短時間の睡眠の危険性を示すデータはほかにもあります。
それは、6時間以下の睡眠を2週間続けると一睡もしていないのとほぼ変わらない状態まで脳のパフォーマンスが落ちてしまうということ。
この衝撃的なデータは、2003年に米ペンシルバニア大学で行われた実験により導き出されました。その実験とは、睡眠時間6時間のグループと徹夜のグループに注意力や判断力を測るテストを受けさせるというものです。
もちろん最初は6時間のグループが徹夜のグループを大きく圧倒していました。しかし、徐々に6時間のグループのパフォーマンスは低下し、2週間後には2晩徹夜したのとほぼ同じ結果しか出せなくなってしまったのです。
毎日6時間以下しか寝ていないけどそんな自覚はない、という方もいるでしょう。しかし実験の被験者たちも脳の働きが落ちていくことを必ずしも感じていなかったそうです。つまり、短時間の睡眠は自覚なくしかし着実に脳の働きを低下させていくのです。
このように、睡眠不足が徐々に身体に与える影響を“睡眠負債”といいます。
前述のSLEEP2017では、年齢と世代別の睡眠時間のデータも発表されました。
その結果をまとめた表が以下のものです。
上記の表における合計睡眠時間は男女ともに若いほど長くなっていますね。すなわち年をとるほど睡眠時間が短くなるというのはデータの上でも確かだということです。また、全ての世代において、合計睡眠時間やレム睡眠の割合など睡眠の量・質についての指標で女性が男性を上回っています。これにより女性の方が睡眠時間が長く、睡眠の質が高い傾向にあることがわかります。
SLEEP2017の発表ではほかにも以下のような事実が発表されました。
睡眠の重要性について、2017年と2003年に発表されたデータをもとに紹介してきました。
ほかにやりたいことがある場合などついつい後回しにしてしまいがちな睡眠ですが、無意識に健康や脳のパフォーマンスに影響を与えています。自分をベストの状態に保つには睡眠をマネジメントすることが重要です。
今夜からの睡眠はできれば7~8時間確保するようにしましょう。と言いつつ、なぜ人が、あるいは他の動物たちが眠らなくてはならないのか、というのはまだ解明されておらず、7時間以上の睡眠が体に良いということはデータで示せても、なぜ眠るのかについては知ることもなく私たちは今宵も眠りに着くのです。
FitBitやAppleウォッチなど、24時間体制でデータを収集してくれるいわゆるスマートデバイスの普及により、最近ではこれまで取れなかった種類と量の睡眠データが取れるようになっています。これらのデータが有効活用されることで「なぜ生き物は眠るのか?」という根源的な質問に対する回答、あるいは回答への手がかりとなるヒントが得られるかも日は近いかも知れません。
もっと睡眠についての話を知りたい方はFitBitデータの分析を行ったコナー・ヘネガン教授のTedxトークを聞いてみてください。(英語のみ)日本の研究について知りたい方はこちらの記事をどうぞ。この動画によると、キリンの睡眠時間は2時間、コウモリの睡眠時間は20時間だそうです。そして我々人間はウサギと同じくらいの睡眠を必要としているそうです。
深イイ話はさておき、深イイ睡眠は幸せな人生には不可欠なものであるってことは確かなようです!お後がよろしいようで。
(宮田文机)
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