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運輸デジタルビジネス協議会主催 TDBCフォーラム2019が開催されました!

         

TDBCフォーラム2019が2019年4月25日、東京品川にある東京カンファレンスセンターで開催されました。

当日は雨模様の天候だったにも関わらず昨年の参加者数を上回る約500名の運輸業界関係者が集結しました。実は、参加申込が非常に多く、会場の定員を大幅に超えたため開催の4週間前には申込サイトをクローズしたとのことでした。

会場では、運輸業界が直面するさまざまな課題に向き合う各ワーキンググループからの活動報告を熱心に聞き入る参加者たちの姿が見受けられました。また、会場には、TDBCの活動から考案されたテクノロジーや課題解決に役立つアイテムを紹介する16の展示ブースも設置され、参加者たちが実際に新たな技術に触れる機会となっていました。

基調講演の「ドローン物流から空飛ぶクルマの活用まで」や特別講演「Amazon Effect 既存の流通はどう対処すべきか」、対談「テクノロジーを活用した移動体験の革新」など、最先端の事例を学ぶ機会となりました。講演の終了後には、参加者の交流会も行われ、TDBC活動の盛り上がりが感じられるフォーラムでした。

データ集積が進み更に進化するTDBCの活動

TDBC(運輸デジタルビジネス協議会)とは、バス・タクシー・トラック・ダンプ業界などが共通で抱える課題の解決を目指し、従来の企業や業界の枠組みを超え、運輸業界とICTなど多様な業種のサポート企業が連携し、デジタルテクノロジーを利用することで運輸業界を安心・安全・エコロジーな社会基盤に変革し、業界・社会に貢献することを目的としています。いわゆる「オープンイノベーション2.0」の実践版として広範な業界・企業の参加による知識集約によって社会貢献に取り組んでいる団体です。

TDBCの参加会員は7つあるワーキンググループ(WG)のいずれかに所属して活動しており、今回のフォーラムではそれぞれのWGが行なっている実証実験に関する報告も行われました。

各WGは、デジタルテクノロジーからのアプローチとして、データの集積、分析を繰り返し、事業者の実証を通じて効率化を図ります。活動3年目となった現在では、データの集積が進み、課題を明確化すること、具体的な解決策を提示し、検証することに尽力するステージへと進んでいる印象です。

活動の主旨に賛同し、参加を表明した企業も、2016年の発足当時の15社から、2019年には約100社にまで増えています。昨年度から、一般社団法人化し、運輸事業者のみならず「安心・安全・エコロジー」な社会への進化と貢献を目的に中立・オープンな活動を続けています。

ドローンの進化が空の産業革命を起こす

今回のTDBCフォーラム2019では、基調講演において、近未来の物流で重要な役割を担うドローン(無人航空機)の進化と現状についての講演が行われました。2020年以降には、運輸業や農業、建設業などで無人飛行が実用化されるという国によるロードマップも2018年6月に策定されています。

また、通信インフラの進化と5G通信の実用化を目前に控え、技術開発や環境面での整備。空の産業革命ともいう、ドローンの利活用についての最先端の情報と将来像には、参加者も新たな時代の運輸・物流像を意識せざるを得ない内容に、熱心に聞き入る参加者が多く、将来の運輸業界の進化を予想させる講演内容でした。

データの集積が進み課題解決が加速される

各ワーキンググループの活動内容の発表では、「交通事故の撲滅とエコドライブ」「乗務員の健康増進」「MaaSへの取り組み」「人材不足の解消」「先端技術による業務効率化」など、実際の事業者の実例や構想、また、実際の業界での取り組みの中で表面化してきた課題についての発表が行われました。

2018年度のTDBCの活動から、課題解決の取り組みを実際に行った各ワーキンググループの活動も、データの集積が進むともに、2次的3次的に発生する課題への対応。技術の進化による解決策の進化に伴い、運輸業の基幹をなすドライバーにも着実に活動の意識も広がり、具体的な成果を出している報告も数多く見られ、今後のTDBCの活動がさらに進化し、課題解決につながることが実証されました。

観光地の交通インフラを改革するMaaSへの取り組み

今回のワーキンググループの活動報告の中でも、注目を集めていたのが、MaaSへの取り組みを行った、ワーキンググループ03の活動です。

このワーキンググループは、バス事業者が直面している乗客の減少をインバウンドを対象とするMaaSの取り組みにより、公共交通機関の維持・活性化を実現させようとしています。

実際の事業者として、TDBC参加事業者である奈良交通株式会社から、「MaaSに対する期待」としてバス事業の現状や奈良を訪れるインバウンドの状況についての発表がありました。

MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)とは、「MaaSは、ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ 新たな『移動』の概念」(国土交通省)とされています。

奈良交通によると、公共交通機関としてのバスは利用客の減少や運転者の高齢化などの課題を抱えており、採算が合わないにも関わらず使命感のみで運行を続けている路線が多いのが現実だといいます。

これに対して、TDBCの活動では、MaaSの導入によって平成24年からの5年間で約10倍に増加しているインバウンド観光客の取り込みと利用客の増加を目指しました。近畿運輸局の調査データでは、インバウンド観光客の奈良における滞在時間はわずか4時間。隣接する京都・大阪に比べて著しく短く、これに比例して奈良県内での消費金額も少なくなっていることが判明しました。

また、インバウンド対応における課題として主なところでは、空港からのバスと市内バスの連携情報がない、また、観光地情報とバス停の情報リンクが少ない。さらに、提供情報の多言語化対応などの課題が明確になりました。現段階ではコスト面等の制約があり、単独での解決は困難ではあるものの、課題の明確化によって地方公共団体や他事業者の連携など、解決までの道のりと方向性を見出すことができました。

その結果を分析したところ、主なところでは、空港からのバスと市内バスの連携情報がない、また、観光地情報とバス停の情報リンクが少ない。さらに、提供情報の多言語化対応などの課題が明確になりました。

現段階ではコスト面等の制約があり、単独での解決は困難ではあるものの、課題の明確化によって地方公共団体や他事業者の連携など、解決までの道のりと方向性を見出すことができました。それを踏まえて間もなくインバウンドを対象とした本格的な実証実験を行います。今後もTDBCワーキンググループによるバス事業者自らの変革や、地方公共交通共通の課題を解決するMaaS導入への挑戦は続きます。

Uberの技術がタクシー業界を再生するか

フォーラムの最後には、運輸業界を進化させる1つの事例として、TDBCの創設メンバー企業である株式会社フジタクシーグループ 代表取締役 梅村尚史氏とUberジャパン シニアマネージャ 佐々木裕馬氏による、Uberテクノロジーのタクシー配車サービスの導入の経緯と業務改善についての対談が行われました。

TDBC会員でもあるフジタクシーグループ社は、業界の中でも先進的な経営と、積極的な技術投資を行うことでも知られています。フジタクシーグループ社はこれまで使っていた自社製の配車サービスのスマホアプリの使用を止め、現在ではUber社のUberアプリを活用しています

世界的な配車サービスを手がけるUber社の配車サービスを導入するにあたり、乗車客の減少やドライバーの採用難、スマートフォンの普及など、社会環境の変化への対応を考慮し、Uber社の「移動体件を通じてさまざまな機会を創出する」という方針や、世界63カ国、1500万人/日が利用する先進性や直接ドライバーがお客様から配車を受ける効率性などを高く評価し、導入を決めたといいます。直前まで使用していた独自の配車サービスアプリとの違いについても、お客様の目的地入力の簡易性や利便性の高さでメリットが大きく、導入により、事業者としても7ヶ月で運賃収入が約10~15%向上するという結果が得られたといいます。Uber社側は、アプリケーションの先進性について自信を持っていることに加え、インバウンド観光客の61%がUber社のサービス提供国からの入国だと話し、今後の利用者の増加にも期待できる社会基盤となったといえるでしょう。

先進的なIT企業と運輸業界のコラボレーションによって、業務の効率化と顧客の利便性の向上が図れたことも、大きなメリットとなったことが分ります。ITテクノロジーがタクシー事業の革新および業務効率化に貢献している先進的な事例となりました。

まとめ

TDBCの活動は今年で3年目を迎えます。会員数も順調に増え続けており、取り組みもより多角的に、より具体化してきています。TDBCの活動により初めて実現できた取り組みや成果も今後増えてくることでしょう。10年、20年前にはまだ想像もつかなかったドローンによる配送や以前は考えにくかったUberとフジタクシーのコラボレーション事例は、TDBCの活動と社会全体が向いている方向性が以前よりも合致してきている象徴なのかもしれません。

ますますの成果が期待される中、TDBCの活動は今後も続いていきます。来年のフォーラムではどのような新たな発見や課題の解決が報告されるのかが今から楽しみです。

(大屋敏文)

 

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