう。

1日、1日と学習を積み重ねることであなたは気づけば息をするように学習に取り組む「ラーニングアニマル」になっているはずです。

日本人の成人は世界でもトップクラスに“勉強しない”

ここまでの内容を読んで、「生涯学習」という言葉が頭に浮かんだ方もいるかと思います。

人生100年時代において、ラーニングアニマルとなり常に学び続けることは社会に必要とされるためだけでなく、充実感を失わず企業を退職した後も幸福に過ごすためにも重要な概念とされています。しかし、残念ながら日本人は大人の学習において諸外国に後れを取っていることで知られています。

2015年にNewsweek日本版の記事『日本の成人の「生涯学習」率は先進国で最低』にて、教育社会学者の舞田敏彦氏が掲載したのが以下のグラフです。

引用元:舞田敏彦「日本の成人の「生涯学習」率は先進国で最低」┃Newsweek

このグラフは経済協力開発機構(OECD)が2012年に実施した「国際成人力調査(PIAAC 2012)」をもとに制作されました。ご覧の通り、アメリカやドイツが比較対象から外されているとはいえ、日本の順位は18カ国中最下位。同氏は日本の大学生の休学率が他国と比べて桁違いに低いことも指摘しています。

また、ベネッセはパーソル総合研究所「APAC就業実態・成長意識調査(2019年)」のデータをもとに、勤務先以外での学習や自己研鑽活動について「何もしない」と答えた人がAPAC14の国・地域(主要都市)平均の約3.5倍(46.3%)と顕著に日本で多かったことを指摘してます。

ここから推察されるのが、”何かを学習するのは学生の間までで、課外活動など主体的な学びは推奨されない”という意識が日本では他国に比べて強くなりやすいということです。

近年、企業に勤めていれば安心というわけではないという危機感が高まってきたように感じられますが、ラーニングアニマルとなるためには自分の周囲だけに目を向けず、“世界のスタンダードに出遅れている”という意識を持つことが必要といえます。

終わりに

ラーニングアニマルという言葉からは、戦後目覚ましい経済的な発展を遂げ勤勉に働く日本人を指して、1965年にパキスタンのブット外相が日本人を形容した「エコノミックアニマル」というフレーズが連想されます。

そしてそれはしばしば誤解されるように「金の亡者」を意味する蔑称ではなく、「経済活動にかけて才能がずば受けている様を形容した褒め言葉(※)」だったとか。

日本のマイナス面を示すデータをいくつか紹介しましたが、それらを覆し、かつてのエコノミックアニマルのように「ラーニングアニマル」と称されることを目指しましょう!

※…参考:多賀敏行『「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史―(新潮新書) Kindle版』新潮社、2004

【参考資料】
・転職で強い グーグル型「ラーニング・アニマル」とは┃NIKKEI STYLE
・Becoming a “Learning Animal” Google’s Modern Worker Model┃enabley
・It’s the Company’s Job to Help Employees Learn┃Harvard Business Review
・‘How Google Works,’ by Eric Schmidt and Jonathan Rosenberg┃The NewYorkTimes
・長寿社会における生涯学習の在り方について~人生100年 いくつになっても 学ぶ幸せ 「幸齢社会」~┃超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会
・アジアで最も大人が学ばない日本で「学歴よりも学習歴」を。ベネッセが目指す学びとは┃ベネッセ
・舞田敏彦「日本の成人の「生涯学習」率は先進国で最低」┃Newsweek
・舞田敏彦「日本の大学生の休学率が、他国と比較して桁違いに低い理由」┃Newsweek
・多賀敏行『「エコノミック・アニマル」は褒め言葉だった―誤解と誤訳の近現代史―(新潮新書) Kindle版』新潮社、2004

宮田文机

関連記事

人気のカテゴリ